2ページ

 違う、その子はあなたのことが好きでそんなウソをついたんだって…ほら、その子は本当は悪い子で、あ、あぁ違う、違うんだってば…

「――はっ‼」

 …ん? あれ、ん? どこ…?

 ぱちぱち、と二度瞬きをして理解した。あぁそうかここは保健室だ。倒れちゃった男の人を連れてきてもらって、いつの間にか私、寝ちゃってたのか。寝不足とはいえ、それはさすがにダメだよね…人として。で、様子はどうかな? 先生は大丈夫だって言ってたけど――「へ」

 枕元に顔を向けると、ばちっと目が合った。しかも寝ていない、ベッドに座ってこっちを見ている。

 よかった!

「目が覚めたんですね!」

「は」

「あ~よかった! 頭を打っているだろうからってすごく心配で」

「の、割にはよく寝てたように見えるけどな?」

「え」

 そ、そうなの、かな? 

「人にエルボーかまして気絶させたのに」

「や、あれは偶然! それに倒れた拍子に頭を打ったみたいですし」

「あんたが急に振り返るからだろ」

「す、すみません…」

 でもだって、後ろにいるだなんて本当に気付かなかったんだもん…! 桜に気を取られていたかも、しれないけど…

「あんた名前は」

「わ、私ですか⁉」

「この状況であんた以外いるかよ」

「そ、そうですよねぇ」

 薄暗いからか、キッと睨まれた空気は冷たい。外はあんなに暖かそうだったのに。

「東、天音です。このお詫びは必ず…」

「あ、そ。俺は南律ね。はい、じゃ、これ」

「これ?」

 ずいっと目の前にスマホが突き付けられる。にっこりと笑った顔が逆に怖い。

「とりあえず、連絡先交換しよ?」

 出会いは出会いでも、こういうのはちょっと… 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る