第146話 タイトル一旦半回収。
少し飛んで、セザーリア十日目の夕方。
私は最後のヨシヨシ周りを終えて、正式に肩書きを脱いだオブさんと師匠を連れて黒猫亭に帰って来た。
もちろん存在感が消えかかってたユノスケさんも一緒だ。しかしゼルくんは居ない。何やらお仕事が出来たとかで、ファストトラベルで帰ってしまった。
だけど、疾風竜運送に王族の乗客が居ないのかと聞かれれば、答えはノンノン。ちゃんとビアちゃんも連れて来ている。
………………? ん? 何もオカシイ事無いよね?
彼は一国の王様だけど、王様故に玉座を温め続けないと行けない。それはつまり、私のヨシヨシから一番遠くに居る存在だと言える。
でもそれは可哀想だ。他の人は何かと理由を付ければケルガラまで旅とか出来る可能性があるのに、ビアちゃんだけ仲間外れは良くない。それにビアちゃんは今のところセザーリアで唯一のプレイヤーである。師匠がお口にぶち込んだ経験値薬のせいで、ビアちゃんは立派なプレイヤーなのである。
ならば黒猫亭にファストトラベルポイントを登録すれば、ちょっとした時に私に甘えられる。長く玉座を空ける事は無い。
黒猫亭はポップアップベースを使って建てたので、ベッドを使ってリスポーンポイントを更新しなくても、ファストトラベルに使えるのだ。
もちろん他国の王様が突然国内に現れるケルガラとしては堪ったもんじゃないだろう。だからビアちゃんとは、ヨシヨシされる為に来た時は、黒猫亭から外に出ない約束だ。ビアちゃんは私の言う事を良く聞く良い子なので、きっと約束を守ってくれるだろう。
「それでは聖母様、お元気で」
「ビアちゃんも、体を大事にするんですよ?」
ビアちゃんも今回は下見というか、ファストトラベルポイントの登録だけが目的だったので、その目的さえ済んでしまえば帰らなくてはならない。王様には仕事が山積みなのだ。
ヨシヨシ欲にも負けず、ちゃんと私と言う誘惑を断ち切って仕事に迎えるとっても良い子なビアちゃんだったので、私は沢山ヨシヨシしてあげた。偉いですねー♪︎
そうしてほにゃほにゃになってからファストトラベルで帰ったビアちゃんを見送った私は、黒猫亭のみんなに挨拶回りをした。
相変わらず可愛い可愛い
ミハくんやハムちゃん、久しぶりに見たネネちゃん、他にもイデくん、アルテくん、ゼッくん……、は嫌だな。ゼッくん以外の遭難組みんなにヨシヨシした。ゼッくんは私を未だに聖女呼びしたがってるのでヨシヨシしたくない。ちなみにぜッくんとはゼクトくんの事だ。
でも、ちらっと向こうで聖母になって来たって言ったら「それだっ!」みたいな顔してたのでホントもうコイツ……。
あとジリィちゃんと、オブさんに付いてきた三人娘と、他にも馴染みのお客さんにはヨシヨシして回った。最後には良い子にお留守番してた召喚獣の皆もヨシヨシしまくってほにゃほにゃにした。甘えん坊なロッサとリフは液状化するまでヨシヨシした。
とにかくヨシヨシしてヨシヨシした。私はとても満足だ。
「ふぃ〜、良い仕事したぜぇ〜☆」
「…………の、ノンちゃん、それ、大丈夫なの? ヨシヨシ欲が暴走してない? 代償のせいじゃないの?」
「ん? いや、特に実害無いし、大丈夫じゃない? 最近は【抱擁聖母】もあんまり使ってないし」
「使ってなくてそれなんだ……」
「まぁ、アレって結局、INT無視と自動発動の精神干渉スキルが肝な訳だからさ、丹田法とかスキルを自前で使っちゃえば、ある程度は再現可能なのよね」
「…………そう言えばノンちゃん、スキルない頃から似たような事してたもんね。ヨシヨシしてる相手の幼少の呼び名を聞かずに当てたり」
「……ほんと、私って何なんだろうね。良く考えたらさ、【抱擁聖母】って私が元々してた事を超強化しただけなんだよね」
なるべく考えないようにしてたけど、私って代償緩和以外の事ってわりと最初からやってたんだよね。【抱擁聖母】無しでさ。
マジで私って何なの? 誰なの? 実はなんか、こう、慈愛とかを司ってる女神の生まれ変わりとかだったりするの?
