春、冬に恋する。
@rukonamu
序章
瓦屋根から聞こえる囀りを目覚ましに、風がひんやりと鳴いて、太陽はぼおぅっと目を覚ました。
だんだんと薄らんでゆく月の影に想いを抱きながら、激しくけたたましいコングが10カウントを終える前に僕の意識は立ち上がる。
このぐらいに起き始め、早1年。連敗記録286日。
ジリリッ!
ガンッ
ふぅ、今日も僕はキミに勝ったぞ。
連勝記録32日目の今日を迎える。
勝負に勝ったとはいえ、未だにこの優越感は気だるさに勝りはしない。しかし現実は、優越感の背中を推し、気だるさを恐怖で脅かす。
のっそりと愛しのテリトリーから這い出て、今日も今日とて、忙しない狩りが始まる。心の深淵に置いてきた気合いを掘り起こそうと、土手沿いに面したカーテンに手をかけ、未だ威圧を放つ窓に恐る恐る手を伸ばす。
緊張感漂う空気のもと、決死の覚悟で腕に力を入れた。
「うぅっ。」
情けない声と共に、怯える子犬のようにカタカタと手が震え出した。
穏やかな光は、冷ややかな風に萎縮して忖度を図ったか、春の朝というものはいついかなる時も、寒いものだ。
寒さに震えながら少しずつ慣れ始めたころ、ようやく外へ気を向けられるようになると聞こえる道路の呻きに尊敬を込める。
両手を合わせ黒服への参拝を済ますと、この後自分も神の仲間入りを果たすことを考えると、身体がぶるっと一震いした。
小さな箱から見える、そろそろ友達といってもいい景色に、小さくおはようと語りかけ、ようやく意識を取り戻した私は、大きく背伸びをして、大きく息を吸い、もう一度語りかける。
「んんー・・・っと、ふぅー、おはようございます!」
こうして、僕の一日が始まる。
冬を忘れ、待ちに待った春を今日から迎える。
期待と若干の気だるさを感じながら、
僕は____また冬に恋をする
春、冬に恋する。 @rukonamu
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