第35話 星空を見るの。

 大熊(グレートベアー)を撃退したレイニィ達であったが、エルダのメテオインパクトで出来たクレーターを埋め戻すのに時間がかかり、夜までに次の村まで辿り着けそうになかった。

 そのため、その場で野営して、夜を越すことになった。


 夕食は、爆散してしまった、大熊の肉を食べることができた。

 ただ焼いただけであったが、美味しかった。

 肉以外にも、魔石や胆嚢など、使える部分を護衛の人たちが探して集めていた。

 後で換金すればかなりの金額になるだろうとのことだった。


 夕食の後、他の者が焚き火を囲んでいる中、レイニィは少し離れて一人で夜空を見上げていた。

 レイニィは野営をするのは始めてだったし、屋敷にいた時も夜外に出ることはなかった。

 基本、良い子は早寝早起きである。

 そのため、こうして夜空をゆっくりと眺めるのは初めてだった。


「不思議、星がすき勝手に動いているわ。これでは、星座などあったものではないわね」


 夜空に煌く星を見ながらレイニィは独り言を言う。


「レイニィ、何してるの?」

「先生、目を覚ましたの? よかったの。星を眺めてたの」


 メテオインパクトを使った後、眠っていたエルダであったが、目を覚まして、馬車から出て来たところで、一人でいるレイニィを見つけてやって来た。


「そう。ところで、星座ってなに?」

「星をつなぎ合わせて絵を描くの」


「なるほど、夜の暇つぶしには良い遊びだな」

「だけど、星が勝手に動いちゃうの。不思議なの」


「レイニィは星が動くのを知らなかったか。星は一か所にある様に見えて、ゆっくり動いているんだ。この世界の周りを回っているんだぞ。太陽と同じだ」


 レイニィが不思議に思っていたのは、星が同じ方向に回っているのでなく、それぞれが、すきな方向に動いているからだったが、この世界ではそれが当たり前なのだろうと思い、それを口には出さなかった。

 それに、やはり天動説が一般的だったようだ。


「あの一つを落としたの?」

「あの光ってるのを落としたら、この国がなくなってしまうぞ。私が落としたのは、ここからは見えないくらいの小さなゴミだ」


「ゴミなの?」

「空の彼方には星だけでなく、大小沢山のゴミも浮いているんだ。

 それらが集まって、燃え出したのが太陽だ。

 太陽が燃えるための燃料は、それらのゴミで、時々は光っている星も太陽に飲み込まれて燃料になる。

 そんな時は、太陽が燃え盛り、降り注がれる魔力の量が多くなるんだ」


(太陽フレアの様なものか。ファンタジーな世界なのに、それなりの理論があるんだな。見えてる星も全部が衛星だと考えれば、自由に動いていても不思議ではないのか。地球でもよく見れば人工衛星が勝手に飛んでいたんだろうし)


「ゴミが無くなってしまう事はないの?」

「諸説あるが、異世界から来るらしい」


「異世界から来るんだ。(あの穴から色々落ちて来るのね)納得なの」


 実際には、第七界から落ちて来た物のうち、要らない物が、天界と世界の隙間にある空間に捨てられている。

 女神による不法投棄だ。正しくゴミ。スペースデブリである。


「さあ、そろそろ子供は寝る時間だぞ。馬車へお行き」

「はいなの。おやすみなの」


 レイニィは馬車の中で、この世界の仕組みに想いを馳せ、それが天気にどう影響するのか考えながら、眠りについたのだった。


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