【20話の2】 三国ハレム協商

 

「三国のバランスという点で公平に、一応グループごとに1人、侍女長の扱いの妾を置くことになり、ヴェロニカさんには、それに就任していただきます」

「帝国と王国からも1人、出すことになります、勿論、容姿端麗、渉外も行える人が条件です」


「また同様の理由で侍女頭を採用、マシャさんはとりあえず侍女頭として、妾になっていただきます」

「これも三国のバランス上、最低1人は出すことになっています、侍女長以下は魔法が使えることが前提です」

 

 ということは、ヴェロニカさんも魔法使いだったの?

 ヴェロニカさんみたいな方が後2人……私の自由はなくなりそうです。

 マシャさんはヴェロニカさんの補佐あたりの役割……

 

「そうそう、帝国からの侍女長は先ほど顔を合わせておられます」

「アルレット・バレ、フラン帝国の子爵家の出で、同じ帝国の子爵に嫁がれました」

「死別となり実家に戻られていましたが、私付きの侍女長になっていただいています」

 馬車で出会ったあの方ですか……

 

「ご本人は承諾されているのですか?子爵夫人が奴隷ですけど?」

「イルマタル様、少なくとも帝国において、貴族当主の妾は自由民よりも立場が上、社交界に出るのにもなんら触りはありません」


 この世界の奴隷は農奴と違い、『主』に縛られる存在、『主』の意思で売り買いはされますが、それ以外はあまり関係ないのでした。

 誰かと結婚したければ、『主』の許しさえあれば、『下賜』または『払い下げ』という名目で夫婦になれるのです、『初夜権』などもそこに含まれているそうです。

 

「イルマタル様、王国の侍女長は決まっています、当然私の侍女長です、明日にも紹介させていただきます!侍女頭もです!」

 ベンヴェヌータさん、そんなに対抗意識をむき出しにしなくても、もうこの話、変えられるわけではないのですから。

「では帝国の侍女頭は、私の侍女から出します」

 

「では話は決まりましたね。実は明日から私たちの家を作ろうとしていたのです、いい機会ですから明日、関係者で顔合わせしてから、皆の家を作りましょう」

 

 もう、夜の11時近く、とてつもなく疲れた1日が終わったのです。

 一夜で三国ハレム協商が成立しました。

 

 翌朝、とても早くおきました。

 とにかく集会室を取り寄せなくてはいけません、11名分は最低でも必要です。

 ……くそっ、長さの制限を20フィートにしておけば……

 

 !

 

 まてよ、聖天様との打ち合わせのとき、確か1辺あたり5m4方の立方体積が1日の最大使用量と決めたはず……

 立方体積?ひょっとして……125m3を上限に1m単位での立方体と捕らえても良いのでは……長さ10m×幅3m×高さ4mなら120m3となる……そういえばキャンピング・カーとは5mだったので取り寄せたけど、牽引装置が付いていたはず……5mを少し超えていたけど、取り寄せできていた……

 

 なら簡単です、取り寄せてみればいいのですよ!

 

 可能でした、某社のトレーラーハウスを取り寄せできました、長さ10m×幅3m×高さ4mの120m3ですからね。

 だから聖天様、立方体を並列でと私が申し出た時、うやむやにされたのですか?私の希望を聞くと、7日に一度、倍にする事が出来なかった……聖天様、いい神様ですね……


 3m×1mのチップアウト付きで、照明までついていますが、今のところ電気はまだです。

 建築確認なんて不要ですし、そもそもいつでも取り出し、そして撤去するつもりですからね。

 基礎はブロックかコンクリート平板でいいでしょうね、とりあえずですから、まあ水平が出るように地面は均しましたけど。

 

 なんとか朝食に間に合いました。

 

 皆さん、驚いていますよ、こそこそしていたら起きてこられましたから。

 

 いつもの慎ましい朝食を食べながら、マシャさんが聞いてきます。

「凄いですね……この建物は、何に使うのですか?」

 

「これから打ち合わせをするのでしょう?会議室が必要かと思いまして……」

「まだ電気はないのですよ、キャンピング・トレーラーとは違いますからね」

「でも大物はまだ先だと、うかがっていましたが?」

 

「昨日ね、あれから考えていたのです、神様との交渉で、大物は7日に一度と思っていたのですが、よくよく考えてみれば、出す方法があったのです」

 

 マトリョーナさんが、

「神様?交渉?」

 まずい、不用意に喋ってしまった……

 

「そのあたりも、今日の打ち合わせで開示いたします」

「もう私も腹を固めましたから、ただし他言無用ですよ、今日の打ち合わせのメンバーだけです」

 

 そしていよいよ、打ち合わせのメンバーがやってきました。

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