第14話 前世と現世

「ご注文がお決まりになりましたら、そちらのボタンでお呼びください」

 調布駅南にあるコンビニの2階。ファミリーレストラン“ジョースター”。

 そこの若い女性店員は前述の言葉を言って会釈すると、きびすを返し他のテーブルへ食器を下げに行った。そんなに混んでいないせいか足取りはゆっくりだ。

「まーま、めにゅー」

 と、直人の対面から舌足らずなメニュー表催促の声がする。

 そこには年端も行かない小さな女の子が母親の膝上に座っていて、その母親が我が子を片手で支えながらテーブルのメニューを取り上げようとした。

 すると「…は、はいっ」と直人の隣に座っている朋子が気を利かせ、先にメニューを母親に差し出す。

「……ありがとう」

「いえっ」

 母親は妙に仏頂面で礼を言うと、我が子の前にメニューを拡げた。

 女の子はその拡げられたメニューを食い入るように眺め出した。まるで新しいおもちゃを貰ったように目を輝かせて。どうやらこういった写真のメニューを見ることが好きなようであった。

「……今、おいくつなんですか?」

 ふと朋子が母親に尋ねる。

 母親は少々虚ろ気な顔を上げ、少しキョトンとした。しかしすぐに頬を緩ゆる

ませる。

「この子かい? この前、三つになったよ」

 心持ち優しく呟き、その子の頭を撫でる。

「三つですか? 可愛いですね」

 そう言って朋子は笑顔を浮かべ、

「じゃあ、今年は七五三ですね」と嬉しそうに続けた。

 朋子は小さい生き物(昆虫や爬虫類除く)が好きで、特に子供が大好きであった。

 その母親は、やはり我が子が“可愛い”と言われたこと満更でもない様子だったが、ふと顔を暗くした。

「……そう言えばもう七五三だね。すっかり忘れてたよ」

 そうぽつりと呟く。

 ? と朋子は不思議そうに首を傾げる。

「そうなんですか?」

「…まぁ、ねぇ」

 なにやら事情があるのか、それとも後ろめたいことでもあるのか、母親は言葉を濁す。

「…でもいい思い出になりますから、この子の為にも七五三に行って上げて下さいよ。私も同じくらいの時行きましたし。調布駅の近くに布多天神っていう神社があって、そこに」

 朋子が言うのは布多天神社のことである。

 東京都調布市調布ヶ丘1丁目に鎮座する神社で、式内社。旧社格は郷社。当初は少彦名神を祭神としていたが、移転時に菅原道真を合祀。創建年代は定かではなく、社伝では垂仁天皇の治世とされる。

 特に九月の例大祭が有名で、他に十一月の七五三を始め、年間を通して色んな祭事が行われている。

「…そうなんだね」

「はい。朧げですけど覚えてます。ご神木の並んだ参道を両親と一緒に手を繋いで歩いたんです。それから立派なお社でお参りして千歳飴とかもらいましたねー」

 朋子は昔を思い出し、懐かしむように笑顔を浮かべた。

「今年三歳って満年齢で?」

 直人がふと訪ねる。

 それに母親は眉をひそめた。

「満年齢? 普通の歳の数え方だよね? それならそうだけど」

「…なんですかいきなり?」と朋子はまた直人の変な野暮かとむぅと唸った。

「いや、確か七五三は満年齢じゃなくて“数え歳”で祝うんじゃなかったけ? 俺ん時はそうだった気がする」

「かぞえどし?」

「生まれた時を0歳じゃなくて、1歳とカウントして、誕生日じゃなく毎年元旦に一歳ずつ増える数え方。俺は6月生まれの今年16歳だから、数え歳だと17歳になるんだよ。満年齢一歳プラスになるの。近世以前はこういう歳の増え方だったんだぞ?」

