ウィンクキラーゲーム

ろいくん

第1話 始まりを告げる絶望

6人用声劇台本

配役一覧 男3、女1、不問2






主人公

如月 迅(きさらぎ じん)

(性別:男)

17歳、高校2年生

幼い頃にとある事件で両親を亡くしている

心に深い絶望を抱えていて危なげではあるがそれでもどこかでは希望を信じて必死に前に進もうとしている





ヒロイン

三枝 春乃(さいぐさ はるの)

(性別:女)

17歳、高校2年生

迅の幼馴染で迅に好意をもっている

陰ながら迅を支えている一途な女性

……だが、とある秘密を抱えている




迅の親友

赤坂 智也(あかさか ともや)

(性別:男)

17歳、高校2年生

高校に入ってから迅と友達になり、今となっては親友と呼べるまでの仲

親友想いで迅の過去を知って

少しでも元気になってほしいと考えている





大神 隼斗(おおがみ しゅんと)

(性別:男)

年齢不明

迅のことを知っているようだが

迅は覚えていない





???

(性別:不問)

迅に話しかける謎の声

その存在は善か悪か………。



ナレーター

(性別:不問)




ーーーーーーーーーーーーーーー











第1話

始まりを告げる絶望










ナレ

彼は自分が嫌いだった。今ものうのうと生きている自分が………。

何故不条理にもこの世界は奪われることが多いのか……。

何故…何故、人間はこんなに弱く

何も守れないのか…と

何も守れないこんな非力な自分に嫌気がさしていた。

嫌いだこんな世界、大嫌いだ…と彼は言う

何度…何度この世界を壊したいと思ったか

迅はそう思う中、今日も学校に行くために

登校している









「なんで生きることってこんなに苦しいんだろうな…」







春乃

「苦しいのは生きてるからだよ?迅くんは今もあのことを悔いてるかもしれないけどね?あれは仕方ないよ」






「仕方ない?仕方ないって…。

俺があの場に遊びに行ったせいで父さんと母さんが通り魔に刺されたんだ……それなのに!お前は!!それなのに春乃は仕方ないって言うのか!?」






春乃

「ごめん…そんなつもりじゃ…ごめん、なさい」






「いや、すまない俺の方こそ取り乱した

忘れてくれ…」







春乃

「ごめんね迅くん…」













春乃

「………あー、えっとね?迅くん、今日の放課後空いてるかな?」






「…………ん?いや、ごめん今日は用事があって無理なんだ」






春乃

「そ、そっか…うん、じゃあまた今度でいいよ?」







「なんか俺に用があったのか?」






春乃

「んーん、今度で大丈夫!」







「??…。まぁいいや」







春乃

「そーいえば迅くん最近のニュース見た?」







「あー、あの謎の怪死事件だろ?集団自殺やら猟奇殺人とかって言う」






春乃

「うん、それ…全国的に起こってるから何か関連性があるんじゃないかってテレビの人は言ってるけど今回、私たちの区域だよね…」







「そう…だな。春乃は怖いのか?」






春乃

「そりゃ怖いよ、色んな変な噂があって殺人鬼がいるだの過激な宗教団体の影響だとか……」







「春乃は考えすぎだ…大丈夫だ」






春乃

「う、うんそうだよね…。あーうん!この話も終わり!ちょっと走らないと学校遅刻しちゃうよ!ほら、迅くん走ろ!!」






「お、おい春乃待てって!」






ナレ

彼はこんな日常の中でも全てを壊すきっかけが欲しかったんだろう

だからあんな根も葉もない噂も信じてしまった……。

それが嘘と真実に埋もれた

自分の運命と向き合うことになるとは

迅は思いもしなかった




ーーーーーーーーーーーーーーーー







智也

「よー!迅!とりあえず、おはよーか?」






「お前は朝からうるせーな、まぁおはよ」







智也

「なんだよーうるせーって。朝は元気よく!だろ?朝からそんな辛気臭い顔してるとモテねーぞ?」







「別にモテたくもねーし、それに朝は弱いんだ、それに春乃のせいで走ってきて疲れてんだそっとしといてくれ」







智也

「くぅぅぅ!お前はいいよなぁ春乃ちゃんと毎日一緒に登校できて…あぁ羨ましい!」







「たまたま同じ方向で幼馴染っていうだけだ。別に羨ましいことなんてねーだろ」








智也

「俺にとっては羨ましいんだよ!春乃ちゃんは可愛いし、可愛いし…可愛いんだよ!」







「お前ってもしかして春乃のこと好きなのか?」






智也

「あ、いや、そーじゃなくてだなうん。可愛いとは思うだろ?」






「んー?どうだろうな……まぁ見た目は可愛いけど性格は男っぽいからなぁ」





春乃

「だーれーがー!男っぽいって?」





「三枝春乃、お前以外にいないだろ?と言うかお前もうすぐ授業始まんだから自分のクラス戻れって」






智也

「おっすー春乃ちゃん、こいつの言い方はともかく教室戻らないとまた先生に怒られるぜ?」






春乃

「もぉ2人して……。はいはーい教室に戻りますよーだ」





ーーーーーーーーーーーーーーー






ナレ

授業も終わり

生徒達が帰り支度をしている中

智也が話しかけてきた







智也

「なー迅?お前放課後暇か?」






「なんでだ?」







智也

「お前最近元気ないだろ?だからゲーセン!行こーぜ?」





「どーせお前が行きたいだけ、だろ?

でもまぁ心配してくれてありがとな

んー、そうだな、たまには行くか」







智也

「よしっ!決まり〜!じゃあ早速行こーぜ!」







「ああ、そうだ悪い…先に行っててくれないか?

担任の先生に呼ばれてるの思い出したわ」







智也

「りょーかい!っとじゃあ南駅前口のゲーセン集合ってことで!ちゃんと来いよー!」






「元気がない……か。はは、元気が無い…ね」







ナレ

職員室に向かう迅

廊下ですれ違う生徒の顔も彼の視界の中では

ぼやけて見える

代わり映えのない日常の風景だったから……。





???

「そんな代わり映えしない世界を壊したいんだろ?如月迅くん」






「!?…なんだ今の声…直接頭の中に話しかけられてるそんな感じの……?あれ…さっきまで周りにいたみんなはどこだ?」







???

「ふはは♪驚いているようだね?」







「誰なんだお前は!?」







???

「今は教えない。それより目の前に集中したらどうかな?」







「目の前ってなにいって…………!?」




(ナレ)

謎の声に従う訳では無いが

条件反射で前を向いた

そこにはひとりだけ

呆然と立つ何かがいた






???

「ボケっとしてると死ぬよ」





「さっきからお前はなんなん…」





ナレ

それ以上は言葉として出てくることは無い

腹を蹴られたからだ






「カハッ!!?な、なんなんだよいきなり…」






???

「はぁ……。僕が目覚めて早々、君のこんな体たらくを見てると嘆かわしいよ。少しだけ眠れ。次に目が覚めた時にはすべて終わってるから」






ナレ

そう言われた後、迅は意識が遠くなるのを感じた。







ーーーーーーーーーーーーーーー





春乃

「……くん…迅くん!!」







「?春乃……か?ここは…?」






春乃

「ここは?って…学校だよ、ボケーっとしちゃってどうしたの?」






「え?俺確か………さっきまで」






春乃

「迅くん?」






「さっきのやつは!?春乃!ここにいると危険だ早く逃げるぞ!」






春乃

「危険?え?ちょ…迅くん大丈夫?」






「いきなり襲われたんだ!

だから逃げる…ぞ…?

あれ…?さっきまでいたはずなのに

蹴られたんだ俺、よくわかんなくなってそれで…あれ?痛みも消えてる…」






春乃

「ホントに大丈夫?迅くん疲れてるんじゃ…」







「あの声も聞こえないし…どーなってんだいったい」






春乃

「変な迅くん。あ、先生探してたよ?」






「あっやば、急いで先生とこ行かなきゃ」








春乃

「職員室いると思うよ?えーっとそれじゃあ、じゃあまたね…迅くん……」





ナレ

そのとき…何故か春乃の顔がとても悲しそうな顔に見えた気がした







ーーーーーーーーーーーーーーーーーー







智也

「何してたんだよぉ迅!まさか寄り道かー?」





「悪かったって…なぁ智也?」







智也

「なんだよ?」







「さんざん待たせといて悪いんだけど俺、今日行かなきゃ行けないとこあって今日は早めに行ってやろうと思ったんだ」







智也

「ん?ああ、そっか…。今日だよな、お前のご両親の命日って。珍しいな、早く行くなんて」







「悪いな誘ってもらっといて、いつもは夜に行くんだけどな…」






智也

「んー、じゃあ今度お前のおごりでカラオケな!」







「ありがとな智也、んじゃまた」








ーーーーーーーーーーーーーーーー











「母さん…父さん……今日でちょうど10年だな

ごめんな……ホントに。俺が…俺がいけなかったんだ。母さんと父さんの前じゃ泣き虫のまんまだな俺」













ナレ

迅は誰にも泣いていた顔を見られないように俯きながら霊園を出て、バス停に向かっていたのが、俯いていたため人とぶつかってしまった。







「っとすみません!ちゃんと前を見てなくて」






隼斗

「あぁ、いや気にしないで?僕も前を見ていなくてね、大丈夫かい?怪我とかは……うん大丈夫そうだね」






「はい、大丈夫です。心配までしていただいて」






隼斗

「俯きながら歩いてると危ないから気をつけるんだよ?転んだりしたら大変だよ。

ご両親も前を向いて歩くんだぞって思ってると思うよ」





「そうですね…ありがとうございます」





隼斗

「いいよいいよ、じゃあ僕はこれで失礼するから」







「そう言えばさっきの人もしかして知り合いだったのかな…?もしそうならまた会えるだろうからお礼しなきゃな」





ナレ

迅はバスに乗り座席に座ると眠気が襲ってきたのでそのまま身を任せて眠りについた。

ちょうどその頃、墓前に立つひとつの影があった。







隼斗

「♪〜♪〜、まさかあの子があんなに成長してるとは…いやはや10年とはあっという間だと思わないかい?今回のゲームはきっと10年前の再来……いや、それ以上か。はは、待っててね如月迅くん?」







ーーーーーーーーーーーーーーーーー








(俺はこの世界が大嫌いだ……

憎くて憎くてたまらない。)






???

「なら、壊そうよ」






(壊す?それもいいかもしれない)






???

「壊してしまおうこんな世界、憎いだろ?全てが」






(あぁ、憎い…俺から理不尽に奪っていく

そして何も守れないこんな自分も……)






???

「そんなの知ってるよ。僕は君で…君は僕なんだから。考えてることなんて分かるよ」






(そうなのか…なら教えてくれよ

世界を壊す方法を……

何もかも消し去る方法を…

教えてくれよ…俺は……なにを…)





???

「簡単だよ?またあのゲームに参加すればいい」






(ゲーム?また?)






???

「あぁ、そうだよゲームだ。勝者には何でも願いを叶えられる特権が与えられる…。富や名声がほしい、力が欲しい……そんな欲望にまみれた汚い人間どもの怨嗟があのゲームを生み出した」





(汚い人間ども…か

何でも願いが叶うのか?)





???

「さぁ?僕にも分からない……けど勝者になればいい。君の欲望を満たせばいい」






(俺の欲望……なんだっけ)






???

「全てを壊す…だろ?」





(あぁそうだったな)





???

「時間が来てしまったみたいだね、お目覚めの時間らしい…君の欲望を叶えてくれるそのゲームの名は…」







〜〜〜ウィンクキラーゲーム〜〜〜







「ふぁぁ。俺寝ちまってたのか……

そー言えばウィンクキラーゲームって言葉なんなんだ?なんか頭から離れねぇ……。

ってかだいぶ寝てたのか

と言うよりさっきからずっとウィンクキラーゲームって言葉が頭に浮かぶ…なんなんだいったい……おっと降りなきゃな」









ナレ

バスを降り家に着くとPCを付けて

ウィンクキラーゲームという言葉が気になり早速ネットで調べてみた





「えーっと…ウィンクキラーゲームっと……ん?学生の間で流行ってるゲーム…ね。

なになに?複数のプレイヤーで行うゲームでその中に数名のウィンクキラーと呼ばれる人達がいます…………ふむふむ、要はウィンクキラー陣営とプレイヤー陣営で分かれてどちらかが全滅するまで行うゲームか

細かいルールは………」














ナレ

一通り調べたが

自分が何故こんなに気になるかなどと答えは出なかった

仕方なく考えるのをやめ、パソコンを閉じベットに入り眠りについた。




ーーーーーーーーーーーーーーーー







???

「調べて出てくるわけないじゃないか。君は馬鹿なんだね…。早く僕は君と10年前の続きをしたいなー」







(10年前?なんだろう)






???

「ふふ、分からないかい?まぁ記憶を書き換えたのは僕なわけだから

分からなくて当然か」







(書き換え?何を………)







???

「じゃあ少しだけ……ホントに少しだけ。真実の記憶を君に戻そう」




(真実の記憶?……ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!?

なん……だこれ!?

グッ!!いったいなんなんだこれ!?!?

父さん!!母さん!!

待ってくれ!!違う……俺じゃ…ない!頼む!やめろ……やめてくれぇぇぇぇ!!)





???

「ククッ……クハハハハハハ♪

いいねぇいいねぇ♪やっぱ君はこうでなきゃ!

あぁ…君が憎しみに染まっていく♪

でも、まだまだ足りない…もっとだ、もっともっと!

君の絶望を!憎しみを!僕に見せてくれ!!」






「カハッ!?……ハァ……ハァ……ハァ……。そうだ…10年前、俺はなんかのゲームをしていた…それで父さんと母さんを巻き込んで…その後……??その後……俺が…殺した?」






ナレ

ただただ泣いた

真実とは残酷なものであり時に

人の心を簡単に壊す

それは迅が両親を刺し殺すという

とても悲しい記憶だった

結局そのあとは寝れなくなり

そのまま学校に向かった。







春乃

「おっはよー迅くん!!ってすごいクマ!?え、え?寝てないの?!」






「いや、少しは寝たんだが目が覚めてそれから寝れなくてな」







春乃

「少しってどのくらい?」






「夜中に目が覚めてそれから気づいたらもう朝だったからなわからない」







春乃

「わからないって………大丈夫なの?迅くん最近疲れてるみたいだしちゃんと休めてる?」









春乃

(すごいクマ………。

それに……泣いたのかな。

すごく目が赤く腫れてる、きっとあのことで泣いたのかな………。

迅くんは優しいからきっと悔いているんだろうな……ごめんね迅くん)







「って聞いてるか?春乃」





春乃

「あ、ああごめん!ちょっとボーッとしてて…あはは…聞いてなかったなんの話だっけ?」






「ウィンクキラーゲームって知ってるか?」






春乃

「知らない」







「そうか……。まぁ他の人に聞いてみるか」






春乃

「う、うん……ごめんね、何も知らないから」









春乃

(なんで?なんで?なんで!迅くんの口からまたあの忌々しい言葉が出てくるの!?またあの悲劇を繰り返すの?!)






ナレ

春乃は意識を失いその場で倒れた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーー








春乃

「ん?ここは…………。」






智也

「お?気づいたか?春乃ちゃん!ここは保健室だぜ?迅が一緒に登校してたら突然倒れたってことで学校も近いからそのままおぶってここまで連れてきてくれたんだぜ?」






春乃

「そっか…。智也くんにも迷惑かけちゃったみたいだね。ごめん、それとありがとう」






智也

「んなこと気にすんなって!今、迅のやつ飲み物買いに行ってると思うからもう少し寝てなよ?」






春乃

「うん、そうさせてもらうね」






(間)






「クソあの自販機、ろくなものねーなホントに。なぁ智也コーヒーとアクエリどっちが………春乃!!?大丈夫なのか!」





春乃

「うん、ごめんねホントに」






「すげー心配したんだぞ!」





春乃

「あはは……心配してくれてありがとう」






智也

「迅のやつ心配だからってずっとそばに居たんだぜ?」






「なっ!?それは言うなよ!!」







智也

「いやーうん、青春してるなぁとおじさんは思いましてな?」







「おめーも同い年じゃねーか」






春乃

「ぷっあはははは♪」






迅・智也

「「笑うなよ」」






「まぁ元気みたいだし良かったよ。あ、水でいいか?」







春乃

「うん、ありがとう迅くん!」










春乃

(大丈夫…迅くんは迅くんだ。これからも優しい迅くんだ

私はもう二度と間違わない。

この2人を…迅くんを今度こそ守るんだ)





ーーーーーーーーーーーーーーーーー






ナレ

放課後になり迅はひとり図書室へと来ていた。日中に聞き込みをしたウィンクキラーゲームについてまとめる為に






「んー、結局ウィンクキラーゲームについて分かったことが少なすぎる…。その殆どは学生の間で流行ってるってレベルだし…」







智也

「どこにいるかと思えば、こんな放課後の図書館でひとり何してんだ?」







「あぁ、智也か。考え事と言うよりちょっとな」







智也

「ちょっとってなんだよ?」






「あー、説明するのめんどいからとりあえずこのノート見てくれ」






智也

「んーなになに?ウィンクキラーゲーム?あぁ、あの学生の間で流行ってるチーム対抗戦みたいなゲームだろ?」






「まぁそれなんだが……」







智也

「ん?なんだよはっきり言えよ?」







「なんかどうしても引っかかるんだよ、なんだか他にもある気がして」






智也

「他にも……ねぇ。あーじゃあ噂程度だけどこんなの知ってるか?最近ニュースで話題の謎の怪死事件とウィンクキラーゲームが繋がってるって話」






「いや、初めて聞いた…と言うよりどうやったらそんな根も葉もない様な噂話が結びつくんだ?」







智也

「流石に俺はそこまでは知らねーけど、結構噂になってんだぜ?」






ナレ

智也が言ったことが気になり帰宅した後すぐに自宅のPCで調べることにした






「ウィンクキラーゲーム  怪死事件。えっと、ホントだ結構関連記事多いな」







ナレ

そんな調べ物をしているとインターフォンが鳴った。







「誰だこんな時間に……はーい今出まーす!」







ナレ

扉を開けたがそこには誰もいなかった






「クソなんだイタズラかよ……。まぁいい、続きは……は?なんだよ……これ」






ナレ

そこには開いた覚えもないサイトがPC画面に映っていた。迅は椅子に座り画面を見た






「ウィンクキラーゲームへご招待…貴方は見事この度のプレイヤーに選ばれました。つきましては下記の手順に従ってください。ってなんだよこれ」





ナレ

迅はサイトをスクロールしながら目を通した。大まかにまとめるとルール説明と

最後まで残ったプレイヤーにはなんでも

願いが叶えられる、というものだった







「願いを叶えるねぇ……。少し前の俺なら胡散臭いとか言ってたんだろうな

だけどあの記憶、そして………ウィンクキラーゲームっていう関連の事件」






ナレ

迅は生唾を飲み込み画面の前でしばし考えたが参加ボタンを押した

押した途端画面がブラックアウトし数秒の後に画面が表示された






「おめでとうございます。貴方はウィンクキラー側に選ばれました。能力は愚者。能力内容は相手プレイヤーを5秒間見つめるとランダムに死の宣告を行います。

愚者の能力を持つものは現在2名です。

続いてルール説明です。

ウィンクキラーゲームのプレイヤーはウィンクキラーとERRORが存在し互いの能力を行使して戦い抜いてもらいます。

参加している両プレイヤーはどちらかが敗北するまで殺し合いを行ってもらいます。」







ナレ

迅はおおかたの能力とルールは把握し考えにふけっていると再びインターフォンが鳴った








「またかよ。どーせイタズラだろうからシカトだシカトめんどくさい」





ナレ

なおもインターフォンが鳴り迅はイライラしながらも玄関へと向かった




「あーもう!はーい!今出るから!」






春乃

「あ、ごめんね迅くん、たまたま近く通ったから見に来たの、ごめんねこんな遅くに」






「お前かよ…まぁ、とりあえず少し上がるか?」





春乃

「じゃあお言葉に甘えてぇ〜っと♪なんだかんだ迅くんの家来るの久々だなぁ」







「確かにそうだな、父さんと母さんが死んで以降は来なかったよな…」






春乃

「そう、だね…10年ぶりだね。あんまり変わってないんだね」






「まぁ、そんな変える必要もないしな………。なぁ春乃は10年前のあの日のこと覚えてるか?」





「ごめんね、あの時のことはあまりよく覚えてなくて」






「そう、か…まぁ10年前の事だもんな。あまり覚えてなくても仕方ないよな」







春乃

「うん、ごめんね……。あーそだ迅くん何してたの?」







「ん?あぁ、ちょっと調べ物をな」







春乃

「何を調べてたのー?あ、もしかしてぇえっちな動画とか?」






「ばーかそんなんじゃねぇよ、そうだ開きっぱなしだったから閉じないと」







春乃

「へー?えっちぃ動画じゃないのー?というか慌てて消そうとする辺りやっぱりえっちなものじゃないのー?」






「だからちげーって!はぁ…見てみりゃいいだろ、ほらパソコンこっちにあるから……ってあれ?さっき開いてたのに勝手に消えてる」







春乃

「勝手に消えてる訳ないでしょー?実は慌てて消したんじゃないのー?まぁいいか、それで何調べてたの?」







春乃

「ん?ほら、学校で聞いたろ?ウィンクキラーゲームのこと。あれを調べてたんだ」






春乃

「なんで?迅くん…なんでよ…。ねぇどこでその言葉を聞いたの?!一体どこで!?」






「お、落ち着けって春乃!どうしたんだよ急に…」





春乃

「あ、ごめん…………。きょ、今日はもう帰るねごめん」






ナレ

春乃は飛び出すように迅の家から出ていった。春乃は混乱する中、誰に話しかけるでもなく口にした






春乃

「なんで!?なんで!?迅くん……。貴方はまたあの壊れたゲームに身を投じるつもり?また…巻き込んでしまうの?また私は失わなきゃならないの?」






ナレ

春乃はどう帰ったか覚えてないほど気が動転していた。








春乃

「10年前の大惨事を絶対繰り返させない…。今度は絶対守ってみせるからね迅くん」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







智也

「よーっす!迅!って暗い顔してどーした?」






「あー、それが昨日の夜に春乃が家に来たんだが急に取り乱して出ていってそれっきりなんだ。学校も休んでるみたいだし、電話もメールも返ってこねぇし…」






智也

「なんでそーなったんだ?」







「俺にもさっぱりだ……。いや、ウィンクキラーゲームの話をしたから、か。倒れた時もそうなんだ…。その話をしてから倒れたり、取り乱したり」







智也

「んー?なんか嫌な思い出でもあるのかね?」







「わからない。今日学校終わったらあいつの家行って聞いてみるよ」






智也

「それがいいかもなぁ。まぁちゃんと仲直りしろよ?」








ナレ

放課後、荷物をまとめると

迅は春乃の家へと向かっていた







「なんだかんだ春乃の家に向かうのも久しぶりだな。昔はよく遊んだっけ」






ナレ

その道は懐かしく迅もまた両親を亡くしてからは春乃の家に行っていないのだ






「あれ…?変だな…この時間まだ散歩してたり近所の人が歩いてたりする時間なのに。この感じあの時と」






ナレ

迅が言った通りあの時と同じように人気が突然なくなり嫌な汗をかいていた

何故ならそれはーー





「あの時のやつだよなお前?」





ナレ

迅の目の前には彼をいきなり蹴り飛ばしたあの男が立っていた。






???

「そうだねぇまさか生きてるとはねぇ」






「またこの声か……なんなんだお前は」







???

「言ったろ?まだ教えない。まぁ、おかえりとだけ言っておこうか?」






「おかえりってなんなんだ」





???

「なにってウィンクキラーゲームに帰ってきたじゃないか

それよりほら、喋ってるとまたこの前みたいになるよ」




ナレ

そう謎の声がいった直後、人のようなものが高速で近づいてきたのだ





「!?…この前みたいに不意打ちくらうか…よ!」





???

「へぇやるじゃないか。久々に参加するくせにいい動きをするね」






「久々?なにい……っと危ねぇ!?クソ少しは状況判断する時間くらいねーのかよ!」






???

「状況判断もなにもないだろ?今、君はウィンクキラーゲームの真っ最中なんだから」







「は!?どーゆー事だそれ?!」







???

「状況を説明してやったこれ以上は教えないよ」





「クソが!なんなんだお前らは!!」





ナレ

迅は内心イライラしていた。いきなり襲いかかられ、謎の声が頭に響く、そんな中冷静でいられるはずもなく…

迅は相手の攻撃を避けて捌きながらーー





「くっそ!マジでなんなんだお前!何か喋れよ!!」





ナレ

迅がそんなことを問いかけるが目の前の人のようなものは少しも喋らない。避けて捌いてどのくらいたっただろうか?

いきなり目の前から男が消えたと思ったら背後から衝撃が走った






「グハッ!?いつの間に後に」







???

「ふーん、厄介だね。また僕が助けてやろうか?」






「うるせー!ちょっと黙ってろ」






ナレ

迅は目の前の男を見つめながら謎の声に文句を言った…。






「クソ……どうすれば……」





ナレ

そんなことを考えていると目の前の人のようなものがいきなり燃えだし黒焦げになって倒れた






「どうなってる…なにがあったんだ………!?死んで…るのか?」






???

「ふーん、愚者の能力か……。

あは、はははははははは♪君らしくていいじゃないか♪愚かで薄汚い君にお似合いの能力だねぇ?ククッ♪それにしても焼死とは…

いい趣味してるじゃん如月迅くん♪」






「愚者の能力…。じゃあこれがウィンクキラーゲームなのか?」






???

「だからさっきからそうだと言ってるじゃないか。これがウィンクキラーゲームだよ?」







「これってゲーム…なんだよな?」






???

「ゲームだよもちろん、生き残りをかけた…ね♪」







「生き残りって……じゃあこの人みたいなのは本当に死んだのか?ゲームなんだよな?!本当に死んでなんか」





???

「本当に死んだに決まってるじゃないか。君が殺したんだ」





「う…そだ……嘘だ………。こんなの聞いてない!?本当に死ぬなんて…嘘だ……」





???

「君もくどいな…。目の前の事が現実なんだ受け入れろよ。この黒焦げの人だったものは君が殺したそれでいいだろ?何をそんなに怯えている?君はそんなんじゃないだろ。もっと絶望に歪み、憎しみに染まった君の汚い部分を僕は見たいんだよ」







「なんのことだよ!!」






???

「嫌でも思い出すさ…このゲームを続けていれば…ね」






ナレ

迅は心の中で思った。確かに歪んでいる…。そんなことは知ってる、何も出来なかったそんな自分が憎い……と。

両親を自分の手にかけたこと

他にも思い出せないことがあるようで

まるで霧がかかっているようだった。





ーーーーーーーーーーーーーーーー






???

「あぁ、君は少しづつ憎しみにまた身を染める。ふふ、だから僕は君を離したくないんだよ…さてと、悪趣味に覗きをしてるゴミはどうしようか」




ーーーーーーーーーーーーーーーー





「ハァ……ハァ……。もど、ったのか?……あの死体は……どこにもない…。夢…だったらどんなにいいことか」






ナレ

迅は春乃の家に向かう気も失せそのまま引き返した…。






ーーーーーーーーーーーーーーーーー






智也

「おはよーっす昨日は会えたのか?」






「あーいや、昨日は会えなかったよ…」





智也

「そっかー、今日も春乃ちゃん休んでるみたいだからホントに大丈夫か心配だよな」






「あぁ、あいつがあんな取り乱すなんて俺も初めて見た…ウィンクキラーゲーム…か」






智也

「お前も固執してたそのウィンクキラーゲームってなんなんだ?」






「いや…ごめん」






智也

「なんで謝んだよ?」






「ごめん…今あまり話したくないんだ」






智也

「ほら、また謝ってんぞ?まぁいいお前が話せる時が来たら話してくれよ」






「ごめんな智也…ありがとな」






ナレ

予鈴が鳴り2人は席に着いた。

迅が席に着いたのを確認した智也は思うのだった






智也

(んー、ウィンクキラーゲームか…春乃ちゃんといいこいつと言い学生のあいだで流行ってるゲームだけじゃないよな………。調べてみるか)






ーーーーーーーーーーーーーーーーーー





迅「やっぱ、夢じゃないんだな…」





ナレ

そこにはニュースで焼死体の男性が見つかったと報道されていた……。




「俺が殺したんだ…俺が」






ナレ

そう改めて感じると急に吐きそうになり目眩がしてきた…。

迅は自問自答していた

こんなのゲームじゃない

これは殺人だ

でも本当にそうだろうか

永遠と答えの出ない考えを

一旦放棄した







「ウィンクキラーゲーム…こんな超常的な現象普通は信じないよな………。俺はこんなゲームに本当に参加して良かったのか?」






???

「迷っているようだね如月迅くん」





「また…か。どうせお前に聞いてもまたはぐらかすんだろ?」






???

「学習能力はあるようだね」






「お前…名前は無いのか?」






???

「名前なんてないね。まぁ少なからずあったとしても教えないけどね」







「いちいちムカつくなお前。なら勝手にエニグマと呼ばさせてもらうかな」






???

「エニグマ…ねぇ、イタリア語で謎って意味だったよね。僕に当てつけのつもりかい?」







「そんなとこだ」







???

「好きに呼ぶといい。あぁそうだ君にひとつ教えておこう、三枝春乃には気をつけなよ」





「なんで春乃のことを知ってるんだ?」






???

「これ以上は教えない」








ナレ

気になることが沢山あり聞きたいことを聞こうとしたがいくら呼びかけても声が

聞こえなかったので迅は諦めた






ーーーーーーーーーーーーーーーーーー







智也

「よ!迅!」






「こんな休日にどうした?」





智也

「この前、一緒にゲーセン行けなかったからお前とカラオケ行こうと思って電話したんだよ、どーする?今日ひまか?」






「そーだな、予定はないから遊ぶか」






智也

「なら良かった、じゃあ10時に駅前でいいか?」






「はいよ、じゃあまたあとで」






ナレ

迅は出掛ける準備をして家を出た。

駅に向かうためバス停で待っているとそこで

迅へと話しかけてきた人物がいた






隼斗

「おや、君はあの時の」






「すみません失礼なことをお尋ねしますが…どこかでお会いしましたっけ?」






隼斗

「あぁそうかあの時はぶつかってしまっただけだったからあまり覚えてはないか」





「?……あぁ!すみませんあの時は本当に前を見ていなかったのもそうなんですけど少し気分が落ち込んでて…」






隼斗

「おや、落ち込んでたのかい?」






「ええ、すみません。あの日は両親の命日だったので…………。あ、そうだ俺とあの日以前にもお会いしたことってありますかね?」







隼斗

「んー、その顔は覚えてないって顔だね」







「え?何か言いました?」








隼斗

「あーいや、すまないね僕の記憶ではあの日がはじめてになるかな」







「あ、そうですよね初めてお会いしますよね」







隼斗

「どうしてそんな質問を?」







「あ、いえあの日俺の両親の墓参りだとよく分かったなと」







隼斗

「ああ、そんなことか。君と会うのは確かにはじめてだけど君の両親とは面識があったからね」







「そうなんですか!?」






隼斗

「うん、ちょっとした知り合い…だよ」






「俺の両親10年前に死んじゃって…幼かったらか両親との思い出もそんなになくて。

あまり知らないんですよね両親のこと」






隼斗

「へぇ知らないのか、君の両親はとても息子思いだったよ…。君を最期まで守ろうとしたくらいだしね」






「最期って何か知ってるんですか!?知ってるなら教えてください!!」






隼斗

「簡単な話だよ彼らもウィンクキラーゲームに参加してたからね」







「!?ど、どうゆうことですか!?」







隼斗

「そのまんまの意味だよ?君の両親もウィンクキラーゲームの参加者でゲームに負けて死んだ」








「そん…なこと知らなかった、というかなんで貴方はウィンクキラーゲームのことを知ってるんですか?」






隼斗

「大神隼斗、隼斗って呼んでよ」






「……隼斗さん、なんでそのゲームを?」






隼斗

「僕も参加者だったから」






「隼斗…さんも参加者……

俺の両親が死ぬ時

目撃してましたか?」






隼斗

「残念ながら見てないよ

状況的に君のご両親は亡くなったんだなって分かるから」






「………ということは隼斗さんはその時のウィンクキラーゲームの生き残り…つまり最後の一人ですか?」






隼人

「まぁ、生き残りって所は正解

でも後一歩のところで願いを叶えられなかった」






「そう…なんですね。あの、このゲーム本当に人が死んでるんですよね……」






隼人

「もちろん。そういうゲームだからね」






「いまだに信じられない……。

というか信じたくないです。俺……人を殺してしまったんです。ウィンクキラーゲームの能力で」






隼人

「このゲームに参加した以上殺しに慣れないと次は君が死ぬよ?」





「俺だって死にたくはありません。

………そうだ、隼人さんはこのゲームに参加した理由はなんですか?」






隼人

「それはごめんね教えられないかな」





「すみません不躾なことを聞いてしまって……。あぁ、そうだ俺まだ名乗ってませんよね、如月迅ていいます」






隼人

「如月迅くん……ね覚えたよ。

僕も参加者だからいづれは君と戦うことになる……かもね?」






「俺、隼人さんとは敵同士になりたくないです…。こんなにも優しくて色々教えてくれた人に死んで欲しくはないです!」






隼人

「はは、買い被りすぎだよ?僕は如月くんが思ってるほど優しくないからね。でもありがとうね如月くん」





「今日は沢山教えていただきありがとうございました」





隼人

「いいよいいよ♪僕も如月くんと話せて楽しかったし♪……………君の目はまだ絶望に染まってることも確認できたし」






「へ?最後の方聞き取れなくて…すみませんなんて言いました?」






隼人

「あぁバスの時間が来ると思ってね、君はこのバスかい?」






「あ、いえ次のバスですね」






隼人

「そう、じゃあこれで。またね如月くん」






ナレ

隼人はバスの中で楽しそうに笑った

そしてーー





隼人

「やっぱり彼は面白いなぁ♪でもなんで覚えてないんだろうか……。まぁいい、好都合だしね。さて今度はどんな色でこの世界を染めてくれるのかな?ふふ♪」








第1話

始まりを告げる絶望

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る