第7話 新藤 海里の時間

「行っちゃった」


 私、新藤 海里は何も無い廊下をとぼとぼと歩いていた。


 先程まで、松原さんに書庫や『魔書』や『所持者holder』などの説明をして貰ったが最後に聞きたいない、そう、死神がやってくるような言葉を言われた。


「はぁ、どうしよう」


 この先、口外禁止、と言われたから誰にも言えないし結局自分が塞ぎこむようになった。


「観音寺さん、私、こっちでうまくやれそうか分かりません」


 心の中ではすでにほろりと涙が流れているが実際に流れているのではあの人に情けない。一応、私はあの人の教育生としてきちんとやってきたのだから今回はこちらできちんとやっていかないといけない。


 ガチャ、


「よし、こっちできちんと頑張ろう!」

「あ、やっと来た!」

「はい?」


 私は第三司書室の扉を変えると、同期の人や先輩方から声がかかる。もしかして、なんか悪いことをしてしまったのだろうか?


「大丈夫だった!?」

「え、え!? 何ですか!?」

「いや、あの松原さんの司書室に入ってから二時間経っても出てこないから心配したんだよ!?」

「そ、そうですか。って、そのことについてどこで聞いたんですか!?」


 私がそう質問すると、同期の方は気まずそうな顔でこちらを見てくる。


「え、えっとね、頼みたいことがあって探していたんだけど、どこにいてもいないから先輩と協力してどこにいるか分かるかって探していたんだけど。とある人がね? 司書室の前に居たら目黒通さんに呼び止められたって聞いたからすぐに行けなかったの………ごめん!」

「だ、大丈夫ですよ!?」


 さすがに謝られたことに驚いているが、本来謝るのは私の方ですし! 同期さんが頭を下げることは無いと私は思うのですが!?


「そ、それに後で松原さんの司書室に言ったらものすごく不機嫌な目黒通さんがいたから話しかけようかと思ったんだけど無理だったんだよな……」

「………」


 すみません。その不機嫌の元は私だと思います。


 そのことを話してくれた先輩に申し訳ない気持ちが溢れる。


「はぁ、なぜか少しだけ安心します」


 コンコンッ、


「すみません。新藤さんはいらっしゃいますか?」

「「「!?」」」


 すると話に出ていた死神さん、目黒通さんがここに来ていた。


「あそこにいます」


 誰が答えたのだが分からなかったが、私が今ここにいることを知られてしまった。それを知った同期の人や先輩などは逃げるようにその場を去っていった。


「すみません」

「ひゃい!?」

「『ひゃい』? まぁ、良いでしょう。貴方に話があります」

「ひっ」


 もしかして口止め!? 首が飛ぶのだろうか!?


「何を、怖がっているのですか? まぁ、どうでもいいですけど、少し、私と一緒に来てくれませんか?」

「は、はい!!」


 目黒通さんも松原さんと比較にならない程の暴君ぶりで、私はそれを断れないまま目黒通さんに連れられるようについていった。同期の人や先輩に助けを読んでみたが同期の人と先輩は小さく私に対して合掌をしていた。


「では、少し良いでしょうか」


 私はそのまま目黒通さんにつられるままついていくと、廊下に出て目黒通さんはそこで振り返り私に向かって話しかけてきた。


「な、なんでしょうか?」


 カチコチになった私は目黒通さんの顔を抹消面からみる。


「私の○○になってくれませんか?」

「はい?」


 私は、目黒通さんが出した提案に呆気ない声を上げてしまった。

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