第14話「始まる」
激しい炎の中から見つめる眼。
その眼の持ち主は恐竜の顔をしていた。
二つの眼は閉じられ、額の真ん中に有る第三の眼だけがじっと見つめている。
高温の炎の中に居て、その身を焼かれているというのに全く身じろぎもせず、
こちらを見つめている。
その眼には何の感情も浮かんでおらず、ただ底知れない無が有るだけだった。
道摩はぼんやりと、これが夢であると眠りながらも自覚していた。
何処かで、何か音が鳴っている。
どんどん音が大きくなっていく。
道摩はその音で目が覚めた。
夢を見ていた事は自覚しているが、内容を覚えていない。
道摩にとっては珍しい事であった。
スマートフォンが鳴っていた。
手に取って見れば、公安の特務課からで有った。
無言で耳にスマートフォンを当てる。
「道摩さんでいらっしゃいますか」
「ああ」
「公安部特務課の小宮山と申します。依頼したい事件がございましてご連絡させていただきました」
小宮山は何の感情も籠っていない、事務的な調子で淡々と用件を告げた。
「どんな事件だ?」
「はい。先日県立公園で起きた連続殺人事件についてです」
「新人警察官が殺された事件か?」
「はい」
「ふうん。面白そうだな」
「高野山からの推薦もありました」
「高野山から……?毛嫌いされていたと思ったが……」
「事情は分かりせん。条件はいつも通りになります」
「ああ、分かった。引き受けよう」
「では、詳細は後ほどメールにてお送り致します。」
「そうしてくれ」
道摩はそうして通話を終えた。
スマートフォンを切ってから、道摩は自分が酷く疲れている事に気が付いた。
眼を閉じて瞑想に入る。
夢の正体を探るつもりであった。
呼吸が整っていく。
自分の深層心理に深く潜っていくが、しばらくその状態を維持していても、
何も思い出す事が出来ない。
道摩は小一時間程それを続けて諦めた。
スマートフォンを見ると、メールが特務課から届いていた。
内容を読むと既に2名が派遣されて、その2名共が失敗し絶命している事が分かった。
―探偵と、神父か。あの二人が何も出来ずに死ぬとはかなりのヤバイモノのなのか……それにアドバイザーとして、慧春尼大阿闍梨とは……本当に面白そうだな……
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