第33話 デカければいいって仰いたいんですか!
ちょ、ちょっとヤバい展開になってないかあ?ここは間違いを正すべきだと思うけど・・・
いや、ちょっと待て。
ここで間違いを正したら、折角ハイテンションになって第二音楽室へ行ってくれそうなところに水を差す事にもなり兼ねない!そうなったら姉さんがガッカリするのは火を見るよりも明らかだ。
どうする?
僕はチラッと本物の綾香ちゃんの方を見たけど、こちらは「はーー」とため息をついて両手を前にダラーッとしている。どう見ても呆れているとしか思えないぞ!その一方で勘違いの綾香ちゃんはニコニコ顔でいる。正直勘弁して欲しいぞ。
「はあああーーー・・・」
僕は長ーいため息をついた後、とりあえず第二音楽室へ連れて行くのを優先させる事にした。
「・・・あ、あのー、方広寺さん」
「あー、はい、センパイ!」
「さっきも言ったけど、姉さんたちは第二音楽室にいるから、そこで直接姉さんに話をした方がいいと思うから、今から行ってもいいかい?」
「あー、はい、それは全然構いません!」
方広寺さんはニコニコ顔を崩す事なくいるけど、とにかく第二音楽室へ連れて行くまでの我慢だと自分に言い聞かせると、僕はブレザーのポケットからケータイを取り出した。
「・・・あれ?センパイ、わたしの番号を知りたいんですかあ?
相変わらずだけどニコニコ顔の方広寺さんは何を思ったのか自分のブレザーのポケットに右手を突っ込んだけど、
僕はケータイを開くと電話帳の一番上に乗っている『姉さん』にカーソルを合わせて通話のボタンを押した。そう、姉さんに連絡するためだ。
『・・・もしもーし』
「あー、僕だけど・・・」
『そんな事は分かってるわよ!それより、何の電話?』
「あのさあ、今からそっちへ行ってもいい?」
『ん?別にいいけど、今日は雀荘永谷じゃあないの?』
「いや、今日は美咲さんの都合が悪いから中止なんだけど、昼休みに食堂で会った1年生をつれてそっちへ行きたいんだけど・・・」
『マジ!?』
「大マジです」
『ちょ、ちょっと待ってよ!ぜーったいにノンビリ歩いてきて!』
「はあ!?」
『大至急準備するから、ぜーったいに早足で来るのは禁止!途中でジュースを買うでもいいしノンビリとトークしながら歩いてでもいいから、とにかく時間を稼げ!いいわね!』
「言ってる意味がイマイチよく分からないけど、じゃあ、10分後に第二音楽室に到着するくらいでいい?」
『それでいいわよ! (ピッ)』
おいおい、何を訳の分らん事を言ってるんだあ?とにかく時間を稼げとはどういう意味だあ?
でも、姉さんの事だから方広寺さんをサークルに入れる気満々でいるはずだ。それだけは疑いようの無い事実だから、僕がこの場でお金を受け取って『ハイ、サヨウナラ』で方広寺さんを帰してしまったらガッカリするだろうなあ・・・
仕方ないから綾香ちゃんには後で謝る事にして、取りあえず方広寺さんを連れて・・・はあ!?綾香ちゃんと方広寺さんが口論してるだとお!
「・・・だいたい、先輩は単なる幼馴染さんですよね!」
「幼馴染のどこが悪い!」
「大いに悪いです!幼馴染はセンパイを連れまわしても良いなどという校則はどこにもありません!」
「そんな物は無いのは事実だけど、勝手にユーちゃんを連れ出そうとしているのは君の方だ!」
「何ですか、その『ユーちゃん』などという馴れ馴れしい言い方は?寒気がします!」
「フン!小学生に言われたくない!」
「小学生とは何ですか、小学生とは!これでも立派な高校1年生です!身長だって140センチあります!!デカければいいって仰いたいんですか!!!」
「はあ?ペッタンコな奴が何を言ってるんだあ?」
「何を勘違いしてるんですかあ?身長に見えてるでしょ?それとも先輩のブラはEとかFなんですかあ?」
「う、うるさい!」
「どうせ寄せて上げて誤魔化してるんでしょうねえ」
「
「はあ!?何ですかそれは?イキナリ横文字は勘弁して下さい!それともシャラップとでも言いたいんですかあ?」
「シャラップではなーい!だいたい、これはキツくて汚い表現なので、むやみやたらに使うべきではなーい!それに発音が全然だめだあ!
「あ、そーですか!どーせわたしはカタカナ英語しかできませんよーだ!!」
「とーにーかーく、君のペッタンコな胸から見たらボクの方がデカいとだけ言っておく!」
「悪かったですね!どーせわたしはAAですよーだ!!」
おいおい、勘弁してくれよお。教室に残ってる連中が笑ってるぞ。だいたい、胸の大きさとか身長とか、そんなアホみたいな事で教室の入り口で口論しているのはどうかと思うぞ!
「・・・ちょ、ちょっとー、他の連中の出入りの邪魔になってるからさあ」
僕はほとんど強引に二人の綾香ちゃんの間に入って口論を止めたけど、二人の綾香ちゃんは互いに『フン!』と言ってソッポを向いてしまった・・・
やれやれー、ホントに勘弁して欲しいぞー。
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