第37話 自動操作
「いらっしゃいませー」
僕が喫茶店に入るといつものようにノーパンウエイトレスさんが笑顔で迎えてくれた。
「あら? 今日は元気がないようだけど大丈夫?」
大丈夫だけど、元気がないのも間違っていない。
昨日、神前からメッセージを貰って喫茶店に呼び出されてたのだが、なんで呼び出されたのかよく分かっていないのだ。
もしかして、神前が寝て居る時に髪の毛の匂いを嗅いだのがバレてしまったのではないだろうか。
それを思うととても元気でなんかいられない。
ノーパンウエイトレスさんに案内され、神前が座っている席に案内されると、そこには千景が一緒に座っていた。
なんでこんな所に千景が? 僕は千景にはバレないようにパンツが見える研究をしていたはずだ。
「凛兄がそう思っているだけで、私パンツ見られているの知っていたから」
何だと? 知っていて僕を泳がしていたのか。妹ながら末恐ろしい奴だな。
じゃあ、僕が呼ばれた理由ってやっぱり神前がらみの事なのか? だとしたら千景がいる必要はないんだけど。
「今日は私にも関係がある事だし、ちーちゃんにも関係ある事よ」
二人に関係のある事? この二人の共通点ってなんだ? パンツを履いている事以外に共通点なんて思いつかないぞ。
「何でパンツを履いているかどうかが基準になるのよ。注目を集めるのは恥ずかしいから早く座りなさい」
何で呼び出されてのか分からないまま僕は二人の前に座る。こうやって座ると圧迫面接を受けているようだ。
「それは紅凛がやましい事をやっているからじゃない? 何も悪い事をしていなければ堂々としていられるわよ」
確かにそうだ。僕は聖職者のパンツなんて見ていない。あれは偶然見えてしまっただけ……いや、フォルテュナがいたずらをしただけであって、見たくもないパンツを見た僕もある種被害者の一人だ。
「なんで私が悪いみたいになってるのよ。紅凛が最初にあの人のパンツを見たいって言ったんじゃない」
「何? 私の居ない所でまた違う女性のパンツ見ていたの? 一体どれだけパンツを見れば気が済むのよ」
体調が悪いのだろうか。神前が頭を抑えるが、どれだけと言われればこの世全ての女性と僕は胸を張って答える。
パンツ鑑定士を目指す僕はどんな女性のパンツでも見なければならないのだ。
「凛兄は将来、そのパンツ鑑定士ってのになるのが夢なの? 変わった職業だね」
僕が千景にパンツ鑑定士とはと言う事を一から説明しようとした所で神前に止められてしまった。
「もうパンツの話は十分よ。この話をしているといくら時間があっても終わりそうもないもの」
何だ。パンツの話じゃないのか。それじゃあ何のために僕が呼ばれたのか本当に分からないぞ。
「昨日、私が殺人犯に襲われたのよ」
何だって。なんでそれを早く言わないんだ。
「言わせないかの如くパンツの話をしたのは誰よ。まあ良いわ。兎に角殺人犯の正体は世里だったって伝えたかったの」
確か神前が情報が出てこないのがおかしいって言って怪しがっていたな。それが的中したんだ。
「そう。残念な事に見事に的中しちゃったわ。私が見た感じあれはもう世里じゃない。顔も雰囲気もまるで世里の物じゃないもの」
顔まで? じゃあ、一番最初に紹介された時に分からなかったのも仕方がないって事なのか?
「そうね。レメイに操られている時に顔は普段の世里の顔とは全く別物だったわ。あれじゃあ、紅凛が分からなくても仕方がないと思う」
クソッ! 何で僕は最初に柳舘さんのパンツを確認しなかったんだ。確認さえしていれば同一人物だと分かったかもしれないのに。
「なんでパンツを見れば分かるって自信があるのよ……。って駄目だわ。またこの話になっちゃう」
「凛兄はそんな事ができるんだ。ちょっと憧れるなぁ」
「ちーちゃん駄目よ。こんな兄を羨望の眼差しで見つめちゃ」
兄を尊敬している妹を嗜めないで欲しい。
それにしても、そうか。柳舘さんさんがレメイだったのか。柳舘さんは助けられそうな感じなのか?
