あのひとに会えない日は死んでしまいそうになる

霜月ミツカ

1

 駅ビルの床は、ほかの建物よりも光の反射率が高くて、足早に歩くひとほど、輝いて見えるようになっている。


 艶がかった茶色い髪を綺麗に巻いている女性とすれ違うとき防衛反応で目を伏せてしまう。


キラキラしたオーラが眩しすぎて直視したらきっと目が潰れる。どうして同じ「女」なのに何もかもが違うような気がするのだろう。


 エスカレーターに乗ると右側が鏡張りになっていて、突然映し出された自分の姿に息を飲んだ。「わたしが思う描く自分」よりも、きょうのわたしは綺麗に感じた。髪は巻いていないし、キラキラオーラは纏っていないけれど自分しかしらないシミはちゃんと隠れているし、目はいつもより大きく見える。眉毛もちゃんと整っている。髪だってちゃんとまっすぐ肩にかかっているし、艶がある。そんな自分の姿を見て幸せな気持ちになるのに、その中に窮屈さが紛れ込んでいることに気がついていた。


 そんなのどうだっていい。だってきょうは、あのひとに会える日だ。

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