第31話 国主とその娘と会うの。

「ようこそ、首都シャインへ。私が国主のファイン キャピタル シャインだ」

「娘のサニィよ。よろしくね」


 レイニィ達を応接室で出迎えたのは、国主とその娘であった。


「港町ライズから来た、レイニィなの。これ、お父さんから預かってきたの」


 レイニィも自己紹介した後、ゲイルに頼まれていた封書をファインに渡す。

 ファインはそれを受け取り、中身を確認する。


「ありがとう。ゲイルからの書類か。これは助かる。ちゃんとお使いができて、レイニィちゃんは偉いな」

「それ程でもなの。えへへ」


 ファインはレイニィの頭を優しく撫でる。レイニィは照れ笑いを浮かべる。


「お父様、それくらいの事なら私でもできますわ」

「サニィ、お前はレイニィちゃんより二つ年上だからな」


 サニィの眉間にしわが寄る。


「ん、なんだ。レイニィちゃんに嫉妬してるのか。レイニィちゃんも可愛いけど、サニィはもっと可愛いぞ」


 ファインは、サニィの頭をワサワサと撫でた。


「お父様、髪型が崩れますわ」


 サニィは文句を言いつつも、満更でもない様子だ。


「サニィさんは私より二つ年上なの?」

「そうよ。だから、サニィお姉様と呼びなさい」


「お姉様なの?」

「そうよ。私は将来王様になるのよ。その妹になれるのだから喜びなさい」


「妻が身体が弱いものだから、サニィは一人っ子でね。前から妹を欲しがっていたんだよ」

「お父様。余計な事を言わないでください」


「わかったの。今日からあたしが妹になってあげるの!」

「無理しなくてよろしいのよ」


「無理じゃないの。嬉しいの」

「そう。ならよろしくね。レイニィ」


「はいなの。ところで、サニィお姉様は王様になるの?」

「そうよ。今はまだだけど、きっとなってみせるわ」


「凄い意気込みなの」

「レイニィはもう仮職(プレジョブ)は授かったの?」


「あたしは大魔術師なの」

「そう、大魔術師を目指すのね。なら、将来私が雇ってあげるわ」


「本当。嬉しいの!」


 前世でも少し前までは、天気予報は国の仕事だった。

 民間企業が参入してきたのも、それほど昔ではない。

 天気予報をだしたいレイニィにとっては、国勤めは都合が良かった。

 少し、よいしょ、しておくことにした。


「女王様の臣下第一号なの。光栄至極なの」

「女王様って何?」


 この世界に王制はまだ根付いていない。

 子供なのに知っているサニィは凄いのだが、女王様という言葉は、まだ聞いたことがなかったようだ。


「女の王様のことなの」

「なら、私は女王様になるのね」


「そうなの」

「レイニィちゃんは随分いろいろ知ってるんだな」


 ファインが感嘆の言葉を挟む。


「当然なの。女王は見たことあるの」

「え、どこで?」


「ああ、そうであったな。レイニィちゃんは女王大蟻をやっつけたのだったな」

「大蟻の女王様なの?」


 大蟻と聞いてサニィは微妙な表情をする。


「女王大蟻は強かったのか」

「大きくてびっくりしたけど、それほど強くはなかったの」


「そうなの。女王様は強くはないのね――」


 女王様が強くないと聞いて、サニィは浮かない顔をする。


 それに気付いたレイニィは急いでフォローする。


「蟻の女王と人間の女王様は違うの」

「そうね。そうよね」


「人間の女王様は強いの。鞭を持ってピンヒールでブタを踏みつけるの」


 焦っていたためか、前世の記憶の中から違う女王様を思い出してしまったようだ。


「女王様はブタを飼わなければいけないの?」

「あ、それは違う女王様だったの。今のは忘れてなの」


「そうなの。女王様にもいろいろあるのね。これからもいろいろ教えてね」

「わかったの!」


 レイニィとサニィの親交は、大いに深まったのだった。


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