金色の物語

聖騎士

第1話 辺境の村

 とある大陸の外れ、人口50人程度の小さな村、そこからこの物語は始まった。


「みんな~! 用意はよいか~!」


「「おお~!!」」


「ぜんた~い! まええ~! すすめ~!」


 村の領主の息子ゴールドが村の子供を連れて歩いて行く。毎日の日課であるスライム狩りの時間なのである。


 10件ほどの家が建っている集落の直ぐ傍に有る畑、ここは村の食糧生産の要であり非常に重要な場所でもある。田舎の集落なので勿論生活は自給自足、働く場所など何も無い田舎である。住民はただ生きる為に働き贅沢等は話にしか聞いたことは無い、ここはそう言う場所である。


「スライム発見! 構え~!」


「「おお~!!」」


 村の作物を食い荒らす悪い魔物スライム、折角育てた作物が食べられてしまう。つまり村人の口に入る食糧が減るのだ、すると当然自分たちの食べ物が減ってしまう。そこで立ち上がったのが村の子供たちによる有志連合【スライム討伐隊】である。何となくカッコイイ感じだが、要は親達が魔物狩りをしているマネをしているのだ。


 子供達3人が盾と槍を構える、スライム1匹を3人で囲んでタコ殴りにする陣形なのだ。勿論子供達の最年長でもゴールド8歳、部下の子供は7歳と6歳の近所の子供なので、盾は木の板に取っ手をつけたもの、そして槍はただの木の棒である。


「目標スライム! 盾構え~! 攻撃開始!」


「うりゃ! うりゃ!」

「とう! とう!」


 スライムは魔物の中では最弱、そして動きも遅いので普通の大人が負けることは無い、問題が有るとすれば酸を吐くので金属製の武器が痛んだり、皮膚が赤くなって痛みが有る程度、ただし目に酸が入れば失明の危険も有るので舐めてかかると酷い目に会うことだってある。


「目標撃破! 攻撃、止め!」


「かった~!」

「やった~!」


「うむ、良くやった! 魔石を確保して次の作戦に移行する」


「「りょうかい!」」


 酷く大人びた喋り方をする8歳児、だが村の子供達は慣れていた。領主の息子のなので平民とは違うのだろうと思っていたのだ。特に領主は平民上がりの騎士爵なのだが、母親は男爵家の3女、生まれつきの貴族の娘なので平民とは次元が違う存在と思って居た。そしてこの村一番のインテリがゴールドの母親、読み書き意外にも計算まで出来ると言う辺境では珍しい存在なのだ。


 撃破したスライムから魔石を取り出して腰に付けた袋に入れる、スライムの粘液に触れると手がピリピリするので、隊長である俺が箸を使って器用につまんで袋に入れる、豆を箸でつまむ様なものなので、元日本人にしか出来ない精密作業なのだ。そしてスライムの魔石は商人に1個100ゴールドで売れる、村の貴重な財源でも有る。



「ゴールド! 精が出るの~!」


「おう! 任せとけ! スライムは1匹足りとも生かしてはおかん、俺の食物を減らす奴は死刑なのだ」


 村の中を行進していると、村の畑仕事をしているジジババ達に声を掛けられる、農作物を荒らすスライム退治と村の年少者の面倒を見る仕事を上手にこなすゴールドは村でも評判の領主の息子なのだ。


 その後3匹のスライムを討伐したゴールド達は午前中の作業を終了して、村の真ん中にある集会所に昼飯を食べに行く。人口50人の小さな村なので各家に台所等は無い、まとめて水汲みをしたり煮炊きをするのである、例えるならばキャンプ場で生活をしている様なものだった。集団生活って奴は資源の無駄が少なくなるので、貧しい村では自然とこう言う生活様式になって行くのだ。各家庭に炊事場やトイレが有るのはこの国では王都の一部、貴族が住んでいる所位のものだった。


 昼飯の芋を食べながらツラツラ思う、芋は美味いが物足りない。もっと良い物が喰いたい。しかし辺境では自給自足なので、死なない程度の食事は出来ても上手いのもを毎日食べるのは無理な話、それこそ上級貴族に成っても、この世界ではそこそこ程度の物しか食えないだろうと思う。しかし、転生者が自分だけって事もないだろうとも思うのだ、自分は馬鹿だが、賢い転生者が居れば、醤油や味噌などを作り出して美味い物を食ってる人間も居るのでは無いだろうか? いや! 絶対何処かに居るはずだ。


「俺は美味い物を食いたいのだ!」


 この世界を気に入っているのだが食物だけはいただけない、貧乏生活には慣れても不味い食事には慣れない、タマには美味しい物が食べたいのだな。そして色々考えてみる、元々そんなに頭が良いとは思わない、金にも物にも興味が無い、でもやっぱり美味しい物が食べたいな~と思うのだ。転生者なので異世界の秩序を乱すのも気が引けていたのだが、そもそも俺ごときが何をやっても世界が変わるとは思えない、だって俺にはラノベの主人公が持って居るチート能力が全く無い、剣と魔法の世界なのに俺には全く適性が無い、有るのは余計な知識位なものなのだ。


「さて、どうするかな~」






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