被虐の異世界英雄譚 ~反逆の剣鬼~
すきぴ夫
<零> 被虐の幼少期
第一話 楽園追放
「ご主人様、お生まれになりました! 元気な男の子ですよ!」
使用人が生まれたての赤子を取り出して主人に見せる。
分娩室の隅っこで心配そうにお産の様子を見守っていた主人は、歓喜と安堵が入り混じった表情で赤子の顔を覗き込んだ。
「おぉ……なんと。母に似て聡明で美しい顔つきをしておる。お前も見てみなさい」
「ふふ……いやだわあなたったら。それよりも、あなたに似て精悍で凛々しいお顔をしているわ」
「ふふ。いずれにしろ私たちの子供だ。将来は約束されている」
「えぇ。優秀な魔術才能は掛け合わせることで強化されていく……国一番の魔術師であるあなたと、二番の私の子供ですもの。きっと歴史に残る英雄に……」
「ははははは……」
「フフフフフ……」
***
――俺の名は『クリス=シルヴェスター・フォン・ジーフリト・ツー・リオネス』。
別の世界で志半ばに無念の死を遂げたのだが、何の因果かこの世界で、天才魔術師として名高い上位貴族の両親のもとに生まれ変わった。
ま、生まれながらにして栄光の道を約束されたお坊ちゃんってやつだ。
その俺がどうして見渡す限り土と木と山しかないこの僻地で野草を漁っているのか――理由は単純明快。
『俺に魔術の才能とやらが皆無だったから』――だとさ。
そんな理由で我が子を捨てるとは、笑っちまうぜ。まぁ、構やしねぇがな。
『剣に生き、剣に死す』
胸に誓ったこの生き様、あやうくひん曲げられるところだったってもんだ。むしろ魔術の才能がなかったのは僥倖よ。
そのへんの草をクチャクチャと咀嚼しながら棒きれを振り回していると、のしのしと養母がやってきた。
「なにをサボッてんだい、この穀潰しが!」
思いきりゲンコツを喰らい倒れる。
「余計なことに体力使う暇があったら働くんだよ!」
倒れているところに殴る、蹴るの暴行を受ける。
あー、全くひ弱な体だぜ。いかんせん栄養が全く足りていない。
「お母様やめて! スライをいじめないで!」
と、パタパタとやってきたのは養母の娘――ここでは俺の姉にあたる『ティナ』だ。
眼前で両手を広げるティナにも手を出しかけた養母だが、何かが頭の中に去来したらしく思いとどまった。
「フン。ティナ、だったらお前がその穀潰しの分も働くんだよ、いいね!」
「はい、お母様」
養母はのっしのっしと引き返していった。
「……大丈夫、スライ?」
俺の体を支え起こしてくれるティナ。
「すまねぇな、ティナ。お前の仕事増やしちまった」
「もう! 私のことはお姉ちゃんと呼びなさいって言ってるでしょ!」
「……」
バカ言うな。俺がいくつだと思ってやがる。いくら見た目が10才程度だからといって、中身は立派な大人。武人。剣士だぞ。テメーみたいなガキんちょに甘えられるかってんだ。
「う……」
しかし体は正直だ。気丈に立とうとするが眩暈がしてふらついてしまう。
「ほら無理しないで。少し横になりなさい」
膝枕をしてくれるティナ。
……まぁ、いいか。剣に生き、剣に死すことと、子供が姉に甘えることは矛盾しない。今だけはその膝、借りてやる。
***
薄汚れた小屋の中。養母が寝転がって暇をつぶしていると、コンコンと訪ねてくるものがあった。
「はいはい、どちらさん?」
扉を開ける。
そこには黒服の男たちがいた。
「あら……あんたたちは」
「先日はどうも。商品を受け取りに参りました」
ニタァ、と、養母は笑みを浮かべた。
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人魔名鑑
【No.1】
名 :クリス=シルヴェスター・フォン・ジーフリト・ツー・リオネス
Lv:1
年齢:9
種族:人間
才能:不明
能力:なし
武装:木の棒
国籍:神聖アルビオン帝国
身分:捨て子
所在:ダーネス村
【No.2】
名 :トリスタン=ローランド・グラーフ・フォン・ジーフリト・ツー・リオネス
Lv:52
年齢:36
種族:人間
才能:戦士才能(クラスA) 魔術才能(クラスA)
能力:不明
武装:不明
国籍:神聖アルビオン帝国
身分:辺境伯
領地:リオネス
【No.3】
名 :シャーロット・フォン・ブリュンヒルデ
Lv:50
年齢:29
種族:人間
才能:射撃才能(クラスA) 魔術才能(クラスA)
能力:不明
武装:不明
国籍:神聖アルビオン帝国
身分:辺境伯夫人
所在:リオネス
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