第34話 パンツの見方
『
僕が砂場に狙いを定め、手をかざすとソフトボールぐらいの大きさの石が飛びだし、砂場の砂を巻き上げた。
「わぉ、素晴らしい。それが魔法ですか」
リリーさんが感嘆の声を上げるが僕の方を注視していると言うよりスマホの方を注視しているみたいだ。
舞い上がった砂がパラパラと落ちてくるが、作ったクレーターが埋まる事はない。
「やはり魔術とは少し違うわね。どうやって魔法を使えるようになったの?」
僕の方に近づきながら質問をしてくるリリーさんだが、そんな事言える訳がない。魔女を使っているなんて言ったらスマホを取り上げられかねないし。
それよりもリリーさんは忘れているんじゃないだろうか。僕にパンツを見せてくれるって言う事を。
「大丈夫よ。ちゃんと覚えているから。じゃあ、ちょっと見えない所に行ってチラッと……」
さて、ここからがお楽しみの時間だ。どういうシチュエーションでパンツを見せてもらおうかな。
「えっ!? シ、シチュエーション? ただチラッとパンツを見せるだけじゃないの?」
そんな興奮しない状況でパンツを見せてもらっても嬉しくとも何ともない。
困惑するリリーさんを放っておいて僕はどういうシチュエーションでパンツを見せてもらうか考える。
高い所から飛び降りてもらってスカートが捲れるって言うのはどうだ?
……うーん。偶然見えてしまう感が少ないな。いくら見せてもらうと言っても偶然見てしまった感は大切だ。
それに飛び降りている時に本能的にスカートを抑えてパンツが見えなくなってしまうかもしれない。それでは駄目だ。
チラ見えは大切だが、全く見えないのなら意味がない。これは却下だな。
じゃあ、僕の後ろから走ってもらって通り過ぎる時に転んでスカートが捲れるって言うのはどうだ?
……うーん。普通に走っていてそんな良い感じにパンツが見えるものか? 偶然見えてしまうってのは良いが、リアリティに欠けるな。
それでは普通にパンツを見せてもらっているのと何も変わらない。もっとこう……見せたくないんだけど見せてしまった感が欲しいのでこれも却下だ。
フォルテュナに魔法を使ってもらって宇城さんの時みたいに風でスカートが捲れ上がるって言うのはどうだ?
……うーん。良い感じなのだが、このシチュエーションは宇城さんの時にやったしな。わざわざ同じシチュエーションにする必要を感じない。
もっとそうだな……。こう……。こんなので見えてしまうんだっていう感じが欲しいんだよな。だからこれも却下だ。
「あの……。そんなに悩む事ですか? チャチャッと見せて終わりにしたいんですけど……」
何を甘えた事を言っているんだ。折角見せてもらえるチャンスだ。それなら最高の状態で見せてもらった方がお互いに良いに決まっている。
それに修道服からパンツを見れるなんてこんなチャンス二度とないかもしれないんだ。悔いのないようにしたい。
『子供を相手にする時って視線を合わせるじゃない? その時ってしゃがむよね? その時に見えるって言うのはどう?』
うむ。子供に話しかけようとしてしゃがんだら偶然パンツが見えてしまった……と言う事か。なかなか良いじゃないか。
フォルテュナも女性のパンツが何なのか分かって来たようだな。
良し! 良い案を出してくれたフォルテュナには今度アプリから服を買ってあげよう。
『やたー。……ってサーバーが壊れたから服買えないじゃない!』
それは残念だ。忘れていた。すまん、すまん。買えないなら仕方がない諦めてもらおうか。
『絶対に知ってて言ったでしょ! そんな事するならパンツが見えそうになったら
フォルテュナさん。それは止めてください。謝るからそれだけは……。そんな事されたら立ち直れなくなってしまう。
『はぁ。今回は我慢してあげるけど、次やったら許さないからね』
良かった。何とかフォルテュナさんが機嫌を直してくれた。
