地球は青かった ☆
「いやー凄かったな!」
「……まあね」
二人は映画館から出る。
デートの旅先は宇宙戦争だ。
「水色の異星人、マスターソーダが嵐みたいに動き回る場面!」
「あんな動きしてみたいよ!アクロバティックで予想がつかない激しさだった」
「異星人の独特な考えや政治関係は作り過ぎだったけどな」
「そこは同感、黄色の異星人、マスターヨーガの癒しパートが救い」
違いない、と笑っていた彼氏は真顔に。
「剣術監修お疲れ様、その様子じゃ不本意な出来上がりだったのか?」
「そうでもないよ、演劇に求められるのは本物ではなくてらしさ、だよ」
「当ててやろうか」
「……どうぞ」
「あの動きは振り回した死角に侵入されるし、回転と体裁きで剣の軌道が読める」
「空中での体の軌道と落下の時間、運足に優れる者なら死角を割って着地を狩る」
「……うまくいったみたいね」
「というと?」
「素人は驚き中級者は勝った気になって喜ぶ、あれはそういう娯楽に設定したの」
気になるならコアなファンの考察サイトでも読みなさいと言い残した彼女に従う。
今作もあの剣術監修がついてるな。
どゆこと?解説はよ。
ガチ勢マダー?
くだらない雑談と素人、中級者の中に異様な長文たちが現れた。
例えばこのシーン、侯爵と戦ってるここが一番わかりやすい。死角を与えてしまっているけどその瞬間の体勢、体に先行して首を振り終わってる。もし死角に入ったらその反撃は到達直前でソーダの半身脇構えに吸い込まれる形。
気付いたか。別シーンでちょうど同じ原理をサイボーグ兵に合わせて遅くして使ってたな。同じ形でブラスターを誘って半身八相に撃ち込んできたところを返してる。
また別シーンだけど、ここまでで分かるソーダの見切りと脚力も含めて考えると
全体を通して、死角を与えて誘い出した反撃の出鼻に飛び込みを合わせる気満々。
そして相手の体勢がどうであれ旋転運捻変の全てを兼ね備えた融通無碍の体捌きで合わせきる能力が異常、体の外に体軸を設定するとか、遠心力や慣性、ジャイロ効果まで使って一時的に体を空中に固定したり、体軸の操作で固定する位置を調整して跳躍中に方向まで変えて、疑似二段ジャンプかよ、発想がいかれてる、俺なら戦わずに土下座だわこんなの。
しかもそれだけの動きをしていながら空中で常にセイバーが反撃コースをつぶす位置に置いてある、体の動きからセイバーの動きが解放されてる。剣体一致はしてないけど、むしろ技術として分離されてる。体の重み、動きの重みを活かして打ち負けないし、時々思い出したように剣体一致して本当に重い部分も弾き流すし、結局はその一手以降侯爵の手数が激減してる。
そりゃデューフー侯爵閣下は攻めあぐねて待ち剣状態に追い込まれるわけだ。
このシーン、マスターソーダは圧力をかけていく中でミスしたよな。体捌きが突然溜めで遅くなって、入り方も直線的で体も低空とは言え跳躍中、これは先を取られて着地を狩られてもおかしくなかったよな。
お前、フォースと共になったな。
は?
低空どころか水平に滑るように跳躍、設定した体軸が残してある。そしてコンパクトにたたまれてる片足がまだ活きてる。着地を狩られる瞬間に体軸を連結して活きてる片足を伸ばせば地面に届く状態。一般的な攻防理論はその瞬間に崩壊するよ。死に体に見えるけどこれも誘い。誘う動きが圧力と両立しててこれだけ変則的な動きでありながら基礎基本に忠実。
なるほどな、それを侯爵は察知して手を出さず、逆に待って受け潰しにかかるもソーダは連結しかけた体軸を瞬時に解いて、牽制込みの崩しに移行することで受け潰しをかき乱す駆け引きって流れか。
手が込みすぎ、監修さんこっわ。
マジかよ宇宙騎士やめるわ俺。
完全に人外じゃねーか(笑)
人の身でマスターソーダに対抗できるデューフー侯爵もどうかしてる。
異星人(人とは言ってない)
「宇宙は広かった」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます