最大の理解者にして最大の障害
第12話 今ならお姉ちゃんと一緒に登校できるオプション付きです
“トントン”
(シーン・・・)
“トントン”
(シーン・・・)
“ガチャリ”
「おーい、
「・・・・・ (雄介君、熟睡中です)」
「ゆーすけー、早く起きないとお姉ちゃんは怒るわよー」
「・・・・・ (雄介君、まだまだ熟睡中です)」
「判決!フーフーの刑に処す」
”フー”
「うわあ!」
「ゆーすけー、ようやく起きたね」
「お願いだから耳元に息を吹きかけるのは勘弁してください!」
「雄介は左耳が感じるからねえ」
「姉さん!読者に変な妄想をさせる事を言わないでください!!」
「ゆーすけー、読者って誰?」
「そ、それは・・・とにかく、誤解を与えるような事を言わないで下さい」
「べっつにー。どうせ誰も困らないからさあ」
「はあああ・・・」
「そんな事より早く起きなさいよー」
「・・・分かりました、起きます」
はあああーーー・・・また今日も姉さんに起こされてしまった・・・ていうか、たまには目覚まし時計が鳴るまで寝させて欲しいぞ、ったくー。
姉さんが作る料理のジャンルに拘りはない。というより、朝は時間との勝負だから手間暇かける余裕はない。でも、どちらかといえば姉さんは和食派だ。
もっとも、山田さんが玉子を持って来た数によりけりだ・・・持って来た玉子が10個以内だったら全然問題にならないけど、30個、40個となると・・・
「ちょ、ちょっとー、これってマジなのかよ!?」
僕は朝から思わずボヤいてしまったけど、姉さんは澄ました顔でいる。
「だってさあ、山田さんが持って来た玉子は全部で50個だよー。いつも通りなら明日か明後日にはまた玉子を持ってくるんだから、頑張って使い切らないと勿体ないでしょ?」
「うちで全部使い切るには無理があるぞ!」
「これでもバッチャンが10個持って行ったんだよ。ゆーすけー、贅沢は敵だよ」
「だからといってさあ、オムレツに玉子の味噌汁、ホウレン草のたまご
「ノンノン!世の中には満足な食事も取れずに苦労している人が億単位でいるんだよ。わがままばかり言ってはダメです!」
「しかもさあ、このオムレツ、マーガリンを使ってるでしょ!?」
「あれー、ゆーすけー、食べてないのに気付くなんて凄いわねえ」
「ああ。バターとマーガリンでは香りが違うからね」
「まあまあ、マーガリンは植物性脂肪だから健康にいいんだよー」
「ホントはバターが無いから仕方なくマーガリンにしたんだろー (ボソッ)」
「雄介、何か言った?」
「いえ、別に・・・」
「なら、文句を言わずに食べなさい」
「はーい」
やれやれ、こう玉子ばかり続くと飽きてくるけど、かと言って折角山田さんの御好意で玉子をタダで貰ってるんだから、贅沢な事を言ってられないのも事実だ。それに早起きして朝食を用意してくれた姉さんに失礼だ。
昨日はテレビの占いに散々文句を言ったにもかかわらず、今日も姉さんは自分でテレビをつけて、いつもの朝の情報番組にチャンネルを合わせている。自分がテレビのリモコンを持っているんだから他局にするのも自由なのに、それをしないとう事は、やっぱりこの番組が気に入ってるという事なのだろう・・・
そんな僕もテレビの情報番組を見ながら食べているけど、いつも通りではあるが毎朝恒例の占いコーナーの時間に変わった。
今日の1位は
まあ、双子座が1位になる確率は12分の1だし、二日連続で1位になったらそれこそ出来過ぎです、ハイ。
でも、2位から6位にも入ってなく、7位から11位にも入ってなかった・・・
『ごめんなさーい、今日の最下位は双子座のあなたでーす』
「えー!勘弁してよー、ぷんぷーん!!」
「姉さん、占いに文句を言わないで下さい!」
「だってー、昨日は1位だったんだよー」
「毎日1位だったら僕も苦労しません!」
『波乱の予感がします。強力なライバルが出現するかもしれません』
「うわっ、まさに悪夢のような日じゃあないの!」
「そうですねー」
「雄介は呑気過ぎです!」
「姉さんは占いに
『そんな双子座さんの運勢を回復させるアイテムは三つ編みのツインテールです。これでライバル撃退!悪運を吹き飛ばしましょう!!』
「雄介!今日は三つ編みのツインテールにするわよ!」
「マジ!?姉さん、本気!?」
「あったり前でしょ!!」
「だいたい、姉さんの髪の長さではツインテールは出来ても左右で三つ編みは絶対に無理です!!」
「しまったあ!春休みに髪を少し切ったのを忘れてたあ!!」
「そういう事です!それに高校生にもなってツインテールを本当にするつもりですかあ!?」
「うっ・・・」
「昨日は占いを信じて散々な目にあったんでしょ?しかも『かもしれません』だからさあ」
「た、たしかに・・・」
「姉さん、占いは『当たるも
「ゆーすけー、たまにはいい事を言うわねー」
「『たまには』は余計です!」
「まあまあ、気にしない気にしない。それに雄介は絶対に三つ編みのツインテールはやれないからね」
「そういう事です。この占い、女性向けだとしか思えませんから」
昨日は1年生が入学式、2年生と3年生は始業式とホームルームだけだから、全学年の生徒が一堂に顔を合わせるのは今日が最初だ。
そして・・・毎年恒例の行事ではあるが、部・同好会合同説明会が午後からある関係で、今朝の正門付近は1年生獲得を目指す上級生たちの熱いバトル(?)が繰り広げられる。実際、僕も去年は相当手荒な(?)歓迎をされたけどね。
僕は部にも同好会にも所属してない『帰宅部』だから関係ないけど、姉さんは別だ。姉さんの場合、形式的には『帰宅部』だけど、実際には同好会の基準を満たしてない『サークル』に所属しているから、今年度の同好会昇格を目指して熱いバトル(?)に参加するのだ。
「・・・ゆーすけー、お姉ちゃんのお手伝いをする気はある?」
「却下。僕は行きません」
「今ならお姉ちゃんと一緒に登校できるオプション付きです」
「たまには僕が一人で登校してもいいでしょ?」
「雄介はお姉ちゃんの事が嫌いになったの?悲しいなあ、グスン」
「ウソ泣きはやめてください。それに、僕が姉さんと一緒にチラシ配りをやるという事は朝倉さんとも一緒にチラシ配りをやるという事ですよねえ」
「あー、そうだったわね」
「僕の気持ちも少しは察して下さいよお」
「さすがの雄介も浮気を反省してるようですねえ」
「そうじゃあありません!朝倉さんの立場で言わせてもらえれば、今は僕と一緒にやりたくないと思いますよ」
「たしかに雄介から見たら浮気でも、菜々子から見たら本気だったでしょうから、傷口に塩を塗るような事をやらせるのは酷よねえ」
「僕が浮気したかどうかは別として、朝倉さんがいなくなると一番困るのは姉さんじゃあないですか?」
「うーん、それは認めるわよ。ここは菜々子に配慮して雄介のチラシ配りを免除してあげるね」
「はいはい、そうしてください」
「その代わりさあ、チラシ配りはしなくていいから、一緒に登校しようよ」
「教室で1時間ボーッとしてるのは勘弁して下さい」
「ま、仕方ないわね。今日だけはお姉ちゃんは一人で登校します・・・」
「いってらっしゃーい」
「では、平山愛美、同好会昇格を目指してバトルに参戦いたします!」
「健闘を祈ります」
「とは言っても、『女王陛下』と『かぐや姫』の2トップは超強敵だからねえ、はあああーーー・・・」
「姉さーん、戦う前から落ち込んでいてどうするんですかあ!?」
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