第11話 風向風速計が完成したの。

「お待たせ、材料は全部あったわよ」


 ミスティが風向風速計に必要な材料を全て集め、テーブルの上に広げた。


「お姉ちゃん、ありがとう。じゃあもらっていくの」


 材料を受け取って自分の部屋に戻ろうと考えていたレイニィに、ミスティが声をかけた。


「レイニィ、ここで組み立てていきなさいな。そうすれば私も手伝えるから早くできるし、私も完成した物を見てみたいわ」

「手伝ってもらっていいの?」


 レイニィはミスティとスノウィの様子を確認する。

 二人共微笑んで頷いている。


「ありがとう。じゃあ、ここで組み立てるから、お手伝いをお願いするの」

「それじゃあ、パパッと組み立てちゃいましょう!」


 三人がかりで組み立てれば、あっと言う間に完成した。


「できたの!!」

「それじゃあ、外に持っていって試してみましょうか」


 三人で外に出て風向風速計を設置する。


「垂直に立てて、この印を北に向けて」

「こうですかね。北は大体こっちでしょうか」


 レイニィの指示でスノウィが設置する。


「垂直に立てるのに水準器が欲しいわね。それと方角が正確に分からないとまずいわ」


 レイニィは、ミスティもいるのに子供言葉を忘れていた。


「方位磁針が必要ね」

「方位磁針? 何ですそれ?」


「え、方位磁針ないの。じゃあ磁石は?」

「磁石ですか? ちょっとわからないです」


「え、磁石もないの? お姉ちゃん。磁石ってないの?」

「なあにそれ?」


「んー。鉄にくっ付くやつ。離れていても引き合うの」


 ミスティには子供言葉になる様だ。


「聞いたことないわね。ああ、ミスリルと魔石なら引き合う事があると聞いたことがあるわ」

「ミスリル? 魔石? 鉄とは違うの?」


「鉄とは違うわよ。性質的には丁度真逆ね。ミスリルは魔力をよく通し、魔石は魔力を蓄えることができる物よ。反対に鉄は魔力を全く通さないわ」

「ふーん。そうなの――」


 声には出さなかったが、全く持ってファンタジーだな、とレイニィは思った。


「それじゃあ仕方がないから、時間がかかるけれど、影の長さを測って方角を決めましょう」

「影の長さを測るのですか? それでどうやって方角がわかるのです?」


「この棒の影が一番短くなった時、影のある方向が北よ」

「ああ、なるほど!」


 レイニィの知識に、スノウリィが納得して感心した。


「凄いわね、レイニィ。よくそんな事知ってるわね。やっぱり天才だわ!」


 レイニィはミスティに褒められて、居た堪れない気持ちになる。


「お姉ちゃん、ごめんなさい。これも、風向風速計も、女神の加護で得た知識なの。私は天才でも何でもないの」


 レイニィは、それらが女神の加護である事を話してしまう。

 でも、その知識が、前世の記憶からのものであることまでは、まだ話す勇気がなかった。


「でも、その女神の加護もレイニィの一部よ。それも引っくるめてレイニィなのだから、何も卑下する必要はないわ。ひけらかす必要はないけれど、誇っていいのよ」

「ミスティお姉ちゃん、ありがとう」


 そこに、心地よい海風が吹いてくる。


「あ、風向計が動き出しましたよ」

「本当ね!」

「やったの! 風力計も動いてるの。大成功なの!!」


 港町ライズに、レイニィの喜びの声が響き渡った。


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