第148話 レラたちの戦い
“ズドーーーン!!”
もう何度目になるか、戦場に爆発が起きる。
限が、谷田・橋本・光宮家の者たちと戦っていた頃、レラたちも平出・高木家の者たちと戦っていた。
「何なんだあの女は!?」
レラから発射される爆発魔法によって、多くの敷島兵たちが物言わぬ骸へと変えられていった。
そのため、凄惨な現状を作り出しているレラに対し、兵たちは脅威の感情を向けていた。
「女だけじゃない!!」
「ガウッ!!」
「ギャッ!!」
愚痴をこぼした仲間の言葉に反応するように発せられた言葉だが、その言葉を発した者はアルバの前脚に殴られて吹き飛んで行った。
その一撃によって全身の骨が砕け、その兵は即死した。
「くそっ!!」
異常な強さの白狼をまともに相手にするのはリスクが高い。
それなら、まずはレラを始末しようと動き出す。
レラは今、爆発魔法を放って魔力が尽きている状況。
魔力回復薬を使用して、爆発魔法を再度放つまでには少しの時間がある。
そこを狙い、敷島兵たちは一斉にレラへと斬りかかった。
“ガキンッ!!”
「くっ!! またか!?」
敷島兵たちの刀がレラを斬る寸前、透明な壁が作り出される。
その壁によって、敷島兵たちの攻撃は阻まれた。
透明な壁の正体は魔力障壁。
レラのポケットの中にいる、ニールによる防御だ。
この防御があるため、敷島の者たちはレラたちに一撃も攻撃を当てることができないでいた。
「ガウッ!!」
「グワッ!!」
攻撃を防がれた者たちは、すぐさまその場から退避しようとする。
しかし、仲間のレラを攻撃した者をアルバが許さない。
敷島の者たちが行動するよりも速くレラたちのもとに戻り、攻撃をおこなった者たちを殴り飛ばした。
「フゥ~……」
「くそっ!! また……」
アルバが周りにいた敷島兵たちを一掃してくれている間に、レラは魔力回復薬を飲みほしす。
そして、一息つくと、また爆発魔法を放つために集中し始めた。
このままだと、少しすればまたあの爆発魔法が放たれて、多くの敷島兵が死ぬことになる。
しかし、止めようにも白狼の存在が邪魔になるため近付けず、近付くことができたとしてもこちらの攻撃が通らない。
敷島の者たちからすると、完全に八方塞がりと言った状況だ。
そのため、レラが爆発魔法を放つために魔力を集中させていようと、何もできないでいた。
「……仕方ない」
「そうですな……」
限の仲間となる女1人と従魔らしき2体によって、自分たち敷島の人間が良いようにやられている。
このままでは、仲間の数を減らされていくだけだ。
それを阻止するべく、平出と高木の当主2人は顔を見合わせ、頷き合った。
その頷きだけで、互いの言いたいことを理解したのだろう。
2人は強化薬を取り出し、口の中へと放り込んだ。
「あの白狼は我々と精鋭部隊がが引きつける」
「お前たちはあの魔法使いの女をどうにかしろ」
当主の2人は、そう言うとすぐに行動に出る。
平出家・高木家の精鋭を引き連れ、レラたちのいる所へと向かって行った。
「「「「「了解しました!!」」」」」
当主たちが動いてくれる。
それにより、白狼の存在を気にすることなく魔法使位の女に接近することができる。
指示を受けた者たちは、大きく返事をして当主たちの後を追いかけていった。
「犬っころ!」
「こっちへ来い!」
レラたちの近くに来ると、平出と高木はアルバを挑発する。
「…………」
狼の自分を犬呼ばわり。
そんな事で腹を立てるようなことはしない。
アルバは、冷静に周りを動きまわる平出と高木たちを視線で追っていた。
「このっ!!」
「馬鹿っ!!」
言葉だけではなく、色々な挑発をおこなうが、全くアルバが乗って来ない。
そのことに我慢できなくなった者が、もっと接近してアルバの注意を引こうとする。
しかし、その行動を止めようと平出が声を上げた。
「ガウッ!!」
「グアッ!!」
平出の制止の声も虚しく。
不用意に近付いた敷島兵は、アルバの前脚による攻撃によって殴り飛ばされた。
「「ハッ!!」」
「グルッ!?」
殴り飛ばされた仲間は、体がおかしな方向に曲がっている。
恐らく、骨と内臓が破壊され、即死したのだろう。
不用意に近付いたことにより結果だから仕方がないとはいえ、仲間を殺されて何も思わない訳ではない。
しかし、不用意な行為とは言え、攻撃した標的の白狼に僅かな隙ができた。
そこを逃さず、平出と高木はアルバに斬りかかった。
“バッ!!”
他の兵とは違い、早い接近による鋭い攻撃。
受ければ自分でも怪我を負うと判断したアルバは、その場から跳び退き距離を取った。
「よしっ!」
「足止めしろ!」
「「「「「おうっ!!」」」」」
アルバをレラから離すことに成功した。
そのことに成功したことに笑みを浮かべ、平出と高木はすぐに支持を出す。
その指示を受け、精鋭部隊の者たちがアルバを取り囲んだ。
「今だ!!」
レラの側からアルバが離れたのを見て、残った敷島兵たちは行動を開始する。
爆発魔法の準備をおこなっているレラに向かって、一斉に襲い掛かていった。
「固い!!」
大人数の敷島兵がレラへと殺到するが、またもニールの魔力障壁が発動し、攻撃が防がれる。
「しかし……」
“ミシッ!!”
「っっっ!?」
ニールの魔力障壁は強固だが、どんな攻撃でも防げるほど完璧ではない。
強化薬を使用した敷島兵たちが一斉に繰り出した攻撃により、魔力障壁にヒビが入った。
爆発魔法の準備をしていたレラだったが、その音を聞き目を見開いた。
「このっ!!」
「オラッ!!」
ヒビが入った場所に集中するように、敷島兵たちが連続して攻撃を繰り出す。
それによって、ニールの魔力障壁に入ったヒビがどんどん広がっていった。
「これで終わりだ!!」
“パリンッ!!”
敷島兵たちの攻撃が続き、とうとう魔力障壁が砕かれてしまった。
「殺せーーー!!」
「「「「「おーーーっ!!」」」」」
魔力障壁が無くなれば攻撃を防ぐ術はない。
この機を逃すまいと、敷島兵たちはレラへ向かって斬りかかっていった。
「ハッ!!」
「「「「「っっっ!!」」」」」
自分に迫り来る敷島兵たちに対し、レラは自分の周囲に風魔法を放つ。
それによって、襲い掛かった敷島兵たちは風の刃によって斬り刻まれた。
「「「「「…………っ!?」」」」」
「私が爆発魔法だけしか使えないとそうして思ったの?」
バラバラに斬り刻まれた仲間を見て、敷島兵たちは息を呑み、レラへの攻撃の手を止めて息を呑む。
そんな彼らに、レラは笑みを浮かべつつ問いかけたのだった。
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