ヤンデル(?)僕と幼馴染

下端野洲広

第1話

「僕と付き合ってください!」




 僕こと綾河蒼太あやかわそうたは放課後の屋上で告白の最中である。


 告白の相手は空本そらもとひまり。肩口まで伸びたさらっとした茶色がかった黒髪、美しさと可愛さを同居させた容姿、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる抜群のスタイルとプロのモデル顔負けときている。しかも成績は学年で一桁と優秀で運動神経もかなり良い。正に天が二物も三物を与えてしまったハイスペックな美少女だと思う。




 そんな彼女と僕の関係は物心が付く前からの幼馴染である。家は隣同士でお互いの両親もとても仲が良かったので共に過ごす時間が長くなったのも必然といえるだろう。


 小学生の頃はそれこそ片時も離れないほど一緒に遊んでいたし、両親同士が一緒に旅行に行く事も多かった。


 だからこそこのままずっと一緒なのだと漠然と思っていたんだ。




 しかし、その考えに変化が訪れたのは中学生の時になる。いつの間にかひまりの周りには男子女子に限らず人が沢山取り巻く様になっていた。特に男子からは学年を問わず多くのアプローチをかけられている光景も珍しくなかった。




 そう、ひまりは中学生になって可愛く美しく成長した事で大きな注目を浴びる様になったのだ。


 それまでは当たり前の様に一緒に居たのに徐々に過ごす時間が少なくなっていった。




 この時になって僕はひまりの事が好きなのだとようやく気付いた。当時はなぜ今まで気付かなかったのだとかなり悔やんだ事を覚えている。しかし、落ち込んでばかりもいられなかった。


 このままではひまりが他の見知らぬ男子に取られてしまう。そう考えるだけで胸がざわつき気が狂いそうになった。しかし友達が少なく成績も大して良くない僕では明らかに釣り合っていないというのも事実であり、今想いを伝えても上手く行かないだろうと思っていた。




 だからこそある日僕は決意した。ひまりに相応しい男になってみせ、告白をしようと。




 その日から僕は真面目に勉強し始めた。今までしていなかった分を取り戻すのは大変だったけど、ひまりのためだと思ったら頑張れた。


 ひまりは県内トップレベルの高校に行くという話をされた時は目の前が暗くなりそうだったけど、くじけずにさらに勉強に打ち込んだ。




 その甲斐もあってか中学三年生の頃になると学年でトップクラスの成績を出せるまでになり、無事にひまりと同じ高校に合格することが出来た。


 そして高校二年生になった今でも学年で一桁台の成績をキープし続けている。なぜならひまりは学年トップの成績を中学生の頃から続けていて、釣り合いを取ろうと思うと成績を落とす訳にはいかなかったからというのが一番の理由である。




 しかし運動神経も良いひまりと釣り合うためには勉強だけだと駄目だと思っていた僕は同時に身体も鍛え始めた。元々運動は得意な方だったけど、ひまりを護るためにはもっと強くならないと、と考えた。


 だからこそインターネットで格闘関係の道場を調べ、いくつかピックアップした中から最も強くなりそうな所を選んで通うようにした。




 最初は基礎体力を付けるのがメインであり、ひたすら走り込みと筋トレの繰り返しで連日筋肉痛に悩まされる事になった。


 しかしこれも全てひまりのためと思うと気力を振り絞る事が出来た。




 しばらくすると一通りの型を教わり、組み手も始まったのだがこれがまた大変だった。最初のうちは攻撃を全て喰らってしまい毎日身体が痣だらけになってしまった。


 幸い顔面を狙われる事は無かったけど、家族には随分と心配された。突然人が変わった様に勉強もし始めるし、格闘道場に通い始めるし、端から見ると異常な光景だったかもしれないけど僕は全く気付いてなかった。




 これも努力の甲斐があって、中学を卒業する頃には道場内でもトップクラスの実力者になっていた。


 道場の師範からは共に門下生を指導してほしいと頼まれたが、元々はひまりのためというのが動機だったので丁重にお断りをした。


 とはいえ今でも道場には通っていて、時々門下生を指導する事があるので師範としては嬉しい結果だったのだろう。




 成績面と身体面どちらも中学校を卒業する頃には釣り合いが取れたと思った僕は告白をしようとしたけど、肝心な事を忘れていた事に気が付く。そう、ルックス面である。


 ひまりは可愛く美しいだけでなく、スタイルも抜群である。そんな彼女と釣り合いを取るためには僕もカッコ良くならなければならない。


 スタイル面は身体を鍛えているのですでに釣り合いが取れているはず。問題は顔立ちである。今まで自分の顔立ちが決してイケメンではないと思っていた僕は何も手入れしていなかったが、この日を境に気を使うようにし始めた。今までにぼさぼさにしていた髪の毛をばっさりと切って、出来るだけ釣り合いがとれる様におしゃれについても勉強をしていった。




 こうして高校に入学すると、ちらほらと女子に話し掛けられる様になった。最初の内は嬉しくて楽しく談笑していたのだけど、しばらくすると女子から声を掛けられる回数が減っていった。


 女子はひまりしか興味が無かったので特に気にしていなかったけど、不思議には思っていた。


 しかし、それを打ち消すかの様な事態が起こった。ひまりに複数の男子が言い寄ってきたのだ。




 この時点で僕は自分の大きな失態に気付いた。僕が自分を磨いている間に他の男子に取られてしまっては全く意味が無い事に。


 幸いひまりは誰とも付き合っていない様だったけど、今後誰かと付き合う事は充分にあり得る事だといえた。




 もしそうなってしまった時、僕は祝福出来るのか。


 いや、出来るはずなんてない!!


 僕の隣に居る以外はとてもじゃないけど耐えられない!!


 では、どうすれば良いのか。


 僕の頭の中で何かが音を立てて崩れた気がした。




 ソウダ、イイヨルオトコヲヨリツカナクスレバイインダ。




 ひまりに言い寄ってくる男子は全て排除する!


 そう決めた時、特に厄介なのは当時三年生のサッカー部キャプテンと二年生の野球部のエースであった。




 まず排除するターゲットは三年生のサッカー部キャプテンである高町清二たかまちせいじだ。身長が百八十センチでイケメン、コミュ力も高いため学年問わず女子からの人気が非常に高い。


 ではなぜ最初のターゲットに選んだのか。それは今まで何人もの女子と付き合って、時には何股も掛けていたという噂を聞いたからである。しかも付き合った女子の中には学校を辞めた事が一度や二度じゃないらしい。


 何があったかまでは知らないが、相当酷い出来事があったのではないかとされている。


 そんな男をひまりの傍に寄り付かせたくはなかった。ひまりが危険な目に合う前に排除しなくては。


 案の定というべきか、ある日ひまりに対して休日にどこか出掛けないかと誘っていた。


 ひまりはとても性格が良いから丁重に断ろうとしていたのだけど、先輩という事を盾にとって強引に約束を取り付けようとしていた。


 幸い友達らしき女子も味方してくれて事なきを得たけど、あの男が小さく舌打ちしていたのを僕は見逃さなかった。




 これは危ないと思った僕は放課後になってあの男の跡を付けていくと、どんどんと人通りが少ない道を進み始め、最終的には廃ビルの中へと入っていった。


 僕も跡を追う様に廃ビルの中に入って追跡すると、ある大部屋から下品な笑い声が聞こえてきた。どうやら一人だけでは無さそうだ。




「わりいわりい、今日は連れてこれなかったわ〜」


「ちえっ、残念だなぁ〜。清二から上玉だって聞いてたから楽しみにしてたのによ〜」


「だから謝ってんだろ。そのうちぜってー連れてくるからよ」


「ったく、せっかく上玉とヤれるからって仲間集めたんたぜ?この埋め合わせはどうしてくれんだ?」


「そう言うと思って、この前引っ掛けた女を呼んでおいたさ。格は落ちるがそれなりに楽しめるはずだぜ」




 その後も男どもの聞くに耐えない下卑た会話が続けられている。




 くそがっ!こんな奴らのところにひまりを連れ去られてたまるか!




 僕の足は自然と大部屋の中に進んでいた。




「お前らを排除してやる!」


「あぁ?何だてめえは!」




 取り巻きの一人が鋭い目付きで睨み付けてくるが、道場の師範に比べたら赤子レベルだなと思った。


 高町清二クズ野郎も僕に気付くと鬱陶しそうな視線を向けた。




「ああ、そいつは確かターゲットと同じクラスにいた男だな。どうやら俺の後を付けてきたらしいな。大方ターゲットに気でもあるんだろうぜ」


「へぇ、正義の味方ってか?そいつはおもしれえ!じゃあいっその事こいつをボコって誘き寄せてみるか!」


「こいつごときで誘き寄せられるかは分からんが、憂さ晴らしにはもってこいか」


「はは、違いねえ!やっちまおうぜ!」




 部屋には十人程居て、次々に僕に襲い掛かってきたがここで道場に通っていた成果が十全に発揮される。


 僕は一撃も喰らう事なく、取り巻きの男全員を立てなくなるまでボコボコにしてやった。




「ひ、ひぃっ!?た、助けてくれ!」




 僕が取り巻きの男どもを圧倒する様子を見て腰を抜かした様で、床を這いながら必死に僕から逃げようとしていた。




 だが、僕は決して逃がさない。こんなクズ野郎を二度とひまりに近付けない様にしておかなければならない。




「な、何でもいうこと聞くからよ!み、見逃し、ぐぼぉ!?」




 僕は奴の顔面に強烈なフックをお見舞いする。その後は取り巻きの男どもよりも念入りにボコボコにしてやり、サッカーで重要な両足は特に痛め付けておいた。


 最後に二度とひまりに近づかない事を丁・重・にお願いしたがもはや聞こえているかどうかは怪しいところである。


 まあ警察に連絡はしておいたし、こいつらの会話の一部始終を録音したICレコーダーもおまけに付けておいたので特に問題はないだろう。


 その後の話を聞くとどうやらかなりの数の女子高生が被害を受けていたらしく、取り巻きを含めて逮捕されたらしい。当然の事ながら退学は避けられないだろうし、県大会の代表に選ばれる程だったサッカーの実力も二度と奮えないだろうからいい気味である。




 取り敢えず一人目は排除した。次は野球部のエースを排除しなければならない。


 名前は浜内慎二はまうちしんじ。この男に関してはある意味でさらに厄介だった。身長が高くイケメンという点は一人目と同じだが、性格面に関しても評判が良く欠点らしい欠点が特に見付からなかったのだ。


 そのせいかひまりの表情も満更では無さそうな気がしていて、僕の心は激しくざわついた。




 僕はすぐに奴の調査を行った。周囲の人間関係、生活スタイル等は排除する上で重要だったので特に力をいれた。


 その結果、野球部のマネージャーを始めとして複数の女子生徒が奴に好意を抱いている事が分かり、休日に何回か女子と出掛けていたという情報も入手出来たのでこれを利用しようと考えた。




 僕はマネージャーと仲睦まじそうな様子を何枚か写真に撮り、休日に女子と出掛けていた写真も入手してSNS上にばら蒔いた。案の定校内にも瞬く間に拡がり、ひまりに言い寄っているにも関わらず他の女子にも言い寄っているという悪評を流す事に成功した。


 その結果かなりの修羅場に発展したそうだが、ひまりから離れてくれれば僕にはどうでも良い事であった。




 その後もひまりに言い寄る男をあの手この手で排除していくと、ひまりに近付く男は皆不幸になるという噂が広まって言い寄る男がぱったりと居なくなったのは嬉しい誤算だった。


 こうして僕は高校二年生になってすぐにひまりを屋上に呼んで今に至るというわけだ。




 果たして、ひまりの返事は・・・




「ふふ、もちろんオーケーだよ。よろしくお願いします、蒼ちゃん♪」




 輝く様な笑顔でひまりは僕に抱き着いてきたのだった。














「僕はひまりの事が好きです!僕と付き合ってください!」




 ようやく、蒼ちゃんが告白をしてきてくれました。


 私こと空本ひまりは今幸せな気持ちでいっぱいになっています。


 蒼ちゃんとはとても長い付き合いの幼馴染で、両親同士の仲が良かったのでずっと一緒に遊んでいました。


 だからこそ小学生になった頃にはすでに蒼ちゃんの事が好きになっていました。もう頭の中が常に蒼ちゃんの事でいっぱいで、どこへ行くにも蒼ちゃんと一緒でなければ満足出来なかったのです。


 でも当時の蒼ちゃんは私の事を単なる幼馴染としか見ていなくて時には悲しい気持ちにもなりました。




 もしこれから先に蒼ちゃんが別の女の子を好きになってしまったらと思うと胸が張り裂けそうになるのと同時に黒い感情が沸き上がってきました。




 蒼ちゃんは私の全て。蒼ちゃんが隣に居ない未来なんて考えられないし考えたくもない。




 どうしても蒼ちゃんと特別な関係になりたかった私は中学生になって自分磨きを始めました。勉強面、運動面、そして何よりも魅力的に見える様に。




 その結果良い事と悪い事が起きました。


 良い事は蒼ちゃんの私を見る目が変わってきました。日を追うごとに私に対して熱のこもった視線を向けるようになってきたのです。


 これはきっと蒼ちゃんが私の事を好きになってくれたのだと思い、天にも昇る様な嬉しい気持ちになりました。


 早く告白をしてほしいと心待ちにしていたのですが、蒼ちゃんは中々告白をしてくれません。しかもその頃から蒼ちゃんは私を見ると時折切なげな表情する様になりました。


 おそらく私と釣り合いが取れないと思っていたのでしょうが、そんな事を気にしないで想いを伝えてほしいと強く思っていました。


 時には我慢が出来ずに私から告白しようとも考えましたが、もし成功しても蒼ちゃんがコンプレックスを持ったままでは長続きしないと思って出来ませんでした。もし蒼ちゃんに別れを告げられてしまったら、私が生きている意味なんて無いと思っていますし。






 さらに悪い事に蒼ちゃん以外の男子に言い寄られる様になってしまいました。


 私のとっては蒼ちゃん以外の男子なんて全く興味が無いし、告白をされた時ははっきり言って鬱陶しいとさえ思いました。


 私は私の事を全て知ってくれている蒼ちゃんにこそ告白されたいのに、容姿に惹かれた程度で告白してくる様な男子は信用など出来るはずがありません。私に向ける視線は下心が見え見えでうんざりしていました。


 とはいえ体裁上は丁重にお断りをしなければならなかった事が苦痛でたまりません。恨まれて妙な噂を流されたくもなかったので。




 それに女子との友達付き合いも増えた事で蒼ちゃんと一緒に居る時間が減っていったのも私とってはとても辛かったです。ただ、友達付き合いは色々と情報を入手出来たり、時には力になってもらえる事もあるという便利な面もあったので切り捨てる事は出来ませんでした。




 蒼ちゃんと過ごす時間が減って悶々としていたある日、蒼ちゃんが突然色々と力を入れ始めたのです。おそらく私に釣り合う存在になるためだと推測出来ましたが、そんな事をしなくても私には蒼ちゃんしか目に映っていないのに。


 有り得ない事ですが、蒼ちゃんが頑張っている間に私が他の男子と付き合う事になったら意味が無くなるのにとも思いますが、ちょっと抜けた蒼ちゃんも可愛くて愛しい気持ちになります。


 最終的にはこの事で蒼ちゃんの憂いが無くなるのであればと思い、陰ながら応援する事にしました。


 さらに蒼ちゃんと一緒に居る時間が少なくなり、私のとっては辛く苦しい日々が続きました。何度も蒼ちゃんの部屋に押し掛けようとしましたが、蒼ちゃんの邪魔になってはいけないと思い遠くから密かに見守る事しか出来なくてどんどん想いが募っていきます。




 ああ、蒼ちゃん蒼ちゃん蒼ちゃん蒼ちゃん蒼ちゃん蒼ちゃん蒼ちゃん蒼ちゃん蒼ちゃん蒼ちゃん蒼ちゃん。




 本当に頭の中が蒼ちゃん事しか考えられなくて何も手に付かない時もありました。




 高校受験の時になるといつの間にか私が県内トップクラスの高校を受けようしているとの噂が広まっていました。


 誰が発信源なのかは分かりませんが、もし蒼ちゃんと同じ高校に行けなければ発信源を見つけ出して生まれてきた事を後悔させてやろう考えていました。


 幸い蒼ちゃんが頑張ってくれて同じ高校に入学出来ましたが、もし違う高校になっていたら、両親に頼んで蒼ちゃんと同じ高校にすぐ転校しようと思っていましたが。


 ただこの頃になると蒼ちゃんは勉強面でも運動面でも学年でトップクラスになっていて、もうそろそろ告白してくれるのではないかと日々期待感が大きくなっていきました。




 しかし、今度は別の問題が起きました。


 高校になっても私に対して男子が言い寄ってくるのは変わりませんが、蒼ちゃんが女子に声を掛けられる様になっていたのです。


 それは高校入学した時に蒼ちゃんがイメージチェンジをしてきてとてもカッコ良くなった事が大きな要因でしょう。所謂高校デビューというものです。


 これまでの蒼ちゃんは身だしなみに無頓着だったので女子から注目される事がありませんでしたが、きちんと整えればすごくカッコ良くなる事を私は知っていました。


 ですから、高校に入学して蒼ちゃんが身だしなみを整えてきた姿を見て胸が高鳴ると同時に大きな懸念がありました。




 蒼ちゃんの容姿に惹かれた女子が言い寄ってくるのではないか、と。




 案の定、蒼ちゃんに対して多くの女子が声をかけていました。その様子はまるで照明に寄ってくる羽虫と言っても過言ではありませんでした。


 蒼ちゃんは人柄がとても良いので、断り辛いところにつけこんでぐいぐいと色目を使ってくる女子害虫を見て私は憎悪の気持ちが沸々と湧くのを感じました。




 私の蒼ちゃんに手を出す事は決して許せません。




 私は蒼ちゃんに色目を使っていた女子害虫を一人ひとり呼び出して丁・重・にお願いしました。大半は顔を青くしながら頷いてくれましたが、たまに蒼ちゃんを本気に好きなった輩も居て素直に応じてくれない事もありました。


 蒼ちゃんの魅力に気付くところは感心ですが、私にとっては邪魔者以外の何者でもありません。




 ですから、私に言い寄ってきていた高町清二先輩を利用する事にしました。彼の黒い噂は以前から知っていたので、蒼ちゃんに近付いてきた女子をそれとなくけしかける様に裏で動いたのです。


 その結果私の思った通りに蒼ちゃんから離れていき、さらには自主退学していきました。


 どんな目に遭ったのかはだいたい想像が出来ますが、蒼ちゃんに色目を使った時点で重罪なので同情の余地は全くありません。


 その後は高町先輩も警察に捕まり退学となったので一石二鳥でした。蒼ちゃんが先輩の後を付けていたという情報があったので、きっと私のために排除してくれたのでしょう。


 その後は私に言い寄る男子が全て何かしらの不幸な目に遭った事で、私に近付く男子は不幸になるという噂が流れて言い寄られる事もほとんどなくなりました。


 私は蒼ちゃんにだけ愛されれば良いと思っているので、鬱陶しい男ども虫けらが寄り付かなくなったのは願ってもない事でした。


 蒼ちゃんが私のために動いてくれた事を知るだけで心が暖かくなりましたが、一刻も早く告白してきてほしいなとも思っていました。




 そして高校二年生になったある日、蒼ちゃんが私に声を掛けてきました。




「大事な話があるから、放課後に屋上まで来てほしい」と。




 いよいよ蒼ちゃんが告白してくれると思い、私は二つ返事で頷きます。思わず頬が緩みそうになりましたが、周りの目もあったので何とか耐えきりました。


 そうと決まれば早速準備をしなければなりません。私はすぐに両親に連絡して今日は家を空けてくれる様にお願いをします。


 二人とも私が何をしようとしているのか察した様で、快く了承してくれました。


 この時点で私の体は熱くなり、頭の中は蒼ちゃんの事で埋め尽くされています。




 蒼ちゃん大好き。蒼ちゃん愛してる。蒼ちゃんは私だけのもの。私は蒼ちゃんだけのものになれる。




 そのおかげで授業内容が全く頭に入ってきませんでしたが些末な事です。小学生の頃から待ちに待ったイベントがようやく訪れるのですから。




 時間はあっという間に放課後になり、屋上へ向かう階段を私はウキウキ気分で上がっていました。足取りは軽く、今なら空も飛べそうな気がしています。


 屋上に到着すると、すでに蒼ちゃんが待っていました。


 そして私の待ち望んだ言葉をついに聞くことが出来ました。




 私の返事はすでに決まっています。




「ふふ、もちろんオーケーだよ。よろしくお願いします、蒼ちゃん♪」




 私は嬉しさのあまり蒼ちゃんに抱き着いてしまいました。


 ああ、久しぶりにこんなに近くで蒼ちゃんの匂いを嗅ぐ事が出来て何もかも満たされた様な気分になりました。


 でも本日のメインイベントはこの後にあります。蒼ちゃんを私の部屋に誘い込んでいっぱい愛してもらうつもりです。だって家には私と蒼ちゃんの二人しか居ないのですから。


 今まで我慢をしていたぶん、私の想いが溢れ出てしまうのは仕方がないと言えるでしょう。


 これからの学校生活はきっと華やかになると確信しながら、私は蒼ちゃんに笑顔を向けます。




 モウゼッタイニハナサナイカラネ、蒼ちゃん・・・

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