 直人のトリビアにわかったんだか、わかっていないんだか?が取れない朋子。

「昔はなんだか、ややっこしい数え方だったんですね…」

「そうでもないぞ。当時の行政手続きでも皆が一斉に歳をとるから年初めにまとめて出来て簡素化できるし、祝い事なんかも同年代でまとめてできるっていうメリットもあったらしいしな。今の生年月日を元にした満年齢の手続きだと、誕生日を忘れたりとか早生まれや遅生まれで、免許取得の時期とか不平等が出て来きたりとかしてたりするじゃん。“数え年”が悪い方法とは思わないけどな」

「でもそれだと、誕生日祝いとかの習慣あまりなかったんじゃないんですか?」

「まぁ、そうだろうな。でも誕生日を祝う事自体、西洋近代化されてからの習慣だし当時はそんなに気にしてなかったと思うぞ」

「…そうなんですか。大切な日なのに」

 あまり納得の行かない朋子。

 今と当時を比べること自体おかしいとは思うが、毎年自分の誕生日を祝ってくれる家族がいる朋子は、釈然としなかった。

「……あのさ、なんでうちの子の歳の話で、昔の風習の話になってるんだい?」

 と母親が二人のやりとりに呆れ気味で呟いた。

 それに直人と朋子は、あっ、と声を上げまた話が脱線していたことに気付いてしまう。

「……あんたら、普段もこんな感じなのかい?」

 ため息を交えこの母親はそう尋ねる。

 黙ってこの二人見ていたのだが、とても前世で殺し合ったような仲には見えない。

 むしろ、仲が良い。

 そんな風に思われた魔王と勇者の転生者。キョトンと互いに目を合わせた。

「…直人くん、意外とうんちく好きですよね」

「悪いか。俺は理論派魔王なんだよ」

「…どっちかと言うと雑学魔王じゃないですか」

「……否定はしない」

「………一体何なんだ、あんたらは」

「はーい! おっ待たせーしましたっ!」

 と、起き抜けの目覚ましの如く、とある学生服の少女が場の空気を破るように突然現れた。

 その少女は頭を短めのツイン―テールでまとめ、真っ白なブレザーを羽織り首元には赤いリボンを付けていて、灰色と白のギンガムチェックのミニスカートに白のハイソックスとローファーという学生姿。

 しかし直人は、その顔に見覚えがありすぐに正体に気付いた。

 僧侶のコスプレイヤ―である。どうやら、あのやたらやかましかったトランクの中身がこの服であったようだ。

「……今度は何のキャラのコスプレ?」

「本物だってば!」

 *****

 異世界地球テラからの転生者一行は、交番のお巡りさんに喧嘩まがいの騒ぎの事を注意され頭を冷やした後、まだまともに昼食を取っていないこともあり、この調布駅南口ロータリー脇コンビニの2階にあるファミリーレストラン“ジョースター”へと移動していた。

 その理由は、ツイッタ―だけのやり取りでは何とも行き違いが多く、互いのまともな近況を報告、これからどうするかを話し合うためであった。

 レストランは割りと閑散としていて、禁煙フロアは自分達も含め客数は僅か。これならゆっくり話し合えるようである。

 それぞれの注文品が届いた後、まずトイレで僧侶のコスプレから学生のコスプレに着替えて来た僧侶の転生者が口火を切った。

「さて、まず改めて自己紹介しましょうか!」と甲高い声で元気よく。

 その言を受け、まず魔王と勇者の転生者たちから自己紹介を始め、そしてこれまでの経緯も説明することにした。

 経緯は最初、朋子の方が勇者一行の代表として説明していたが、元来説明下手なのと緊張のためちぐはぐになってしまっていた。

 武闘家と僧侶の転生者は、朋子の説明からはあまり要領を得られず、仕方なしに敵方である魔王の転生者の直人が改めて補足する。

「……そんなことがあったんですか!」と、妙にウキウキしている僧侶の転生者。

「はぁぁ……。改めて思うと、魔王と勇者の転生者が高校生か…」と嘆き気味の武闘家の転生者。

 仲間二人が、直人の説明で納得をしたことに少し不機嫌になる朋子だったが、端目に先ほどから武闘家の転生者の元気がない事が気になった。

 ……思えば、一番お巡りさんに注意を受けていたのは彼女だ。

「大丈夫ですか?」

 おずおずと勇者は武闘家の心配をする。

「大丈夫そうに見えるかい?」

 と、心持ち慳貪けんどんに返してくる武闘家の転生者。

「あの…、その…」

 朋子は少し戸惑う。…そんなにお巡りさんに怒られたのが堪えたのだろうか?

