第73話 砂漠の民なの。
雷神鳥からの雷撃を防いだのは、ウォーミィの見慣れない技だった。
「あれは砂漠の民に伝わる『気』です」
(ああ、魔法の他にも『気』なんてものもあるのね。ファンタジーだわ――)
「『気』ですか? 初めて聞きましたわ」
「砂漠の民以外使う人は見ませんから――」
ウォーミィは何やら困り顔だ。
「もしかして、秘密だったの?」
「いえ、秘密というわけではないのですが……。実は私の仮職(プレジョブ)は『守護者』でなく『気功師』なんです。『守護者』を目指しているのは本当なんですが――」
「そうだったの」
「それは別に構わないんじゃない。私だって、仮職が『女王様』というわけではないし」
「そうですか?」
「そうなの。わたしだって仮職と目指している職は違うの」
「レイニィお姉様もですか?」
「わたしに、お姉様は、要らないと言いったの」
「いえ、是非、お姉様と呼ばせてください。そして、私のことは、ウォーミィと呼び捨てでお呼びください」
「ウォーミィさん?」
「ウォーミィと呼び捨てで!」
「あらあら、レイニィは随分とウォーミィに懐かれたのね。臣下同士仲がいいことは良いことだわ」
レイニィは、二対一では分が悪そうなので、話を変えることにした。
「ところで、そこに隠れている人達は何なの!」
「隠れている人達?」
「どこかに人が隠れているのですか?」
「あそこに、五人ほどいるの!」
レイニィが少し離れた茂みを指差すと、観念したのか、男達が五人現れた。
「不意を突いて襲うつもりだったが、ばれていたんでは仕方がない。力尽くだ! 痛い思いをしたくなければ、その卵をよこせ!」
「その格好。あなた達は砂漠の民ですね。砂漠の民がここまで入って来るのは禁止されているはずですが!」
男達は浅黒い顔で、白い布を頭から被っていた。
「そんなのは、一部の部族だけで決めたことだ、俺達には関係ない。サッサと卵をよこせ」
「力尽くで奪えるものなら、奪ってみなさいよ。こっちだって容赦しないんだから。あなた達も、私たちが雷神鳥を倒したのをみてたでしょ」
「強気でいられるのも今のうちにだけだぞ。これを見ろ。反抗すればこいつらの命がないぞ」
「アイス!」
男達は、痺れて伸びていた護衛を人質にとっていた。
「人質とは卑怯よ」
「なんとでも言え」
レイニィ達と砂漠の民の間で睨み合いが続く。そんな緊迫した場面でレイニィは一つの打開策を思い付いた。
「古代より山には山神様が住まい、神聖な場所なのです。その山を敬う事もなく、ただ荒らしていくもの達には、いつか山神様の天罰が下ることになります」
「急に何を言い出すんだ。山神などいるわけないだろう。脅かそうとしてもそうはいかんぞ」
「だがよ。あの幼女、急にしゃべり方が変わって不気味だぞ」
「怖気ずくんじゃねえ! あんなの張ったりだ!」
「山神様はいますよ。現にほら、あなた方の右後ろに」
男達が右後ろを確認すると、そこには虹色の後光に囲まれた大きな人の影が浮かび上がった。
男達は驚きの表情で動きを止める。
「天罰がありますよ!」
ピッカ! バリバリ、ドカン! ゴロゴロ!
すぐ近くに雷が落ちた。
「天罰だ!」
「山神はいたんだ」
「逃げろ!」
男達は震え上がって、一目散に逃げていった。
「やったの。二人とも大成功なの」
レイニィが声を掛けたが、二人からの返事がなかった。
ウォーミィは地面に平伏し、神に祈りを捧げていた。そして、サニィに至っては立ったまま気絶していたのだった。
「ちょっとウォーミィ。もう済んだから立ち上がって。サニィお姉様は目を覚まして!」
レイニィはサニィの肩を掴んで大きく揺すりながら、声を掛けるのであった。
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