新旧最強プレイヤー2

「しっかりとオールスターを揃えてきたみたいですね……!」


 僕がランキング1位なんて座にいられるのも、この人達がマジトレを引退したからだ。

 この人達が現役でマジトレをしていた時、僕はまだまだ始めたばかりでランキング圏外だった。

 大会で派手に戦い合うこの人達に憧れを抱いていたほどだ。

 そして、初めてメアの存在を世間に知らしめたのもこの3人が組んだパーティだった。

 僕が本気でマジトレにのめり込み始めたキッカケを作ったのは、この人達なんだ。


「大変でしたよそれぞれに連絡を取って日程を調整して。ノーネームさん達には感覚を取り戻してもらう期間を設けたりしましたからこんなにも再挑戦が遅くなってしまった。でも、これも全てトーシローさんとメアを倒すためだ」


「最近はもっぱら『ドラゴンズナイツ』にハマってたからなぁ。マジトレがサービス終了するなんてRAVENさんから聞いて初めて知ったし」


 WITさんが楽観的に話した。

 本当に思い入れがあまり無いような話し方だ。


「私が引退してから1年経つけど、パワーバランスが壊れるような仕様変更は無かったみたいだし、充分戦えるよね」


 ファルカナ☆みかんさんと同じ女性プレイヤーであるpikyyyさんが言った。


「前回と違い……今回は全員生存でのメア城到達。やっぱり当時の上位ランカーは伊達じゃねぇ」


「パプリカさんも全然強ぇーって。当時でも上位入れるっしょ。そんな変わらんよ」


「そうか?」


「お喋りはその辺にしておけ。俺達の目的はここからなんだからな。まずは、正面の敵を片付けるべきだ」


 ノーネームさんが臨戦体制に入ると同時に姿を消した。

 僕は即座に地獄の火炙りイービルファイヤを発動させるために宝石を手元にセットした。


地獄のイービル───」


全封印ロックダウン


 RAVENさんの放った魔法は僕の足元に魔法陣を浮かび上がらせ、光のムチが生えてきたかと思えば僕に絡み付いてきた。

 発動しかけた地獄の業火イービルファイアが無反応となる。


 これは……メアが造った洞窟で見たものと同じやつだ!

 魔法が無力化される!

 宝具として存在するものだったのか!?


「噂程度には知っていたんだ。相手の魔法を無力化する魔法があると。流石に無策でメアに立ち向かうほど馬鹿じゃないさ」


「寝る間も惜しんで手に入れたんですよ? それほど便利なものではないけど」


「充分だ」


 ノーネームさんが直近まで来ているのが分かる。

 メアのやつの劣化版と考えるべきか……!

 ならば!


「はあ!!」


 空間分離トランスファーでムチを攻撃した。

 予想通り、ムチはアッサリと切り落とされ、拘束が解かれる。

 魔法を使うヒマはない。

 足音から予測し、ノーネームさんが来る方向に剣を振った。

 透明鏡鎧インビジブルアーマーも完全に見えなくなるわけでは無い。

 空間が歪んだように見える場所、そこにノーネームさんがいる。


「そこだ!!」


「御明察」


 ノーネームさんの一撃を防いだ。


「だが、俺も囮だ」


「な!?」


 既にWITさんとpikyyyさんが回り込んでいた。


 なんとかして回避を───


絶空ぜっくう


「超弩級剣戟」


 僕の上半身と下半身が真っ二つに斬られた。

 宙を舞いながら回復魔法を使おうとするも手遅れだということを察する。

 ドサリと床へ叩きつけられると、生まれて初めて下半身が無くなる感覚を味わう。

 口から血が逆流し溢れ出た。

 痛みで意識がハッキリとしているのに、すぐに消えかけてくる。


「俺らいらんかったな」


「流石だ」


「この後、回復の泉あるの助かりますねー」


「さーてこれでゲーム脳は死んでくれたわけだし、本命、行きますかぁ!」


「「「おーー!!」」」


 まるで僕もCPキャラのような扱いだった。

 死んだキャラなんて、どうでもいいわけだ。


「メ……メア……」


 魔法を封じる宝具。

 あれは危険だ。

 メアに対するメタ的な宝具だ。

 僕が、何とかしなければ……。

 僕が…………。


 視界が真っ暗になり、自分が再び死ぬのだと直感で悟る。

 やりきれなさだけが心に残され、僕は死んだ。


 死の直前、音声データのようなものが脳内で聞こえたような気がした。


『リヴァイバルゲージ、チャージ完了。解放可能です』

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