「……いや、悪いね。なんでもない。じゃあ私が改めて自己紹介するよ。異世界地球テラにて勇者一行が一人、火竜拳法の使い手カレン。今の名は日野聡美ひの さとみ。今年で二十一。横浜のアパレルショップで店長やってるよ」

 そう言って我が子を撫でる聡美。

「そしてこの子は、日野……かれん。今はこの子がカレンだよ」

「かれん、ちゃんなんですか?」

 と朋子は少し驚いた。カレンと言う名の聡美の娘は注文したオレンジジュースを一心不乱にごくごくと飲んでいる。

「そ。楓の恋と描いて楓恋カレン

 そう言って母の優しい顔で我が子を撫でている聡美。

「…可愛いだろ?」

 母の顔で微笑む。明らかに我が子を溺愛しているようである。

「はい。可愛いです」

 勇者の転生者は素直に頷く。本当に可愛い。

 かつては彼女は勇者エルフィンにしつこく求婚していたのだが、地球に転生してからは違う出会いがあったようだ。しかも二十一歳で三つの子、ということは、高校生くらいで我が子を授かっている。

 なんとも複雑な思いに駆られる朋子。

 一体、彼女はどんな人生を歩んだのか。

「はいはーい! 次、私ですね!」

 と、今度は僧侶の転生者がテンション高めで手を上げる。

異世界地球テラにて勇者一行が一人。聖教会神官サンドラ・イアキフ! 転生した今は、エレメントマスター、エリリカ・アリドーと名乗り中学生やってまーす!」

「「「……」」」

 その妙なハイテンションに眉を顰めるその場一同。

「今は、外国人なんですか?」

 僧侶の現世名に違和感を感じた朋子。顔は思いっきり日本人顔なのだが…。

「いえ、有藤瑛里華ありどう えりかです。普通の日本人です」

「なんで欧米風だよ。ってか、エレメントマスターってなんだよ」

 と直人がツッコむ。それは皆が思った事の代弁であった。

 しかし瑛里華は待ってましたとばかりに目をギラっとさせた。

属性エレメント保持者マスターです!」

「いや意味不明だって」

「まず巨乳属性!」

 魔王の転生者たる直人を無視して、属性エレメント保持者マスターが何たるかの概要説明を始める僧侶の転生者。

 そしてまず巨乳属性を説明するため、どうだと言わんばかりに、そのバストを強調した。

 目の前に二物に、思わずたじろぐ直人。しかし勇者の転生者たる久住朋子は、サッーと顔を青くした。

「Gカップありますよ」

 と、ドヤ顔の瑛里華。

「……あ、そうですか」

 なんとも言えない直人。女子に胸の自慢をされても、正直反応に困るんだが、と顔を引く憑かせたが、横目に勇者を見ると愕然としていた。……やっぱ気にしてるのか。

 聡美はジト目で無言であった。

「ロリ属性!」

 勇者の胸のサイズなどお構いなしに、瑛里華はさらに概要説明を続ける。

「……ロリって」とまた顔が引く憑く直人。

「今年14の中学二年です」

 と言うことは本当に学生なのか? にしてはやたらと大人っぽい気がするが。

 そう直人は思うと彼女の背丈が、身長は150㎝も行っていないことに気付く。本当にロリサイズだ。

 朋子はまだ顔を青くしており、未だ聡美は無言。

「お嬢様属性!」

「え? そうなのかい?」と、聡美が思わず怪訝な声を出した。

「はい! 名門、学修院中等部所属です!」

「学修院って…、ニュースとかで皇族の方が通ってるていう学校ですよね!?」

 今度はさすがに朋子も驚く。

 世間知らずの朋子でも知っている名門学園だったのである。であれば彼女が今来ている服もコスプレではなく本物の制服と言うことになる。

「………確か、華族子弟子女の教育の為に明治時代に設立された元官営学校だろ? 昔からの上流階級の学校じゃん」と補足する直人。