「あはは、ノノちゃんっ、みんなからママって呼ばれ始めたねっ?」
「え待って何それ」
気が付くと、ヨシヨシしまくった黒猫亭のあちこちから、ママって単語が確かに聞こえる。いや待って下さいませんかね? 私はまだお母さんじゃないのです。偽物なのです。
「もう、いいじゃん別に。あたしたちのお股から血が出たら、お薬使って妊娠するんだからさ」
「そ、そうだけどさ……」
「そう言えば、その時はどうするのっ? 無差別に産むのかな?」
「……あー、確かに、誰が誰の子を産むとか、気にせずに交尾すると大惨事になりそうだね」
とりあえず、最初は私とルルちゃんがお薬飲んで、沢山お股を擦り付け合うのは確定なのだ。そうすればお互いに妊娠出来るし。
それと一緒に、お薬を飲まない状態のタユちゃんにも、やる? そうすればタユちゃんは私かルルちゃんの赤ちゃん、どっちかを宿すでしょ? ランダムだけど。
「タユちゃんは、私とルルちゃんの赤ちゃん、どっちが産みたい?」
「えっ? え、えと、選べないよぉ……」
「あはっ、可愛い♪︎ じゃぁ、私とルルちゃんがお薬飲んで種付けし合ってる時に、混ざろうね? 選べないなら、運命に選んで貰おうね」
「……うんっ♪︎ それで、二人目を産む時は、産めなかった方の赤ちゃんが欲しいなっ。タユは、二人の赤ちゃんがどっちも欲しいからっ」
あータユちゃんいけませんっ! 可愛過ぎますいけませんお客様ー! あーお客様! あー!
「くゆもー!」
「あるもー!」
「ふふふふ、もちろん二人も、私とルルちゃんの赤ちゃん産んでね?」
「「うん〜♡」」
それで、私とルルちゃんも、二人目の赤ちゃんはみんなの内の誰かの種を貰うのだろう。
いや、順当にタユちゃんの赤ちゃんを産むのかな? 私もルルちゃんもタユちゃんの赤ちゃんを妊娠して、タユちゃんはその時に私たちのどっちを二人目として妊娠して、アルちゃんとクルちゃん…………。
「待て待て、これ結局全員妊娠で大惨事じゃん。全員妊婦はマズイですよ」
「でも、全員一緒に月の物が来るとは限らないし、計画通りにはいかないんじゃないの?」
「…………それもそっか」
そもそも、私たちはまだ十歳とかなのだ。生理が来るのもまだ少し先だろう。
いや、どうなのかな? 早い子だと十歳とかで来るのかな? 私は八歳で子宮が丸ごと無くなったから、その辺の知識は悲しくてあんまり見てないんだよね。
そのくせえっちな知識はそこそこあるって言う、この耳年増め! いや違う? 二十にもなってなかったのに耳年増は違う?
「まぁ良いや。赤いの出てから考えよっか」
今考えても無限に興奮しちゃうだけだからね。
「さて、私は久しぶりに黒猫亭に帰って来た訳ですが!」
「拙者は初めて来た訳だが!」
「あ、師匠」
「ノノン! 古巣の者にだけヨシヨシしてずるいぞ! 拙者にもヨシヨシしてくれぇ!」
「あ、師匠はまだ代償緩和してなくて心が正直なのか」
あまり使ってないとか言ってたけど、仕方ないので師匠に【抱擁聖母】入りのヨシヨシタイムだ。とろとろになるが良い。
「寂しいのならぎゅってします。悲しいのならぎゅってします」
私は師匠に膝立ちしてもらって、思いっきりむぎゅーって抱き締めた。
「疲れも痛みも涙も辛さも、私がヨシヨシしてあげます」
そして心ゆくまで優しく頭をヨシヨシする。師匠は良い子ですね〜?
「さぁ私に甘えてください。私にいっぱい甘えてください」
師匠は私のお胸でふにふにされると嬉しいみたいなので、沢山ふにふにしてあげる。よしよーし、甘えて下さねぇ♪︎
「--だって私は
そーれよしよし♪︎ よしよし♪︎ よしよーし♪︎
その場で三十分くらいヨシヨシして、それからリビングに移動してから追加で一時間ヨシヨシした。
「はい。甘えん坊なモノちゃんは、良い子だから交代出来ますねー? 次は
私はついでに
ぶっちゃけ、私とオブさんって
なので今の内に好感度を上げるしかねぇ!
