~神様から”次元を超えて地球に戻れる魔法”を貰った俺~ 少年は平穏を求めて最強に至る。

照屋

第一章・プロローグ

第1話

少年が眩い光に目をくらませると、ただひたすらに白い部屋にやってきたのだ。


だが白い部屋にただ一つ、白以外の何かが動いている。顔はしわがありいかにもおじいさんといった感じ。ただし筋肉はがっちりとありそして少年よりもはるかに大きい。少年の身長の3倍はある感じだ。


そしてその爺さんが少年の事を見つけると、のっそのっそと歩いて少年の方向へと歩いてくる。そして一言少年こう言い放ったのだ。


「お主、悪いが今から異世界に行ってくれんかのぉ?…」







「今からおぬしには、【勇者】としてあちらの世界に向かってほしいんじゃ…もちろん礼はする。今から行く世界には“スキル”と呼ばれる特殊な能力がある。儂も腐っても神じゃ…なんでも一つ。好きなのをやろう!だがしっかり吟味して選べよ?儂も全てを把握しているわけではない。好きな時に新しいスキルは生まれる。だからこそスキルの形は無限にあるのを忘れるでないぞ?だがここにおぬしがいられる時間っも限られておる。お主の時間で約3日といったところだ。さて選んでくれ!」


―――ええ……そんな面倒なことしたくないんですが…。


こうして、少年――仲岡秋は、神様を名乗る者から異世界に転移させられようとしていた。







―――さて、スキルを見てみるか…。


秋は異世界などというものにロマンを感じる人間ではないので、この状況を楽観視できる程主人公ではなかったのだ。もちろん血眼になってスキルを見ている。

無限の中から一つ、しかもそれを三日となると途方もないのは想像できてしまうのだ。そしてそれだけを頼りに誰も何も知らないところに飛ばされるのだ。それは確かに酷というものだろう。


そして秋はスキルを忠告通り吟味する。スキルの一覧は透明な色の板の上に白色の文字として浮き出ている。操作はスマートフォンを使うときと同じようでスライド・タップといった感じだ。


更に唯一幸運だったのが、一度見たもののスキルの名前を5秒思い続けると、そのスキルの詳細が板の上にしっかりと出てくる。これで候補が絞れてももう一度探すなんて心配はしなくてよさそうだ。


(身体能力超向上。ラックマックス。魔法剣……あ、魔法王なんてものをある。やはりと思ったが、異世界には魔法が存在しているのか…)


まあなんとなく想像していたが、異世界は剣と魔法のファンタジー世界なのだろう。


(他にもステータス限界突破。英雄への道…ああ、獣人化なんてものもあるのか…まあそれはいるわな、ファンタジー世界だものな)


そしてファンタジー世界にはお馴染みの獣人なんてものも存在するようだ。


(ええと他には…魔剣創造。魔剣術・極。魔格闘術・極。魔力超超増加。竜人化。スキル強奪。スキル複製。おお!スキル創造なんてものもあるのか…これはメモだな、ええと後は…)




こうして秋がスキルを吟味し、飲まず食わずでひたすら板の前で格闘してからもう2日と20時間が経過した。







「少年よ、もう選べたか~」


「うるさい…邪魔をするな…」




秋はまだ選べずにいた。もちろん候補は存在している。だがどれも全く知らない世界というものを一人で確実に生き抜けるスキルが存在しない。


(やっぱり知識は必要だから必要な時に教えてもらえる【大賢者】か?…いやでも一人で生きるのに力が必要にならないわけがない!やはりそういったスキルか…でもバランスを考えるなら【スキル創造】といった万能で可能性のあるスキル…けどこのスキルはデメリットも確かな制限も存在する…。それが仇になって死にスキルになる可能性も…いやいや!まだだ、まだ時間はある…まだ…まだ……)


思考を巡らせながらこうしてスキルを選び続けてること3時間半。秋は運命のスキルと出会う。それはこの状況を秋の思い通りにできるかもしれないスキル。




「ん?なんだこれ…【運命と次元からの飛翔】?…」


秋は名前では想像もできない効果を調べてみるべくタップして内容を確認する。



(こ、これはっ…!)


