第36話 神様は乗り越えられる試練しか与えない
ある日の放課後、俺と有希乃は少し寄り道して喫茶店へ行き、軽く話をしていた。
「そういえば最近物騒な噂があるよな。」
「そうだね。校門近くで学校の様子窺ってる人がいるって話でしょ。」
実は最近学校から不審者の情報を結構聞くのだ。
出始めたのは夏休み前だが今は文化祭もそろそろ近いしあんまり野暮なことはして欲しくないんだけど。
「実害は出てないらしいからまだマシっちゃマシなんだけどなー。」
「何かここ最近毎日見てるって噂もあるみたい。誰か探してるのかな?」
確かに心配ではあるが...こんな話題じゃあまり気分も上がらないので話題を変えてみる。
「そろそろ警察にでも相談した方が良いんじゃないか...?っとこんな暗い話題はこの辺にして、俺、そろそろバイトを始めようと思うんだ。」
「良いじゃない!どんなバイトするの?」
「それはまだ決まってないけど近くの飲食店で良いかなって。」
実は有希乃へのプレゼントのお金を貯めるためのバイトなんだけどそれはいってしまえば面白くないので伏せておく。
「へぇー!あ、でもバイトしすぎで進級できないとか言う自体にならないでよね。」
「あーそれは大丈夫だと思う。多分...。」
「ちょっと。なんでそんなに自信なさげなの?」
あ、そんなに見ないでください。消えちゃう。
「じゃあ大丈夫だ!心配すんな!」
「じゃあっていうのが気になるけど...まぁ信じるね。」
そう言って優しく微笑む。守りたいこの笑顔。
この辺でお開きにして帰路につくことに。
「それじゃあな有希乃。」
「うん。バイバイユウ君。」
有希乃が見えなくなるまでしばらくその場で待つ。
...さて、こっちに来ていることを確認して。
「あんたか、最近噂になっている不審者ってのは。」
近くの柱からぬっと人影が現れる。
「不審者とは聞き捨てならないな。僕は見守ってるだけさ。」
出てきたのは20代ほどの男。体型は細見に見えて意外としっかりしており、まず面と向かっては勝てないだろう。
「しかしよく分かったね、君。」
「さっきも言ったがうちの学校で噂になっているんでね。警戒して当然だ。」
とは言ったものの、正直時間帯にも恵まれた。もう少し暗ければ分からなかっただろう。
「僕もそんなに有名人か~。」
「ふざけないでください。あなたの行為は一歩間違えれば犯罪にもなるんですよ。」
「見守ることの何が犯罪なんだい?」
...ダメだ。聞く耳を持たない。この手のことに慣れているのか?
足りない頭で必死に打開策を考えていると相手から話を切り出してきた。
「まあいいや。今回は君の勇気に免じて引くとしよう。」
「できれば二度と会いたくないですがね。」
「その前に1つ聞いておこう。...君は彼女にとって、薄野有希乃にとって何者なんだい?」
「なぜその名前を...。」
「今はそのことについて話すことはない。さぁ、質問に答えておくれ。」
聞こうと思ったことを割と強めに遮られ怯んだがここは大人しく答えた方が身のためだろう。
「俺は彼女の愛する人です。」
「そうかい。じゃあその名に恥じぬように生活してくれ。あとこのことはくれぐれも口外しないようにしてくれ。」
そう言って男は去って行ったが1日その恐怖感が抜けることはなかった。
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