こんな国は滅んでしまう

波留 紫苑

第1話

 どうしてこんなことに、私があれのお守りをする事になるなんて。

 この国はもう国家として存続する事は難しい局面に来ている。歴代の政権が無能だったので、とんでもない借金を背負っている。間もなくこの国は国際社会の援助無しには成り立たなくなるだろう。そんな中でこの国の最後の首相となるだろうあれのお守りを自称眼鏡の似合う美人秘書官の私がする事になるとは。

 これは、首相と秘書官である私の日常会話の記録である。これを読めば如何にしてこの国が破滅するに至ったかの理由がわかると思い記録として残す事にした次第である。なお、この記録に関しては隠蔽や捏造、故意の廃棄は一切認めないものとする。

      そもそも

秘「そもそも、なぜ首相みたいなのが議員になれたんですか?」

首「この国ではな、親が政治家である程度功績があれば、その子どもは大抵政治家になれるもんなんだよ。」

      誰でもいい

   

秘「首相、今回の閣僚人事に批判が殺到してますが」

首「実質、大臣なんて誰でもいいんだよ。仕事をするのは官僚で大臣はペーパーを読み上げられれば勤まるんだから。」

秘「だって、それすらも出来ない大臣が何人もいるじゃないですか。」

      烏合の衆

秘「そもそも、どうしてわが党にはろくな人材がいないんですか?」

首「当然だろう。所詮わが党の党員は甘いものに集まってきた蟻の集団にしか過ぎないんだから。」

      数合わせ

秘「また、わが党の議員が醜聞で辞職したんですが。」

首「別に構わんだろう、どうせ数合わせの人員なんだから、足りなくなったら足せばいいだけだから。」

       丁寧な説明

秘「首相、何事かにつけて丁寧に説明していく、と言って説明した試しがないですよね」

首「元々、説明出来るようなことじゃないからな、時間稼ぎのための常套句に過ぎない、そしてそのままうやむやになるのを待てばいいだけのことだから。」

       少子高齢化

秘「どうして今さら少子高齢化で騒いでるんですかね、この状況になることは数十年前から中学生の教科書にものっていたのに、要は歴代政権は中学生以下の頭でしかないってことですか。」

首「めんどくさいことは考えたくなかったんだろう。財政的なことは税金上げれば済む話だし。」

       税金

秘「そんな風に税金をあげていては、その内しっぺ返しを食らいますよ」

首「大丈夫、この国の人間は税金を上げるまでは騒いでも上げてからはさわがないから。」

       投票率

秘「そんないい加減な政治運営でいいんですか。」

首「この国の国政選挙の投票率を見てればわかるだろう。大半は政治なんてどうでもいいと思ってるんだから。」

      議員数削減

秘「首相、無駄に多い議員数を減らす気はないんですか。」

首「わが党は数で圧倒するしか能のない集団だから、その武器である数を減らしてどうする。」

秘「ですが、ほとんどの議員が名前すら知られていないし、名前を知られているのは何か失態をやらかした議員がほとんどじゃないですか。」

     買収

秘「首相、大変です、わが党から買収で捕まった馬鹿がいます。」

首「心配するな、そいつには既に離党届を出してもらった。わが党にも私にも一切責任はない。」

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こんな国は滅んでしまう 波留 紫苑 @isimori2027

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