第34話 WAになって・・・

「・・・ロックバンドですか?」

「そう、女子ロックバンドサークル。合同説明会の最後から2番目に発表したんだけど、覚えてる?」

「あー、たしかTONEトーンの曲を演奏した・・・」

「そう、それ!」

「でもー、TONEトーンは知ってますしCDも何曲か持ってるけど、バンドなどという物に興味は無いですよー」

「そうなんですか・・・」

「でもー、センパイのお姉さんですしー、これもですからー、ちょっと覗いてみるのも悪くないですねえ」

 おいおいー、その『何かの縁』というのはちょっと失礼だぞー。

 たしかに偶然の出来事とが重なって第二音楽室を訪れてくれる1年生の第一号になってくれたのは嬉しいけど、僕としてはを払ってるんだからさあ・・・


 僕は廊下を歩きながら方広寺さんと話しているけど、方広寺さんは僕の右側を歩いている。その方広寺さんと僕を挟んだ反対側、左側には綾香ちゃんがいるけど、誰が見ても無理して笑顔を作っているというのが丸分かりで、その証拠に唇が不自然に歪んでいる!その表情で僕と方広寺さんを交互に見ているから、正直僕も冷や汗をかいてます、ハイ。

 それに、廊下を歩いている他のクラスの人が学年を問わず、僕たちに道を空けている!というより、誰がどう見てもにしか思えないのは気のせいではないですよねえ・・・誰だって修羅場に立ち会いたいとは思わないでしょうから、逃げたくなるのも無理ないですー。


 結局、綾香ちゃんは最後まで無言を貫いたけど顔は半ば引き攣ったままだった。

 対照的に方広寺さんは最後までニコニコ顔を崩さなかった。


 旧校舎の階段を上がった僕たちの目には、扉を開けっぱなしにしたままの第二音楽室が見えてきた。

「・・・・・」

 僕はその開け放たれた扉を見た時、違和感を感じた。具体的に言えば空気の違いを感じたからだ。それは重々しい空気が支配している、緊張感に満ち溢れた空間が目の前にあるような雰囲気だ・・・


 僕たち3人は足を止めることなく第二音楽室に踏み入れた・・・


「「「ウェルカム!」」」


 いきなり甲高い声が響き渡ったから僕たちは声の方向を振り向いたけど、そこには姉さんたちが各々の楽器を手にして準備万端の状態で待ち構えていたのだ!!


♪♪♪~


 ♪うじゃけた顔して どうしたの

  ♪つまらないなら ほらね

   ♪WAになって歌おう みんなで


 ♪遊びも勉強もしたけど

  ♪分からない事だらけ なら

   ♪WAになって歌おう みんなで


 こ、これは・・・前回の日本で開催された冬季オリンピックのテーマソング『WAになって歌おう~イレ アイエ~』じゃあないか!オリンピックがあったのは僕らが中学生の時だから絶対に日本人なら誰もが聞いた事がある曲だぞ!!

 僕は思わず立ち止まって聞き入ってしまったし、それは方広寺さんも同じだ。逆側の綾香ちゃんも同じく立ち止まって聞き入ってる。これは結構ポイントを稼いでると思うぞ!いけるかも!!


 ♪おーおー さあWAになって歌おう

  ♪ラララララー すぐに分かるから


 ♪おーおー さあWAになって歌おう

  ♪ラララララー 夢は叶うから


”パチパチパチパチー”


 姉さんたちが演奏したのは1番だけだったけど、それでも額にびっしょりと汗を掻きながら演奏し終えた姉さんたちに僕たち3人は惜しみない拍手をした。姉さんたち3人も軽く右手を振って僕たちに応えてる。


「「「女子ロックバンドサークル『glassグラス slippersスリッパーズ』でーす」」」


 姉さんたち3人は揃って挨拶をしてからニコッと微笑んだ。

「いらっしゃーい。あたしが女子ロックバンドサークルの代表、ボーカル兼ドラムの2年A組の朝倉菜々子だよー」

「ボーカル兼ギターの同じく2年A組の南城佳乃でーす。よろしくね」

「ボーカル兼ベースの2年A組の平山愛美でーす。君がここへ来たのは女神様のお導きがあったからだよー」

 おいおいー、ここへ連れてきたのは僕だぞー。しかもを流しているのを姉さんは知ってるのかあ!?

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