「……ふっふっふ、でも私の家はそんな由緒正しい訳じゃないんですよ~。どっちかというと新興の家で、ただお父様が財閥の専務職でお母様も良家の娘ってだけで~」

「あんた、現世でもブルジョワかい…」

 と、何か妬み気味の聡美。

「そして、美少女属性!」

 ここ一番に瑛里華はそれを強調した。確かに直人が今まで出会った女子の中では、彼女は一番の美少女であった。それはもうアイドルクラスに。

「you tubeチャンネルとか持ってるんですよ~。見た事ないですか?」

 そう言って自信ったっぷりに微笑えむ。

「「「………」」」

 だがその場一同は、総じて何んとも言えずにいた。

 彼女はそれでもお構いなしに、その現世での肩書を丈々と宣言した。

「つまりは……あらゆる属性を保持した者、属性エレメント保持者マスターです!」

 室内なのに、残冬の冷たい風が吹く。

「まぁ他にもオタ属性とか優等生属性とか、細々した属性を保持して……」

「とりあえず、ウザいね」と総括して両断する聡美。

「なぬっ!」

「ウザキャラね」とさらに補完する直人。

「ウザキャラ言うな!」

「……」

 呆れ切っている魔王と武闘家の転生者を横目に、朋子は僧侶の妄言に動揺していた。

 僧侶サンドラは異世界地球テラにて最大の宗教勢力である聖教会の神官の一族の出で、本人も禁欲を是とする聖職者であったのだ。確かに我は強い少女ではあったが基本は控えめな性格であり、俗世にもかなりうとかったと記憶していたのだが…。

「…転生して、別人の様に変わってしまったんですね…」

 そう言い結んで朋子は、俯いてしまった。

 前世とは言え、慣れ親しんだ筈の人物の性格が変わり果ててしまったことに、勇者として大いにショックを受けてしまっていた。

「って、おまいう。男が女になっている勇者様に言われたくないです」

 冷静にツッコむ瑛里華。

「うっ!」と朋子は図星を突かれる。

 そもそも勇者の転生者も性格どころか性別すら変わってしまっている。

 そんな朋子、直人は呆れながら呟く。

「……お互いが、言う筋合いないよな」

 前世と姿形性格が変わっていることは予想できた筈なのだ。

 先日、自分も朋子に口酸っぱく言っていたし。

「直人くんこそ人間じゃなかったくせに」と突っかかり気味に朋子。

「…いやまぁ、そうだけど」

 しかし、その魔王の方も魔族から人間へと、種族すら変わっていた。

「……あんたら全員が、言う筋合いないよ」

 と、聡美がこれでもないくらいに呆れ呟いた。

 この三人は、あまり前世と性格や体格の差違のない武闘家の転生者に比べれば、全くの別人なのだ。お互い変わっていると言い合っても、五十歩百歩なのだ。

「「「って、子持ちが何を言う」」」

「……」

 聡美以外の全員がハモった。

 武闘家の転生者は、現世でお母さんになっている。

まぁ、御尤ごもっとも。と口を噤む。

 結局、前世とは変わりきってしまっている転生者たちは、誰も言う筋合いはなかったのであった。

  *****

「さて、と」

 注文品を食べ終え、ドリンクバーのホットウーロン茶で一息ついた聡美が紡ぐ。

「一人欠いちゃいるが勇者一行が再び揃った。現世にて、これからどうするつもりだい? …精霊の加護を受けし勇者、エルフィン・エルリード?」

 皆の眼差しは、一心に勇者の転生者である朋子に向けられた。

 朋子は息を飲む。

 そして、どうするか? その思考を一瞬で終わらせる。

 己は勇者なのである。

 ならば答えは一つ。

 ……………魔王を、討つ!

「取りあえず、あたしと結婚するかい?」

「ひゅいっ?!」

 と出だし、武闘家の転生者から鳩豆鉄砲を食らってしまう勇者の転生者。

「ななんなななん、なんでですか!??!」

「あたしと前世で、そう言う約束してただろ?」

「しっ…してたような、と思いますけど、でも!」

 確かに前世の記憶ではカレンが仲間になる際、勇者エルフィンは全てが終わった暁には、カレンを嫁にすると言う約束を半ば無理矢理させられていた。

 しかし今そんな事を言われても、……正直困る。

「アッー!! ダメです、カレン様! じゃないや聡美さん! 抜け駆けはダメです!」

 と僧侶の転生者たる有藤瑛里華は横やりを入れる。

 エルフィンはサンドラとも婚約の契を交していたのである。

「……百合属性も、私欲しいんです!」

 朋子がさらに困惑することを言う瑛里華。

 そして彼女の眼はかなり真剣であった。

「そそそそ、その、こ困ります! わ、わたしは…。その」

 大いに焦ってしまう朋子。

 まさか同姓からのモテ期到来なんぞ、思いもよらなかったのだ。

「…………そ、その、二人ともすいません…その」

 と、おずおずとしどろもどろになる。

 そう言えば、前世で勇者はこの二人以外からも、結構求婚され、殆んど曖昧に返していた様な気がする。……勇者はなんて軽薄な奴だったのだろうか? …自分のことだけど。

 と、あたふたしている朋子を見かねたのか、直人がウンザリ気味に口を挟んできた。

「……あのさ、朋子困ってるからさ。からかうのそこまでにしてやってくんない?」

 勇者が男から女になっていることは、彼女らにとっては確かに由々しき事態なのだろう。しかしそれを言うなら彼女らとて、色々変わってしまっている。

 朋子ばかり責められるいわれはない筈なのだ。

「……まっ、そうだろうね」

 と、聡美はあっけらかんに呟き、魔王の転生者たる直人を静かに見据えた。

 直人がその眼を見るに、本当に朋子をからかっただけのようだった。

 それから彼女は膝上で絵本を見ていた我が子を軽く抱きしめる。これくらいの子では逆に珍しいくらい大人しい楓恋は、ん、と少し窮屈な顔を浮かべた。

「……今は、この子がいるからね。」

 感慨深い息を交える。

 聡美は記憶微かだった意中の相手よりは、今、自分の手の中にいる我が子の方が大事なようであった。

「私は半分本気なんですけどねー」

 と妙に淡泊気味に瑛里華。

「……そ、その」

「あーもう、そんな困った顔しないでくださいよー」

「…いや、あの」

「そう言えば聡美さんって、もうご結婚されてるんですか?」

 瑛里華が前世の契りの話を有耶無耶に、何気なしに聡美へ尋ねる。

 だが聡美はその質問に柔和にゅうわだった顔を一瞬暗くした。

「…とっくにバツイチ。今は、俗に言うシングルマザーだよ」

 聡美は妙に忌々しくそう呟くと、暗にこれ以上聞かないでくれ、とでも言いたそうに視線を下げ、我が子と共に絵本を読み始めた。

 少し気まずいモノを朋子は感じる。…本当に、どんな人生を歩んだんだろうか?

「…そうですか」

 瑛里華は、興味を失うようにそう呟くと、カルピスソーダを口に付ける。続けて、「ところで魔王は…」と、直人に視線を向けた。

 頬杖をついて、窓の外を見ていた直人は、いきなり話を振られ、虚を突かれた。

「ん? なんだよ?」

「勇者様とどれくらい付き合ってるんですか?」

 途端、顔が沸騰する魔王と勇者の転生者。

「「付き合ってない!!!」」

 と瑛里華の質問を、息ぴったりに否定した。

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