貴族の帝国
お嬢様厨
プロローグ 精神病棟
とある精神病棟の4人部屋。カーテンで仕切られた私の個室。
ベッド、机、椅子、のみが設備されていて他は何もない、喪失感を感じる空間にて、
「お勉強はどうですか?」
「皆様が就寝しているこの時間帯は捗りますわ」
「そうですか。何か変わりはありましたか?」
「いいえ」
「そうですか。何かあったら言って下さい」
椅子に座る私と看護師で淡白な会話が交わされ、看護師は退室した。毎日毎日同じような会話を交わしているのだから虚無を感じる。憂鬱だ。
憂鬱だからといって何もしないければ更に憂鬱になるだけだろうし、もう少しお勉強にしようと思う。
再び卓上に置かれた二次方程式のプリントを進め始める。
私は裕福な家庭に生まれたお嬢様で、勉強は真面目にしていて頭は良く、いじめを見かけたら教員に報告する事に挺身したりと正義感が強くて教員に気に入られたり、満足のいく人生……だったのだが、
私が小6の時に同じ会社で働いている両親が二人で自宅に向かっている際に、包丁を所持した男に刺し殺された。
犯人の動機は殺人に興味があったという馬鹿げた理由だそう。相手は誰でもよかったらしい……。
その不幸は私を絶望させて、正義感をより強い……というか病的なものにさせた。
少しでも規律を破る人間を見ると過去の事が思い起こされ、許せなくなり、学校で見かけたら徹底的に教員に報告するようになり嫌われて知人は出来なくなった。
また、ぬいぐるみだとかを犯人に見立てて、カッターで何度も痛めつけていた。自分が異常である事は自覚していたが、そうしないと自我を保てなかった。
この事は血の繋がっていない二人にも知られていて、二人は世間体を気にし無慈悲に精神病棟への医療保護入院の話を進めた。
ここで出来る事は勉強、テレビ鑑賞、読書、程度で、
周囲の患者は鬱病患者の様な者ばかりで知人を作ろうとは思えない。
だから今こんな気分だ。
心に枷が付けられた様な感覚に耐えながら、プリントの問題全てに回答し、答え合わせをすると、全てに丸が付いた。満足だし就寝にする。勉強用具を片付け始める。
……?なんだこれは。
机を開けて気付いた。手紙が入っている。私はこんな物を保管していないが。気味悪がりつつ開封すると、
『貴女は明日異世界の様な場所で目覚めます。そこでは魔法という
馬鹿げた文が目に飛び込んできた。
ぐしゃ。
自然に返す手配をして差し上げた。
「看護婦が書いたのかしら。就寝の前に読むには丁度良かったですわね……」
溜息の様にそう呟き、 手紙の事はもうどうでもよかったから気にしないで寝る事にした。部屋を消灯しベッドに潜る。
明日の予定を考えながら眠りに就いた。結局は今日と同じ様な予定にしかならないが。
得体の知れない事が起こっていました。私の目の前の空間だけ凍り付いた様に時間が止まっていて、入る事が出来ないのです。
「すごいのです……これはどういう事なのですか?」
「君は花園を沢山ひけらかしてくれて素敵だね。それが分かっていれば、いちいちここまで足を運ばないよ」
皮肉ですね。善処しますよ……。
「同感だわ、それにしても嫌な予感がするわね」
巻き髪を弄り不機嫌な様子なのです。私も安心して紅茶も楽しめなさそうなのです……。
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