「エヴァレットに聞いた感じだと助け出すのは難しいみたいね」
「そうなの? あの人なんかおかしいなって思ったんだけど、そんな状況なの?」
ん? 千景も柳舘さんって言うかレメイを見た事があるのか?
「えぇ、見た事があるわ。私がレメイに襲われていた時に助けてくれたのがちーちゃんなの」
はっ!? 千景が神前を助けた? そんな事ができるはずがない。だって相手はあのレメイなんだぞ。
「一つ可能性を忘れているわよ。ちーちゃんが魔女を持っているって可能性をね」
そんなはずはない。僕が以前、千景のスマホを見た時には魔女なんていなかったはずだ。
「凛兄にスマホを見られた時、メルヴィナには絶対に画面には出てこないでって言ってあったのよ。ごめんなさい」
「ちーちゃんが謝る事じゃないわ。いきなり魔女が現れたとしてなかなか言えるものじゃないもの」
メルヴィナと言うのは千景の魔女の名前か。
それにしても千景まで魔女を持っていたって言うのは驚きだ。改めて魔女がいろいろな人のスマホにいるのを感じる。
でも、これは決して喜ぶべきことではないとも思う。
「でも、今回の事で言えばちーちゃんが魔女を持っていたおかげで私はレメイに殺される事もなくここで話していられるのよ」
それはそうかもしれないが……。
取り敢えず千景のスマホを見せてもらい本当に魔女がいるか確認してみる。
千景が僕に向けて差し出したスマホの中には本当に魔女が立っており、ウェーブのかかった髪が胸元辺りまである綺麗な女性だった。
「初めまして。あなたがチカゲの変態兄貴ね」
おいおい、初対面なのにいきなり辛辣な事を言う魔女だな。
いくら可愛い顔をしているからと言って僕を怒らせると大変な事になるぞ。
「そうよ。メルヴィナちゃん気を付けなさい。あの変態は何としてもパンツを見てこようとするわよ」
咄嗟にスカートを抑え、顔を赤らめて頬を膨らまして僕を睨んでくるが、安心してほしい。僕は強引に見るのは趣味じゃないんだ。あくまでも偶然、見てしまうのが良いんだ。
「変態の教示なんて聞いていないわよ。パンツを見たいって言うのは変わらないんでしょ?」
そう言う大きな括りで言うとほとんどの男性がそうだと思うぞ。
「犯罪者はだいたいそう言うわね。自分だけじゃないって」
残念だが僕はまだ犯罪者ではない。あくまで趣味の範囲でパンツを見ているだけだ。
「はいはい。不毛な争いは止めて。話が進まないわ」
不毛とは失礼な。僕の矜持に関わる問題なんだぞ。
「それで私はちーちゃんに助けられたんだけど、流石に魔女を持っているのを紅凛に言わないのはどうかと思ってね」
むっ。話を進められてしまった。まあ良いか。
魔女の居場所が分かると言うのは僕にとっても良い情報だからこれは素直に神前に「ありがとう」と言っておこう。
「それで? どうするの? やっぱりレメイを探すの?」
まあ、それが一番優先的にやらなくちゃいけないのは変わらないかな。
っと。そうだ。僕も昨日、教団の男にあったのを伝えておかないと。
「えっ? また会ったの? よく無事だったわね」
僕はフタミにあった時の事を神前たちに伝えた。千景がいるので少し躊躇われたが、魔女を持っていると言う事はもう無関係ではないと言う判断だ。
「なるほど。その時にリリーさんのパンツを見たのね」
違う! いや、違わないけど、あれは本当に偶然だ。フォルテュナが魔法を使ってリリーさんを転ばせただけだから。
「コーリンに無理やりやれって……」
おい、フォルテュナ。そんな嘘泣きまでしていい加減な事を言うな。神前の視線が痛いじゃないか。
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