第48話


「――――吸血鬼というと、俺のイメージといえば血を吸うとか、牙が長いとかか?まあ後は人間に比べて色々と優れているとか。後はそうだな、十字架・銀色・太陽に弱いとか。そういう感じのイメージとしての知識しかないんだが、どうだ?あってるか?」


「…………?」


「ん?どうした?」


「いや、すごく意外。普通の人は『吸血鬼』と聞くと魔族の手下や残酷なイメージから凄く毛嫌いされている。それなのに秋は普通」


「ああ、そういう事か。まあ、リアが俺に危害を加えるのであればそれは危険なのかもしれないが、危害を加える気もなければ今は俺と仲良くお喋りを楽しんでいる。じゃあ俺は今お喋りをしているリアの方を信じる」


「―――――嬉しい。そういう事を言ってくれて」


「って、格好をつけたのはいいが、俺も異世界人だから、そういうところに疎いというのもある。そういう事だからリア。気にしなくてもいいぞ」




リアはまるで餌を食べているリスの様に顔を膨らませようとしていた所で、異世界人という言葉に強い驚きを覚えたかのような顔になった。先ほどの秋の発言はどうやら忘れられたみたいだ。秋は知らないところで助けられたのである。




「勇者?」


「おお、知っているのか。だが俺は勇者じゃない。自力でこの世界まで来た。『勇者』になった友達を助けるために」


「?どういうこと?」




秋は自分の歴史を語った。神と出会い、友を掬うと決意したあの物語の一幕を。




「……秋。すごい」


「そうか?そういってもらえるとありがたい。俺の旅の目的はここ。友人を連れて異世界に帰る事にある」


「………………」


「?どうした?」




まるでリアが泣きそうな顔をするので、何かやらかしたかと思い本当に心配という絵を表現したかのような様相でリアに聞いてみる。




「…私は?」




その言葉を聞いて、秋の背中に電流が流れた。慮ってやれなかったという後悔。だからこそ、秋が次にかける言葉は、約束を秘めた次の言葉。




「――――どうせ友人も連れて異世界に行くんだ。今更リアが一人増えたところでどうという事もない。リアが望むなら、連れて行ってあげるよ」


「――――――!!!」




その言葉は約束、友人を救うと決めたあの時と同じ重さを秘めた約束。








―――この何気ない秋の一言が、これから一生の思い出として語られていくのは、これからの秋にしか分からなかったことだ。















「そういえばリア。リアは魔術が出来るだろ?」


「うん。出来る。」


「そういうスキルがあるかどうか見てもいいか?」


「うん。だけど見れるの?」


『マスター。現在の魔眼スキルにはステータスを覗くための能力が存在しません。ですが体のどこかに触れて意識を集中させてください。私の方でなんとか致します』


「ああ分かった。やってみる」


「…?」


「ああ、気にしないでくれ、あとで紹介する。それじゃああれなんだが手を繋いではくれないか?」




リアがコクッと頷いたのを見て秋の方から手を差し出す。リアもそっとその手を握った。




秋がリアが握ってくれたのを確認すると、魔眼を発動させると同時に深く意識を集中させる。




『――――完了しました。マスター、これがリア様のスキル一覧になります。ステータスの方は確認できませんでした』




そうしてアルタから送られてきたスキル一覧がこれだ。








==========




・魔力回復効率20倍


・虹魔導士


・魔統者








・虹魔導士


全ての魔術属性を扱う事の出来る。




・魔統者


魔を統べる者に与えられる最高の魔術スキル。


魔術の式を自分で組み上げる事が出来る。発動する条件と発動させる現象を思い浮かべ、条件を達成されると発動される現象がそのまま発動される。


組み上げの際には魔力を必要としないが、魔術を行使するのと同様に条件を満たし発動させる場合は魔力を必要とする。必要とする魔力はその時思い浮かべた現象によって前後する。魔力量が足りない場合は発動しない。




===========




「凄いな…これは…」


『はい、全てが魔術を撃つためだけに特化している。神に愛されているようなスキルの構成だとしか言いようがないぐらいに完璧な少女です。リア様は』


「どう?秋」


「……正直凄まじい。リアは自分のスキルを知っているのか?」


「ううん。知らない。けど能力は使って覚えた。魔術を自分のイメージで出せるのと、全属性を使える。あとは魔力の回復が異常に早い」


「正解。三つともスキルのおかげだと思う。一応能力だけ説明しておこう」


「――――――うん。やっぱり化け物だった」


「これは訂正する必要があるな…リアは戦力としても申し分なさそうだ」


「うん。私使える」


「その言い方はあれだが…まあそうなる。ついてきてくれるというならやぶさかでもない」


「ん。勿論ついていく」


「そうか、どうも有難うな」


「うん。秋こそありがとう。私を助けてくれて」


「ああ、じゃあ今日はここまでにしよう。リアも眠いだろ?」


「うん。今日は疲れた。寝よう。秋」


「そうだな」








こうして秋とリアの二人になったこの仮屋で、初めての眠りを迎えた秋とリア。果たして旅の仲間が増えた秋と、リアのこの二人はどんな旅を織りなすのか、それは誰にも分からない…。








「なんでこっちに来る?リアにはベッドを譲っただろう」


「寒い………」


「嘘つけ!毛布もあるしコートを変わりにして重ねているだろう」


「私、人とくっついて寝ないと死んじゃう病気…」


「そんな病気は無いから安心してくれ…」

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