2度目別れ。
私のケガは残念なことに軽症だった…
そして、崎先生にこれから私が生活していく寮へと案内された。
そこには仁王立ちの父と泣きそうな顔の母が待っていた。
母「もえが…何方かに怪我をさせたりしてないですか?」
母はこんな時でも良い母親を演じているように見えた
父は私の頭のガーゼとオデコの傷を確認するかのように黙って見ていた。
崎「お母さん、それは大丈夫です。ご安心下さい。」
崎先生がそう言うと母は泣きそうな顔を元に戻し「そうですか、」と寮長の山先生に促されるまま車へと歩き始めた。
母「もえちゃん、バイバイ。」
母は1度だけ振り返り、そう言いながら私に手を振った…
そんな母から目を背け父を見ると
父は目を充血させながら、ゆっくりと私の方に両手を伸ばしてきた。
一瞬、私は殴られるかと思い身構えたが
父の大きな手は私の頬を包み
父「すまん…頼むから頑張ってくれ…」
私の額に父の額をくっつけ、小声でそう呟いた…
久し振りに父に会い、温もりを感じ
私は先生方の目の前で大粒の涙を堪えることができなくなってしまった。
私「お父さん…やだ。連れて帰って…
一緒に連れて帰って…良い子になるから…お願い」
父「必ず迎えに来る。だから…今は我慢してくれ…本当にすまん…」
山「お父さん、そろそろ…」
ほんの一瞬だった。
まだまだ父に甘えたかった…
父の温もりを全身で感じたかった…
けれど、それは許されなかった。
父は私から離れ、山先生に深々と頭を下げると
ゆっくりと、私に背を向け歩き始めた…
私はそんな父を今度は黙って見送るしか出来なかった
『頼む…頑張ってくれ。必ず迎えに来るから…』
そんな父の願いを何度も心に刻みながら
涙で歪む父の背中をただ、見送った。
こうして私は中学2年の秋前に教護院へ入った。
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