恐怖

解体業の休みは日曜だけだった。

純ちゃんは平日に休みを取り手続きなどに苦戦しながら住民票を移し、新しい保険証を手にいれた。














社長は相変わらず来ていたけど

私も慣れて平気になっていき、純ちゃんが退職を希望するとパタリと止まった。














職場の人達にも、社長にもお世話になったから…と、純ちゃんは退職願いを提出してから後1ヶ月働くことにした。














後、1週間働けば…そんな頃だった。














あれは土曜の夜だったと思う。

仕事を終えた純ちゃんが「出かけるぞ。」そう言って帰ってきた。














私「どこに行くの?」


純「解らない(笑) けど、最初にお世話になった俺の知り合い覚えてるだろ?

あの人から電話があって、今日、もえも一緒に来いって(笑)」


私「懐かしい(笑) たかさん久し振りやね。

けど、来いって?どこに?ここじゃないの?」


純「ん?そう言われればそうだな、

けど今の俺の職場に来るからって言ってた…」


私「たかさんと連絡取ってたの?

何で今のところ知ってるんやろう?」


純「解らない…」














帰ってきた時は笑顔だった純ちゃんの顔は

私との会話でどんどん雲っていった…














純「とりあえず、俺だけ行くわ。」


私「やだ。私も行くよ。」


純「いや、もえはここに居て…もし、俺が月曜までに帰って来なかったら警察に連絡して…」


私「そんなのヤダ。行かなきゃいいじゃん

ここまでバレてはないと思うよ…」


純「もえも何かおかしいって思ってるだろ?」


私「……。」


純「そんなところに連れて行けない。」


私「もしかしたらただ、普通にご飯とかかも知れないよね?」


純「それならそれでいい。」


私「やっぱり一緒に行く。」


純「もし、本当にもし俺に何かがあって

ここに知らない人が来たら迷わずこれを使え。」














純ちゃんはそう言って私にサバイバルナイフを手渡してきた…














純「俺は何があってもこの場所は言わない。

来た人間が何を言っても信じるな。いいな。」














純ちゃんはそう言うとたかさんの待つ職場へ行ってしまった…














とても怖かった。

今まで何度か恐怖を感じて来てたけれど

この時の恐怖は今までと違った。

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