第参話 男子高校生の日常は唐突に終わりを告げる


 「―――という出来事があって、今、みんなが住んでいる筑波が出来上がったのです。そして、もう知っていることだとは思いますが、この筑波を管理しているのが―――」

 いつも通りの日常。それが最も適切な言葉だろう。授業に集中して取り組む者、友達と他愛もない話で盛り上がる者、授業など聞かずに居眠りをする者。皆、自分にとっての日常を謳歌している。

 僕もその一人だ。隣にいる友達と喋り、あぁでもない、こうでもない、といつも通りの生活を送っていた。しかし、その日常は一回の校内放送によって崩れていった。

 「普通科2年F組 黒木龍也、普通科2年F組 黒木龍也。至急校長室へ。繰り返す普通科―――」

 僕の名前だ。教室全体がざわつき始める。何かしたのか、退学か、そんな話が飛び交っている。それもそのはずだ。この学校に入学してからというもの、僕は特に目立つようなこともしていない、いわゆるモブのような生徒だった。そんな生徒がいきなり校内放送でしかも校長室に呼び出されているのだ。正直、僕自身も何故呼び出されたのか分かってない。

 急いで校長室に向かうと、そこには校長の他に、黒い外套に身を包んだ人が二人いた。一人は長身の男性で、もう一人は、華奢な女性だった。二人とも、年齢が若く、顔立ちが整っており、街を歩けば見とれる人もいるだろう。

 「君が黒木龍也君かな?」

 若い男性が話しかけてくる。

 「突然のことで驚いているかもしれないけど、とりあえず落ち着いて話を聞いてほしい」

 「あの・・・あなたたちは・・・」

 「僕たちは筑波研究学園特別行政都市評議会、みんなが言う評議会だよ」

 頭が追いつかない。評議会は知っている。でも、なんでその評議会が僕に用事があるのかが分からない。なのでとりあえず聞いてみることにした。

 「それで、評議会の人たちが僕に何用ですか?」

 「話が早くて助かるよ」

 そう言って、男は白い封筒を懐から出し、僕に渡した。封筒には『辞令』と書かれている。 

 「黒木龍也、本日付けで筑波研究学園都市評議委員会本部役員に任命する。おめでとう」

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ようこそ、我々の学園都市へ 困難人形 @konnan-doll

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