1章3節3項(19枚目) 導くもの
端的に言えば、対象者に相応しい仮面を教える代物。
当然だが、ここで指す仮面とは、
付け加えれば、対象者は
知ることができるのは、仮面を被る当人ではなく、他者である。
描写や鏡面反射などを用いない限り、己の
行く末を
占いし者は実現方法を画策できぬ者の知恵として、また足踏みに戸惑う者の支柱として、他者に寄り添う存在である。
願望を
しかし必ずしも映し出されるわけではない。
相応しい仮面が存在しないのであれば、何も映し出されない。
仮面は誰もが扱える代物ではないから、それは当然と言える。
けれど
その点は絶対である。見合う代物が存在しなければ、その姿に変わらない。
それ故に
そこまで分かれば、今後の行動も取りやすくなる。無駄足を踏む必要がなくなる。
遅かれ早かれ、自身に相応しい仮面がないことは分かる。死に行くときに理解する。手に入れられなければ、存在しないのと同じである。
希望と絶望を隔てる、第一歩。
その方法は至って単純である。
自身に見合う仮面を知りたいと願う者、
他者の肉体に手で触れることにより、
接触する間、その現象は続く。離れてしまえば、元ののっぺらな仮面へと戻る。目や鼻や口などの輪郭も浮かび上がらせない、真っ白なツルツルの形状になる。
何度も言うが、映し出される仮面の情報は姿だけ。名称は浮かび上がらない。
繰り返すが、
役割は浮かび上がらせることだけ。自身が被る仮面を通して、理解することは決してない。他者から教えてもらわない限り、正体やそのヒントも分からない。
従って
占いし者の視点ではなく、それ以外の視点で確かめることになる。
それこそ、鏡でもなければ、即時に知ることはできない。
目があってないような
ただし飲食できないから、味覚は封じられている。
口内を切ったときに流れる血液であれば、感じることはできるものの、外部からの摂取による作用は不可能である。生命体の性質を宿した仮面であれば、それも可能ではあるものの、それに該当しない仮面であれば、ほぼ不可能である。
しかし認識する原理が
対象者に相応しい仮面の姿を目にできるのはそのおかげである。
それでも分かるのは
しつこいようだが、他者と同じように名称は分からない。見た目以外、映し出された代物を特定する情報を持ち合わせていなければ、1枚1枚、実物と比較する作業が待っている。
手元にある物であれば、楽に片づくと思われるが、逆の場合、人手間加えなければならない。他者の所有物であれば、視認できるように段取りを組まなければならない。
調べるだけでも、相手に報復されてもおかしくない行動を起こす羽目になりかねない。己の所有物である仮面が狙われていると知れば、警戒されてもおかしくない。
仮面が別物であり、相手の標的に見定められてしまうと最悪である。野望への勤しみが断たれてしまうから。今後の活動に制限が科せられ、身動きが取れなくなる事態に発展するから、そのように評価せざるを得なくなる。
そして調査した結果、探し求めていた仮面だと判明すれば、手に入れたい
わざわざ調べ上げたのだから、諦めがつくとは思えない。そのきっかけがない限り、執着は簡単に断ち切れない。
従って仮面に手を伸ばしてくると見当できる。
しかし手段次第では結果が違ってくる。
交渉で双方の納得が応じられた上で仮面を手にできるのであれば、
しかし交渉が決裂した上で仮面を我が物にすれば、報復される確率は高い。
財産を奪われたままではいられない。それが大切であればあるほど、やられたままでは終わらない。取り戻す気力を折れていない限り、行動を起こすのは目に見える。
仮面に限った話であれば、己の意見を押し通すこともできる代物である。自己主張を強行させる切り札として切ることができ、
そのような事態に発展すれば、厄介である。
けれど、その道のりが途方であったり、泥沼と化したり、逆に白旗を揚げなければならない場合だと、面倒である。
それが
特に降伏する羽目になれば、その目に傾くのは必至と言ってもいい。
作業自体、照合する情報を持っていても同じである。
仮面の入手のために
ある程度の特定ができ、ある程度の危険を避けられるのは確かであるものの、超えるべき点は超えることになる。
けれど導かれるだけ、まだマシである。
手元に持つ仮面の数が少なければ、それほど時間をかけることなく、終わりを迎えられる。
しかし膨大に仮面がある場合、試す時間も比例して長くなる。
