第三話 奴隷剥奪
あれから3年の月日が経った。
俺は12才になっていた。
毎日毎日、朝から晩まで重さ数十kgから百kgはあろうかという石を石切り場から建設現場まで運んでひたすら壁へと積み上げていく繰り返し。
過酷な労働に耐えきれずに死んだ奴も多い。
寒さに負けちまった奴も、建設中に高所から落下して事故死した奴もいる。
だが俺は死ななかった。
他の奴より少しでも重い石を、少しでも早く、少しでも多く。
むしろ他の奴から石を奪い取ることさえあった。辛そうに倒れてる愚図なんかは格好の餌食だ。
なんだか知らんが感謝され、食い物を少し譲ってもらえることもあった。
おかげさまでなかなか力がついた。
豚の世話係なんざよりこっちの生活のほうがよっぽどタメになったぜ。
欲を言えば素振りをする時間と良い具合の木の棒は欲しかったのだがそこまで贅沢は言うまい。
「集合~っ!」
現場監督の甲高い声が一帯に響き渡り、その日も俺は目を覚ました。
周りの奴らは疲労困憊といった様子で、思うように動かぬ体に鞭打ち、無理やり体を起こそうと頑張っている。早く行かねば本物の鞭を打たれることになろう。
俺はちょっとした嫌がらせに、奴隷たちの待機所の前にいくつか石を積み上げ、自分だけ先んじて集合場所に駆けつけた。これで石は全部俺のもんだ。
「何をやっておるか馬鹿者がッ!! さっさと石をどかせ! 他の者が出られんだろうが!!」
なぜか俺が鞭を喰らうことになった。
まぁいい。盛り上がった傷跡の肉の感触を楽しむのは生前の俺のささやかな趣味だった。この体にもそれが欲しかったところだ。
しこたま鞭を頂戴した後、しぶしぶ待機所の石をどけていると、後方から現場監督のこれまた甲高い声が悲鳴の如く響いた。
男の癖にキィキィ鳥みたいに鳴く奴だ。
振り返ると、現場監督は巨大な魔物に地面に押さえつけられながら背中を一突きにされ、まさに悲鳴を上げながら命尽きたところだった。
いくらかの魔術兵がやってきて魔術の雨を降らせるが、数に勝る魔物どもは波のように押し寄せて来て勢いが衰えない。
――やがて敗北を悟った魔術兵どもは壁の建設を放棄し、逃げ帰った。
この場には、抵抗する手段をまるで持たない奴隷どもだけが取り残された。
袋を持った巨大な魔物が十体以上も、ズンズンと大きな足音を立てながら待機所へとやってくる。
十数人が乱雑に一つの袋に放り込まれ、俺たちは持ち帰られた。
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人魔名鑑
【No.1】 ★Update
名 :クリス=シルヴェスター・フォン・ジーフリト・ツー・リオネス
Lv:3
年齢:12
種族:人間
才能:不明
能力:なし
武装:なし
国籍:神聖アルビオン帝国
身分:奴隷
所在:国境壁建築拠点
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