それじゃあ早速小さい子を……ってこの公園には小さい子どころか人が一人も居ないじゃないか。どういう事だよ。
『そりゃ、変態高校生のパンツを見るために使われるなんて誰だっていやよ』
何を言うんだ。これは子供が大人の階段を登る第一歩でもあるんだぞ。その手を僕が引いてあげるって言うんだ。こんな優しい高校生なんていないだろ。
『そんな汚れた手で引かれてもね。変態向かう階段なんて誰も登らないわよ』
女性のフォルテュナには分からないんだろう。男の子って言うのはこうやって大人になって行くんだ……。
その時、体がビクリとした。この嫌な感じは……。
「ようやく来たか。犯人は現場に戻るって言うからな。待っていて正解だった」
ゆっくりと公園に入ってきたのはフタミって言う奴だったか。それに犯人って僕が犯人じゃなくお前が神前のスマホを奪った犯人だろ。
そしてこの感じは結界を張っているな。これでは小さい子が公園に入って来ないじゃないか。
「あの人がさっき言っていた人? 紅凛君は下がっていて」
僕の警戒した様子を見てリリーさんが僕を庇うように前に出た。一瞬見えた顔はどこか笑っているようだった。
「何だお前は? お前には用はない……その修道服は真教の者か?」
「えぇ、そうよ。私は執行者のリリー。あなたたちにお世話になったお礼をしに来たわ」
リリーさんは何処からともなく剣を取り出し、その手に握っている。
細く長い剣は女性には扱いやすそうだけど、修道服の女性に剣って言うのはどこかミスマッチなような感じがする。
「じゃあ、そろそろ準備は良い?」
「あぁ、何時でも大丈夫だ。私を倒せるなら……な」
その言葉を合図にリリーさんは地面を蹴って一瞬にしてフタミとの距離を詰めた。
速い。
以前、フタミの動きを体験しているが、リリーさんの動きはそれよりも速く思える。
ただの修道女かと思ったらとんでもなかった。執行者って事はこういう戦いを生業にしているって事だろうか。
「ちょっと離れた方が良いわね。それと急にこっちに向かってくるかもしれないから狙いだけは定めておきなさい」
僕はフォルテュナの言う通り、二人から距離を取り、何時こちらに向かって来ても良いようにフタミに狙いを定めておく。
リリーさんの振るう細身の剣をフタミは両手に握った短刀でいなしていく。
その表情からはまだ余裕が伺え、口笛を吹いていてもおかしくないようなぐらい楽々と躱している。
「どうした? 仲間の仇を討つんじゃなかったのか?」
「焦らなくても大丈夫よ。私はしり上がりだから」
その言葉の通りリリーさんが一段ギアを上げたようだ。フタミの表情から笑みが消え、先ほどまでとは違いギリギリで攻撃を躱すのがやっとといった感じになっている。
それにしてもなんて戦い何だろう。これだけの動きができるようになるまでどれぐらいの訓練が必要か考えると体に震えが襲ってくる。
「時間はたっぷりありそうな人たちだしね。戦い慣れているところ見るとしょっちゅうこんな事をやってるんじゃないかしら」
世界は広いと感じる。僕がのほほんと高校生活を送っている間に生死をかけた戦いをずっとやってるなんて。
「さて、実力も分かったし、そろそろ本気を出させてもらおうかな」
フタミはあれでまだ本気を出していなかったんだ。一体どれだけ強いんだよ。
「それは私も同じこと。ここで決めさせてもらいます」
リリーさんが一旦距離を取ると勢いをつけて物凄いスピードでフタミに迫っていく。
剣と短剣が交わる音が誰も居ない公園に鳴り響く。
これはチャンスじゃないのか。今ならフタミに魔法を当てられるような気がする。フォルテュナに目を向けるとフォルテュナも何時でも大丈夫なようだ。
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