サクラノオト
カゲトモ
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「ふぁぁぁ」
あ、やば大あくびしちゃった。何事もなかったみたいに歩きつつ、きょろっと目だけを動かして辺りを見てみる。よかった、廊下には誰もいないみたい。
昨日遅くまでドラマなんか見ていたからだよね、今日は朝からずっと眠たい。授業中もあくびしっぱなしだったし、それで最悪のタイミングで先生と目が合っちゃったし。
でもあのドラマすっごく面白いんだよね。今時主人公が食パンくわえて曲がり角でぶつかって始まるドラマなんて、どんなのかなって思ってたけど見るたびにはまっちゃってる。
私も食パンくわえてぶつかったら何かが起っちゃうかも?
「ふぁぁふ」
なんてね。あ~眠い。寝不足ってのもあるけど、春だからってのもあるかも。なんでか知らないけど、春ってすごく眠たくなるから。普通逆だと思うんだけど。
足を止めないで窓の外に目をやると、風はソヨソヨ、桜はサワサワ。さらに日差しはポカポカと来た。こんなにも暖かな日差しなんだもん、そりゃ心地よくて眠たくなっても仕方ないでしょ。
「ふぁ」
いい天気だなぁ。ピクニックとかしたいなぁ。こんな日に課題、したくないなぁ。
「はぁ」
昨日結局最後までドラマを観ちゃったから寝不足だし、予定していた範囲の復習も終わらなかったし、どうしよ。今日これから響子と一緒に課題を終わらせる約束だったのに。
私から一緒にやろうって言ったのに、怒るだろうなぁ。合流したくないなぁ。
「…頑張れ、私」
どのみち課題からは逃げられない。おとなしく響子にカフェオレを捧げて、課題を進めるしかないか。
あぁ、本能で生きる自分が憎い。桜はこんなにも綺麗なのに。
「はぁ…あ!」
そうだ、忘れ物――
「きゃっ!」
「わっ!」
あっ! と思った時にはもう遅かった! 振り返ったらゴゴンッ‼ なんて大きな音と共に男の人が勢いよく倒れてた。派手な髪の、私より背の高い人。
「だ、だ大丈夫ですか?」
「う…ん…」
ぎゅっと眉間に皺を寄せてお腹を押さえている。この感じ…もしかして、振り返った拍子にエルボーかました…?
「って、大丈夫ですか、大丈夫ですかー⁉ ちょ、しっかりしてください‼」
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