そして現在。

 それから、僕は彼女をでるようにくちづけるのが日課となり、現在いまに至る。


「ん、はぁ……。す、すまなかったの、司……」

 舌を離し、多分に濡れた目を伏せ、いつも身を縮こまらせる花姫様。

 そんな彼女へ、僕は一糸まとわぬカラダを火照ほてらせたまま、にこりと笑みだけで返す。

 口を開いたら、言葉がまろびでてしまいそうだったからだ。


 ――すまないのは僕のほうだよ、と。


 正直、『最後』までできないのはすごくつらいけれど、僕はわかってもいた。

 これが、彼女にもっとも過激な行為だということが。


 彼女は『女神』だ。


 ニンゲンごときが穢していいはずもないし、本来なら、そのきよらなくちびるへ触れることすらおこがましい。


 それなのに。

 僕は彼女をここまで味わいつくしている。


 なんて、不遜ふそんで。傲慢ごうまんなのだろう。



「――で、では、今度はそなたの番じゃな! まずは服を着る! 本日の『めにゅー』は玉子焼きとほうれん草のおひたしと、あとは……」

「はぁーい」

 おかんモードに切りかえたらしい花姫様は、蒲団のまわりの整理を始める。


(この毎日がずうっと、続けばいいのに……)


 うつらうつらしながらも僕は、彼女がいつの間にか手早く用意してくれたらしい服一式いっしきへ手を伸ばした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る