来たぞ、我らの星の戦士

Mr.K


 彼女との最初の出会いは、そんなに劇的なものではなかったと記憶している。


 初めて出会ったのは、大学に入学して間もない頃の、とある授業での事だ。

 初回の授業という事で、新入生である生徒達は皆ソワソワしながら、教師によってあらかじめ割り振られた席に各々座っていく。

 そして僕もまた、おっかなびっくりで同様に席を探しだしてようやく座ったのだが、そんな僕の席の辺りでウロウロしていたのが彼女だった。


「えーと、席、ここで合ってるかなぁ。いや、こっち?」


 その時、どういう席の割り振り方だったのかはよく覚えていないのだが、そんなに迷うような事は無かった、気がする。しかし、彼女は一見して能天気そうながら、その実本当に困っているようにも見えたのだ。

 だから――僕が座りに行きにくかったのもあったが――ほんの少し手助けをするつもりで、思わず声を掛けてしまった。そこに邪な感情など介在する余地はない。これっぽっちも。確かに彼女は『ほわほわ』というオノマトペが似合う美人ではあったが、美人だからといって安易に告白に走るような、そんな頭の中がお花畑な男子高校生めいた真似をしようなんて思わなかったし、そんな勇気も無かった。無くていい勇気だと今でも思っているが。


「ん? えっとね、どっちの席かなって……あ、こっち? そっかそっか。ありがとね」


 最初の会話なんて、そんなものだったと思う。僕としては、ただ困っているお婆さんに声を掛け手伝いを申し出る程度の、そんな感覚しかなかったのだ。


 ――それが、まさかこんな親密な関係に至るなんて、思いもしなかった。

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