第33話 探索魔法を覚えるの。

 首都シャインで過ごして一週間。

 すっかりサニィと仲良くなったレイニィであったが、いつまでもここに留まっているわけにはいかない。

 涙ながらにサニィと別れ、エルフの里を目指して、首都シャインを出発した。


 首都シャインから、エルフの里がある北の森までは、徒歩で一週間、馬車で移動しているレイニィたちは、ゆっくり移動しているので五日間である。

 その間、レイニィは引き続きエルダの指導を受けていた。


「四属性魔法は大体使える様になったから、次に移る。次は、魔力を感じることが苦手みたいだから、それをやるからな。これを究めれば、探索魔法が使える様になるぞ。狩りをするならこれ程役立つものはないからな」

「探索魔法は便利そうなの。頑張るの」


「ではまず私が魔力を込めるから、その魔力を感じ取ってみろ」


 エルダは手を握りそこに魔力を込める。


「なんとなくわかるの」

「なら、段々と魔力を込める量を減らすぞ」


「段々薄くなっていくの」

「見失わない様に集中しろよ。はい、これで魔力を込めていない普通の状態だ。わかるか?」


「かろうじてわかるの」

「この世の殆どの物が僅かながらも魔力を帯びている。集中すればそれを感じ取れる様になる」


「微妙過ぎて難しいの」

「普段から常に感じ取る訓練をしていれば、そのうち慣れる」


「先が長そうなの」


 レイニィは遠い目をする。


「今のが受動探索(パッシブサーチ)だ」

「パッシブサーチ! ならアクティブサーチもあるの?」


「よく知っているな。これから説明するのが能動探索(アクティブサーチ)だ。

 能動探索では、自分で魔力を周囲に放つ。すると、その魔力が物に当たって反射してくる。そして、その反射して来た魔力を捕らえる。これが能動探索だ」


 エルダは手振りも交えてレイニィに説明する。


「受動探索、能動探索、それぞれに利点と欠点がある。

 能動探索は受動探索に比べ、遠くまで、はっきりと物を識別することができる。相手が魔力を隠している場合でも見つけやすいし、距離感も捉えやすい。これが利点だな。

 一方、欠点だが、魔力を放たなければならないので、魔力を結構消費する。それと、相手にこちらが探索しているのがわかってしまうことがある。相手が魔術師だとほぼ百パーセントばれる。

 能動探索は使う場合、時と場所を選ばなければならない」


 エルダはレイニィに丁寧に説明するが、レイニィは上の空である。


(アクティブサーチ。所謂、レーダーのことよね。これって、機器なしに、自分がレーダーになれるという事。雨雲レーダー。そう。私はレーダーアメダス。これはなんとしてでも習得しなければ)


「やってみたいの!」

「そうだな。この草原の真中なら大丈夫か。練習していいぞ」

「やったー。レーダーアメダス!」


 レイニィはいきなり全方向に魔力を放った。


「アッツ」

「キャッ!」

「なんだ、ビリッときたぞ」

「ヒヒーン!」

「どうどう。落ち着け」


 みんな痺れて、ウマは暴れる。大混乱である。


「レイニィ。魔力を込め過ぎだ。程々にしろと毎回言ってるだろ!」

「ごめんなさい。でもうまくいったの。百キロ先の雨雲までバッチリなの!」


「初めてで百キロって。はあー。どんだけなんだよ」


 レイニィは上機嫌、エルダは呆れ顔だ。


 だが、そんな顔をしていられるのも束の間の事だった。


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