学年一可愛い女の子と付き合ったら学年一のブスに絡まれた件

下垣

第1話 罰ゲーム告白

 俺、東郷とうごう 真人まさとは、友人達五人でウノをやっていた。三人の友人は順当に上がり、残りは俺と梅原うめはらの二人だけになった。勝負は佳境。俺の手札が二枚。梅原の手札が一枚。手番は俺だった。


 梅原とは小学生の頃からの付き合いで腐れ縁だ。だからと言って手加減するつもりはない。


 俺の持っているカードは青のスキップと青の4。そして梅原は阿呆にもワイルドカードで青を宣言した。これで俺の勝ちは決まった。


「スキップ。よし、これで上がりだ」


 俺はドヤ顔で最後の一枚のカードを出した。これで俺の勝ちは決まるはずだったが……


「はい、ウノって言ってなーい」


 その死刑宣告を受けた俺は上がることが出来なかった。最後の一枚の時にウノと言わなければペナルディで山札からカードを二枚引く。くそ、指摘した時の梅原の顔がムカつく。広辞苑で顔が変形するまで殴りたい。


 相手の手札は一枚。まずい。このままでは俺が負けてしまう。どうだ? 出せるのか? 出せないのか? どっちなんだ? あえてワイルドカードで青を宣言しといて、持っているのが青以外という高度な戦略だろ? わかるんだよ俺には……


「ぐ、ぬぬ……」


 何だそのリアクションは……出せねえんだろ? なあ。出せないって言ってくれよ!


「出せるんだなそれが」


 ダメだった。梅原は単純な男だ。自分が出せるカードの色を宣言するような男だ。こうして、最後まで残ってしまった俺の負けが決まった。


「よし。それじゃあ罰ゲームな」


 最後まで残っていた梅原が偉そうに俺を指さした。人を指さすもんじゃない! 一体どういう教育を受けているんだ。親や先生に人を指ささないように教育されなかったのか!


「二宮に告白してこい」


「え? ちょっと待て、二宮さんに告白するの!?」


 それは勘弁して欲しかった。何でよりにもよって学年で一番可愛い二宮さんに告白しなければならないんだ。


 俺と同じクラスにいる二宮にのみや まい。とても可愛い女の子で、俺は彼女のことが好きだった。


「だって、お前二宮のこと好きなんだろ? だったら丁度いいじゃねえか。もしかしたら付き合えるかもよ」


「バカ! 梅原! バラすなよ!」


「え? マジ、こいつ二宮のことが好きなの?」


 梅原の馬鹿のせいで他の三人にまで俺が二宮さんのことが好きなのをバレてしまった。なんてこった。最悪だ。


「はははは。マジかよ! こいつ二宮が好きなのかよ!」


「わ、笑うなよ! 憧れるくらい別にいいだろ!」


「わ、悪い悪い。もう笑わねえからよ。ま、頑張って告白してこいや」


 正直、俺は怖かった。俺は二宮さんのことが好きすぎて彼女とまともに目すら合わせたことがなかった。声をかけるなんて恐れ多い。でも、罰ゲームだしな。男は罰ゲームから逃げちゃいけないんだ。立ち向かおう。


 そうして、俺は教室で一人寂しく座っている二宮さんに声をかけようとする。


「あ、あの……二宮さん? ちょっといいかな?」


「と、東郷君? ど、どうしたの?」


 ああ、やっぱり二宮さんは可愛いなあ。俺に声をかけられておどおどしている。小動物的な雰囲気が非常に可愛らしい。彼女はとても可愛いのだが、内向的な性格故にあんまり友人は多くないんだよな。


「えっと……ここじゃ難だからさ、人目のつかない所に来てくれないかな? 体育館の裏とか」


「う、うん……わかった」


 俺は二宮さんを連れて体育館の裏へと向かった。周りには人がいない今が絶好の告白チャンスだ。


「あ、あのさ……二宮さん。お、俺……二宮さんのことがずっと前から好きだったんだ」


 言った。ついに言ってしまった。罰ゲームとは言え、告白。人生初の挑戦。心臓の高鳴りが止まらない。もう、口から脈打つハートが飛びそうだ。


 そういえば俺も告白されたことあったっけな。相手は学年一のブスだったから断ったけど。あの時のブスも俺と同じくらい勇気を振り絞って告白したのかな……


「へ? え? ふぇ? えええええ!」


 二宮さんは驚いている。そりゃそうか。ロクに話したこともない俺が急に告白してきたのだから当然の反応か。


 大体にしていきなり告白って何だよって自分でも思う。まずはデートしてお互いのことを知りあって、それから最終意思確認のために告白ってするもんじゃないのか? お互い話したこともないのに告白って勘違い陰キャかよ。


「わ、私でいいの? 東郷君?」


「二宮さんがいいから告白してんだろうが!」


 謎の逆ギレ。よくわからないけど逆ギレしてみた。いや、全く怒ってないんだけどね。


「え、えっと……わ、私で良ければ……そ、そのよろしくお願いします」


 え? まさかの成功パターン。嘘? だって学年で一番可愛い二宮さんだよ?


「ほ、本当? 本当に俺と付き合ってくれるの?」


 俺の問いかけに二宮さんはコクリと頷いた。可愛い。滅茶苦茶可愛い。なんだこの可愛い生き物は。


 今日は俺の人生で一番の絶頂の日だ。こんなに嬉しいことはない。あの二宮さんが俺と付き合ってくれるなんて。夢じゃないかしら。


 これはすぐに梅原の所に行って自慢してやらなければならない。俺はすぐに梅原の所に戻り、事の顛末を報告した。


「という訳で二宮さんと付き合うことになりました」


「マジで?」


「おお、マジマジ。はっはっは。悪いな先に彼女作ってしまって」


「まあ、お前が幸せならそれでいいと思うよ」


「とか言って本当は羨ましいんだろ? 梅ちゃん」


 俺は梅原の肩を組んで厄介な酔っ払いのように絡み始めた。


「は? はあ!? 別に羨ましくねえよ!」


「隠さなくてもいいって。俺が学年で一番可愛い二宮さんと付き合っているからって嫉妬するなよな」


 はっはっは。梅原の奴め。羨ましくないとか強がりやがって。


「んじゃ。俺、今日から二宮さんと一緒に登下校することになったから、そろそろ行くわ。梅原。お前今日から一人で帰れよな」


「お、おう。それは別に構わねえが」


 俺はそのまま愛しの二宮さんの所に駆けていった。



「あいつ行ったか?」


「ああ、行ったな……」


「じゃあ、そろそろいいか」


「ああ……本音をぶちまけようぜ」


 梅原とその友人三人は神妙な顔をした後に爆笑し始めた。


「あいつマジかよ! 学年一のブサイクの二宮が可愛いってどういう神経してんだよ!」


「俺はな。あいつと付き合いが長いからわかるんだ。あいつは極度のブス専だ。一般的に可愛いと言われる女子をブス扱いして、逆にブスな女子を可愛いと思っている」


「え? おい梅原。あいつ、学年一のブスに告白されたって言ってなかったっけ?」


「ああ。つまり、あいつがブスだと思っているってことはそういうことだ。俺はその時あいつを引っぱたいてやりたかった。何てったってアイツは学年一の美少女の上条かみじょう かなでを振った男だからな」


「マジかよ……もったいねー。俺だったら絶対上条と付き合ってるのに」


「でも、上条も可哀相だよな。自分を振った男が学年一のブスと付き合うんだぜ。そんな屈辱あるか?」


「これは一波乱ありそうだな」

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