全てを確認する前に当たりを引かなければ、その傾向となる。
そして手元にある仮面で該当しなければ、目指すべく場所が分からぬ、探索に挑む羽目になる。
手元に仮面がなければ、一足先にその段階を踏むことになる。
探索は過酷を極める。
どの仮面が当たりなのか、分からないため、在処を知り次第、手をつけることになる。手に入れる方法の検討に入る。
しかし全てに関わろうとしなくともよいのかもしれない。
体調や危険度や金銭事情などを
何でもいいから、取り
自身に相応しい仮面を手に入れるのが目的であり、さらにその先を
代替できるのであれば、仮面を探す必要はない。
自身に相応しい仮面を以ってして、目的を遂げる。
その理想がない限り、探索から手を引くのは当然と言える。目的を阻む要因を取り除く戦力・権力・後ろ盾などが手に入れば、見限るのも納得できる。
自死するよりも前に目的をいち早く遂げる、もしくは遠き未来で目的を遂げるために少しでも距離を縮める。
目的に
それは自身に相応しい仮面の情報を
様々な事情を
けれど見逃した仮面こそが探し求めていた代物だった場合を想定すると、その決断は難しい。
自身に相応しい仮面を手に入れたい願望が強いほど、それは容易ではなくなる。成功は保障されていないものの、2度と挑戦する機会がなくなる可能性を思うと、見送ることはできない。手に入れる機会をみすみす捨てることに繋がるため。
自身に相応しい仮面が分かっていないと、そのような苦労も背負うことになる。何の手がかりがないまま、果ての見えない砂漠から1粒の金粉を探すほどの難易度が待っている。当てがないと偶然に期待するしかなくなる。当たりを引くまで、行動を起こし続けることになる。
しかし
その育成機関に入学し、優秀な成績を修めれば、自身に相応しい仮面の審査を受ける権利を有することができる。
もちろん、
みすみす活動の担い手を逃がしたくないために。
約束を破れば、そのときは消される
だから勧めてはいない。
その過程を経て、
その権利を行使することで
その者にとって、実に結ぶ結果になる保証までは行わないものの、
保管する仮面に含まれていない代物であれば、手に入り次第、再度、
そのような儀式を通じて、仮面を手にできる。早い段階で手にできる者とそうでない者に分かれるものの、機会は巡ってくる。
そして
組織に
可能性がない者に構えば、審査に遅れが生じる。人材輩出に支障を来たさない点を理由にして、1度
しかし可能性を言えば、事態が変わる場合もありうる。
年月を重ねた結果、相応しい仮面が見える可能性もありうる。
その点に
これは資格を手にできないまま、育成機関を卒業する者にも言えることである。
卒業後の進路で
このように自身に相応しい仮面が分かっていなくとも、手当たり次第に仮面を被らなくてもいい方法がある。
他の
しかしその第一歩が厳しい。
誰も彼も
思想・思考・素行などに問題がないお墨付きを
さらにそこから強いられる競争に打ち勝てなければ、育成機関に迎えられることはない。
そこに踏み込めなければ、己の試行錯誤で仮面を手に入れる
その結果、仮面の探索に終わりを告げる決断を下すことになるかもしれない。分からない代物を見つけ出す困難に打ち勝てず、
仮面の手がかりを
なまじ
それでも探索続行の決断は迫られる。
仮面の手がかりを
この事情に限らず、限界だと感じて、歩みを止める自体、普通に起こりうる。
行動が結果に結びつかず、何のために人生を費やしているのか分からなくなるくらいに追い詰められれば、当初に抱いていた情熱を手放す未来も十分に想像できる。
仮に諦めなくとも、限界は必ず訪れる。この世で活動する肉体が
その辺、手がかりがあろうと関係はない。違いは過程のみ。
下手に知ってしまったが故に抜け出せぬまま、最後を迎える。仮面への
全く罪な代物である。そのきっかけを作ってしまう
しかし行動を起こす選択自体、当人の手に委ねられているから、何から何まで仮面のせいにされては困る。
他者に背中を押されたとしても、踏み止まれなかったのは己である。逆らわなかったのは己である。
逆らっても、結末を変えられなかったのは己である。肉体操作を御せなかったのは己である。
望まぬ結末に
何でも周囲のせいにされても困る。全て己のせいでなかったとしても。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます