教えてっ、トイレってどうすればいい?
現在、藤原から逃走中のため全力ダッシュで走っている。
女の体になっても体力と運動能力は元の時と変わらないようで、
走りながら視線をそっと自分の胸元へと向ける。
そこにはブルンブルン揺れまくっているおっぱいがある。
「地味に痛いし、バランスが崩されて走りにくい……」
まさか巨乳にこんな弊害があるとは。
肩こり程度ならまだしも、動いただけで痛いとかどんな拷問だ。
さいわい痛みはさほど大きくはないのだが、揺れるおっぱいに周囲の視線が釘付けになるのは勘弁して欲しかった。
単純に恥ずかしい。
これ以上注目されるのも嫌なのでどこかいい感じの避難場所が無いか探していると、トイレのマークが描かれた看板を見つけた。
これさいわいと夏にアイコンタクトでトイレに向かうことを伝える。
ふふふ、伊達に幼馴染を十六年もやっていないのだよ。
すぐそこの角を曲がってトイレに入る──直前。
俺の足は無意識に止まってしまった。
「……どうしたの?」
少し息を乱しながら、訝しげな表情をして俺の顔を覗き込む夏に対して、俺は重要な問いを投げかけるのだ。
それは──
「俺ってどっちに入るべきだと思う?」
究極の選択とも言えるような俺の問いに対し、夏は一言。
「いや女だろ」
即答する夏にジト目を向けるが、彼女は意に介さずにさっさと女子トイレへと入ってしまった。
「えぇー……」
俺はTSして立派な女になったから女子トイレに入るのは何も問題がない……はずなんだが、謎の罪悪感が一歩わ踏み出すことをためらわせる。
ぐっ、こんなところに思わぬ伏兵が……っ!
それでも俺は負けない。勇気を出して一歩──
「あーもうっ、うじうじしてんなっ!」
踏み出す前に夏に拉致られた。
初めて入った女子トイレはなんというか、違和感しかなかった。
見慣れた小便器がないのもそうだし、全体的にピンク色なのも違和感がある。
ちょうど尿意を催したので初女子トイレを満喫することにしよう。
うん、俺は今女だから満喫とか言っても全然変態なんかじゃないぞ。こらそこ、言い訳とかいうなー。
ちょこっとだけドアを開けて、開いた隙間からささっと個室の中へと滑り込んで鍵を閉める。
ふむ、個室はそんなに変わらないな。あえて違うところを挙げるとすれば音姫があることぐらいか。
ならば……あとは実戦練習というわけか。
スカートをたくし上げてパンツを下ろして便座に座る。
ん……息子がないから狙いをつけれない。
あー、もう我慢の限界だ。
脱力して排する。
シャーーー
「ひにゃぁあああ!」
ちょっ、まっ、太ももにかかった!
軌道修正……息子がないからできない!
「ちょっ、どうしたの!?」
「ひゃぁ、これ太ももにかかるぅ……」
「あー、前かがみになったらいい感じになるわよ」
なるほど、前かがみになればいいのか。
なら早速……おおっ! 被害を一切出さずに綺麗に便座の中へと吸い込まれていくようになった!
「流石だな夏」
「なんで上から褒めてんのよ」
夏の呆れた声を聞き流し、用を足し終える。
えーっと、確か女って小便した後にトイレットペーパーで拭くんだったよな。
いちいちトイレットペーパーを使わないといけないなんて……なんて資源の無駄だ。
またを優しく拭いた後、大惨事となっている太ももとお尻も拭き、最後に便座も綺麗にしてから個室を出る。
疲れた。なんでトイレ一つでこんなにも疲れないといけないのか。
っていうか今まだ午前中だぞ。
いや、もう十二時は過ぎてんのか。
どっちにしろ濃すぎる半日だ。
靴はまた後日一緒に買いにいくということで落ち着いた。
結局お昼ご飯も食べずに大量の衣服を持って家に帰るのであった。まる。
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