そのスキルの内容に、秋は体を硬直させずにはいられなかった。





「………なあ神様。ここってさ。俺が今いた場所とどれだけ離れているんだ?」


「おお?もう残り30分じゃが…スキルを決めたのか?」


「―――俺の質問に答えろ神様。」


「ああ分かった分かった。落ち着け少年。そうじゃなぁ…ここ【天界】は全ての世界の上にある界層じゃから、大体お主が召喚されてから次元を超えて3万kmといったところかの?」



(これならっ……いけるっ、いけるぞっ!!!)




「そうか、分かったよ…決めた。俺が持っていくスキルを、今ここで決めた」




「おお!そうかそうか。じゃあその板に“確認”ボタンを置いた。そのスキルの詳細欄を開いて右上にある確認を押してくれ」


「そうか――――よし、押した」



――轟っ!!!



ボタンを押した瞬間に辺りに秋を中心に豪風が吹き荒れ、耳には低い風切り音が聞こえる。


「おお、おめでとう。お主は無事にスキルを獲得できたようじゃのぉ…ちなみに、どんなスキルなんじゃ?今ここで使ってみせておくれよ。なあにこの場所は天界。多少壊されようともすぐに復活するわい。それに――――約3日分の成果を見せておくれよ。少年?」




「ああ、いいとも神様。というか俺も、ここで使いたかったんだよ。だって、なぁ」






――――――ここで使わないと、地球に帰れねえんだからなぁ!!!






その瞬間、翔自身が発光し、辺りから光の粒を吸収していく。それは異世界で言う魔力というものであり、異世界の人が扱える不思議な力の原動力となっている。




「————な、なんじゃお主!!なんのスキルを選びよったぁぁ!!!」




秋の周辺には光る小さな粒が徐々に集まり続け光の奔流が出来上がりつつある。それに反応するように風が舞いはじめ天界が揺れる。



「ああ、教えてやるよ神様!俺が選んだスキルは【運命と次元からの飛翔】。その効果は――――俺が地球に帰るためのスキルだ!!」



秋は大きな声で話しているが、かろうじて神様に聞こえる程度にしか聞こえない。それもそうだろう。暴風が踊り光が舞っているのだから。


「―――な、何っ…!!まさかお主選びよったのか!その無限に等しいスキルの中から、その中から見つけたというのか!そのスキルを!」


「ああそうだよ!残念だったな神様!俺はあの故郷に帰らせてもらう!今度は俺以外の別の奴を呼んでくるんだな!もう一度召喚しようとしたってそうはいかない!このスキルがある限り何度でも帰ってやるからなぁ!!!」


ちなみにこのスキル。【運命と次元からの飛翔】の効果はこれだ。



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運命と次元からの飛翔。

昔【運命神】と呼ばれる神が、人との恋に発展し、自らも恋人の住む世界に降り立ちたいと創造したスキル。


自分の行きたい場所が次元と世界を超えていると発動可能。自分の全魔力を強制的に吸い上げ、それでも足りない場合は周りの物質を分解してエネルギーを魔力に変換して発動される。


なお一度使った場合にはこのスキルは一日の間はクールダウンを設ける必要がある。


LV.1 次元を合わせた距離5万km

LV.2 次元を合わせた距離8万km

LV.3 次元を合わせた距離10万km

LV.4 次元を合わせた距離15万km

LV.5 次元を合わせた距離無制限

LV.6 スキルを二回まで発動可能。

LV.7 スキルを三回まで発動可能

LV.8 スキルを無制限まで発動可能


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「じゃあな神様!世話になったよっ!!!もう二度と俺を呼ぶんじゃねえぞぉぉぉ!!!!」



光が眩く星の様に輝き翔を包む。風はもう台風レベル。神様の衣服も風で鞭のように靡いている。


そして光が極光になると、七色の光となって天界の更に上へと打ちあがり、その光が球体状に広がり爆発すると、もうそこに翔の姿はなかったのである。







「―――はあ、やれやれ。また召喚のし直しじゃわい。じゃが、久しぶりに見たのうあんな若人は…ホッホ、少し興味が湧いてきたのう…全く久しぶりじゃ、この儂が何かに興味を持つなど…まあこの儂から一本取ったんじゃ。精々気張って生きておくれよ。少年—————いや、仲岡秋よ」




こうして神様は、虹色の光の粒が降り注ぐ中、まだ上を見上げながら一人そう呟いた。

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