「…………んぉ、ノノンお前何やって--、……おまっ、【剣閃領域】と【薬師神】かっ!?」
あ、ぺぺちゃん来た! 地味にオブさんとも会えてなかったよねぺぺちゃん!
私が
「ああ、久しいね【双鎌妖精】。元気だったかい?」
「ぬっ、【双鎌妖精】か。確かに久しいな。いつぶりだ?」
「おいおい、随分賑やかになったじゃねぇの! 二つ名持ち揃い過ぎだっつの! …………んっ、なんだこのちびっこいの」
「
そして、出会っては行けない二人が出会ってしまい、師匠は物凄く、物凄ーくあっさりと契約を切られてしまった。
そしてふわふわと浮くぺぺちゃんに抱きつこうと、抱き締めてた私の腕から飛び出して、浮かぶぺぺちゃんに向かってぴょんぴょんする
しかし、あーらら、せっかく代償緩和してあげたのに。ぺぺちゃんが次の契約者って事は、代償緩和要らなかったねぇ?
「なんだコイツ?
ぴょんぴょんしてお目々がキラキラしてる
そんな
はぁ、うねうねしてる虎の尻尾可愛いかよ。
「ぺぺちゃん、その子は
「お、マジで? 完全にオレ向きの代償じゃねぇか」
「【双鎌妖精】ぃぃいいッッ! 拙者の
「あん? いや、今の見てなかったのかよ【剣閃領域】。オレぁ懐かれた側だぜ? まぁつっても、ちびっ子に文句を言えとは流石に言えねぇけどよ」
「グッ、グゥぅうッッ……!」
本気で悔しそうな師匠が歯軋りする。
まぁ、代償が無くなったからか、態度が少しずつ昔の武人然とした態度に戻りつつ有るけど、開き直ってしまった部分に関しては戻らないのかも知れない。
「おう、
聞かれた
「そうかい。…………契約ってのは確か、ぶちゅっとすんだっけか?」
「あ、いや、別にマウストゥーマウスじゃ無くても良いらしいよ? 手の甲にキスとか……」
と、言いつつも。
ふむ。むむ? あれ、百合っぽいの嫌だったんじゃ無いのかな。単純に師匠が下心ムンムンで嫌だったのかな?
「……ははっ、流石にこう期待されちゃ、裏切れねぇよな?」
苦笑いしたぺぺちゃんはサクッと契約のキスをする。もちろん
そして死ぬ程悔しがる師匠。
「…………えへ♡」
私はなんか、突然笑えて来て、にゅふふふって笑ってしまった。笑い方が猫の半獣になってきたね。半獣生活も板に付いてきたよ。
「突然笑って、どうしたんだい?」
「あ、えとですね、なんか嬉しいなって」
オブさんに聞かれた私は、そう答えた。
ぺぺちゃんが居て、師匠が居て、オブさんが居る。まるでジワルド時代に戻ったみたいで、懐かしくて嬉しい。私の青春って全部あの世界に使ったからさ。
「あとは、ぺったんこさんと、テンテンさんと、勇者さんと、トムヤムさんと…………」
「ああ、確かに、到達者連中の集いっぽくなってるね」
「でしょう? 懐かしいなって」
「シオリちゃんとかも居れば尚良だね。ヨッちゃんくんも地味に参加率高かったよね」
「ヨッちゃんは到達者じゃ無かったですけどね。……シオリさんが居たら、ヒーラー装備を仕立て直して欲しい」
「あー、ねー。……他には、ヤックルくんも何気に好感度高かったよね」
「……ヤッくんですか? 確かに仲良かったと思いますけど」
ちなみに、シオリさんは私の縫製の師匠で、ヨッちゃんは釣りの師匠。ヤッくんは打撃技を主体にした喧嘩殺法を教わった。
基本的に、私が技を教わった相手ってのは、スキルを教わったんじゃなくて、スキルの使い方を教わったんだよね。
だから柔剛制転流とかの局所的で効率的な使い方として、あえて技術体系も何も無い喧嘩殺法とかも学んだ。そしてヤッくんは公式の二つ名は無いけど、プレイヤー間で伝わるあだ名みたいな二つ名はあって、それは『喧嘩上等』で伝わってた。そしてそんな二つ名を付けられるような人なので、ステゴロが大好きだった。
なので私は会う度に彼とステゴロで遊んでたのだけど、そんな関係だったからか、結構仲が良かった気もする。
あ、シオリさんは『織り姫』で、ヨッちゃんは『超釣キチ』とか言われてた。
ネームドスキルが無くても、特徴的なプレイングとか特化プレイとかしてれば、だいたい『○○の人』みたいなあだ名は発生するし、それを続けてると『せっかくのネトゲなんだしそれっぽいの付けよう』って盛り上がる一部の層のせいで、大体それっぽい二つ名が作られる。
私の剣術の師匠であり、PvPランク一位である勇者さんなんか、既に【絶対勇者】ってネームドスキル持ってるのに、『変顔』なんて二つ名も発生してるくらいだ。
これの由来は、ボス戦やレイド戦でフィニッシュブローを決めた時に必ず決めポーズと変顔をしてたから発生した二つ名だ。
「こんな話ししてたら、会いたくなるね。特に勇者くんなんて、結構前から見てないよ? 一つ前のタイトル戦も出てなかったから、今のPvP一位なんて彼じゃないし」
「…………えっ!? 勇者さんが一位降りたんですかッ!?」
「まぁ、ノノンちゃんが居なくなったPvPで一位誇ったって仕方ないしねぇ」
いや、そんな事は無いでしょう。私なんて所詮、世界ランクアベレージ三位の女やぞ。
なんでみんな、そんなに私に『ジワルド最強』の看板を背負わせたがるの? 事実としてランキング一位になれてないんだから、最強は勇者さんか師匠のどっちかでしょ。
あ、ちなみに師匠はPvPランキングには不参加である。ランクマッチではネームドスキル発動不可だし、師匠はスキルが無意識的に嫌いなので。
師匠が武術スキルを磨いてるのは、それが鍛錬になるからだ。意味不明な術理を大真面目に研鑽するのは、それが質の良い鍛錬になるし、リアルの師匠にとっても糧になるから真面目にやってる。
そして勇者さんは師匠と対極に居る存在であり、ジワルド最強の廃ゲーマーだ。そもバトルスタイルが正反対で、ゴリゴリにスキルや魔法を使って戦う、『正統派勇者』なのである。
二人がルール無用でカチ合った場合、ネームドスキルを使えれば師匠が勝つし、ネームドスキルの発動を抑え切れば勇者さんが勝つ。そう言う水と油の存在なのだ。
師匠はリアルでも頭オカシイ達人だけど、勇者さんも頭オカシイレベルで廃ゲーマーだ。だって机上の空論で持ち出されるような理論値を前提で攻略組んだりするからね。それで周りの人が無理ーって言うと、心底不思議そうに「???」って顔する。しかもじゃぁ技術はショボイのかって言うとそんな事無くて、勇者さんも現実で縮地くらいは出来ちゃうヤバい人らしい。リアルを詳しく聞いた事ないけど。
て言うか師匠、勇者さん、トムヤムクンさん、寿さんの四人は、現実でも縮地出来ちゃうタイプのやべー人だ。それぞれ術理は違うけど、似たような事は出来る。寿さんは槍とかの師匠だ。
そんな技の練度を前提として、そのまま技に振り切れたのが師匠であり、ゲーム理論を素直に受け入れてスキルと魔法をバンバン使うのが勇者さん。マジで正反対だし水と油。
「む、なんだ。変顔クソ野郎のことか?」
「もう、師匠! 勇者さん別に悪い人じゃ無いんだからクソ野郎とか言わないの!」
「むぅ、しかしだなノノン。奴は技を修めておきながら……」
「それも毎回言ってるよ! ゲームなんだからゲームを楽しむ人が居ても良いでしょ! 師匠が使ってる【剣閃領域】だって、立派なスキルなんだよっ!」
まったくぅ。師匠はこれで『スキル嫌い』が無自覚なの酷いよね。本人に言うと「む? いや、術理は術理として
それで相手がPKだった場合は問答無用で殺しに行く。笑顔で殺しに行く。
師匠はジワルドでも有名なPKKであり、その顔を見たPKは基本的にその瞬間脱兎の如く逃げる。勝てないから。
そしてPK嫌いな普通のプレイヤーさんからはメチャクチャ好かれてる。だって修行してない時の師匠の趣味が『強者探し』って名目のPKK行脚だからね。放っておいてもPKを殺して回ってくれるとかヒーローかなって言う。
まぁ、昔のことは良いか。今の師匠はダメダメものちゃんなので、ヒロイックなPKKとか何それって感じだし。
私も黒猫亭は十日ぶりだし、お世話したい欲がムクムクと顔を出してるので、今日から数日はちゃんと民宿の女将やりますよー!
「さて、無事に帰って来た事だし、久しぶりにちゃんと、民宿幼女しますかね!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます