パレードが君を連れていく

茂木英世

かわりにしんでくれるひとがいないので

わたしはじぶんでしなねばならない

だれのほねでもない

わたしはわたしのほねになる

谷川俊太郎「死と炎」


死すべき身より生れたものは何であれ

流転の境地よりのがれ出るために

肉体と共に消滅しなければならぬ、

されば汝とわれと何のかかわるところぞ。

ウィリアム・ブレイク「チアザに寄す」(土居光知訳)


 


 その日の死者数は零だった。


 それは一つの町の中での話ではなく。


 それは一つの県の話ではなく。


 それは一つの地方の話ではなく。


 それは一つの国の話ではなく。


 それは一つの大陸の話でもなく。


 それは一つの星の中での話だった。


 祝福するべき日は二日続き、三日目を記録し、三日坊主になる事なく人は勤勉に生き続け。


 そんな日がしばらく続き、そして人はようやくもう死ねなくなったのだと気づいた。


 というわけで僕は職なしになった。前職は葬儀屋だった。


 さて、どうしよう。

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