エーリュシオンでお取りよせ?

ミスター愛妻

第一部 夏至から物語は始まった。

第一章 あっという間に言い寄られ

【01話の1】 死に臨んで神様と交渉する。

 

 私はどうやら死んだらしい……

 妻と死別後、定年を迎え、それでも雇用延長しながら働いていた……

 忙しい日々であったが、そうか、やっと終わったのか……

 

 趣味はラノベで、小説なんて書いているぐらいの人生だったな……

 異世界転移なんて書いていたが、大したものではないが……

 丁度先頃キリがついたから、まぁいいとしますか。

 

 ここは死後の世界なのだろうな……

 うすぼんやりとした空間を認識できる……

 

「よく来られた、立派な人生だったぞ、私はナンディケーシュヴァラ、貴方がよく信心してくれた聖天だ」

「これは聖天様、生前はお助けいただき、ありがとうございました、おかげさまで、妻も幸せな人生を過ごせました」

 私は突然の声にも、驚く事もなく普通に話している。

 

「貴方の生前の行いは高く評価できるが、解脱とはいかない、未練が残っているようだな」

 そうですか……未練がね……

「未練を持たせたまま、六道輪廻の輪に入れるのもどうかと私は思っていたら、名をはばかる方から、それなら未練を満たせてやれとのご指示を頂いた、貴方の好きに生きてみよ」

 

 名をはばかる方というのは、何となくだがわかる。

 私は妙見様にも、機会があればお参りしていた。

 妙見様は、天之御中主神様とつながっているのではないかと思われる。

 一度、天之御中主神様の神威を感じたことがあるのだ。

 

 好きにですか……ここまで生きてきたのですから、いわれるように、なにかしら未練などあるかもしれませんね……

 

「私は静かに日々を過ごしてみたいのです、人との軋轢に心がすり減るような毎日でした」

「必死に妻を守り、神様や仏様におすがりして、やっとここまで来ました」

「望みといえば、心豊かに静かな日々を過ごしたいと思います」

 

 聖天様は少し笑ったように見えました。

 

「貴方の未練はそこにはないであろう、確かに心静かな日々という望みは本心であろう、しかし、生前とは違う生活をと、思うことがあるのではないか?」

 そうでしょうか……

 

「まぁいい、当方に任せよ、悪いようにはせぬ」

「ただ一つだけ選択してほしい、不老で長命を望むか?それとも華々しく、栄華を極めた人並みの寿命を望むか?」

 

「出来ますれば、心豊かに静かな日々を過ごしたいので、華々しく栄華を極めた生活は、避けたいのですが……」

 

「心豊かに静かな日々を過ごせるなら、性別は問わないであろうな?」

 性別?

 

「用意した不老長命の人生とは女性なのだ、一応、美しい容姿を用意しよう、ただ不老長命という以上、子供はつくれない、静かにという括りに、触れることになるのでな」

「……」


「不満か?」

「いえ……」


「まぁ不満であろうが、その代わり、色々と力と能力を授けてやろう、それで望みのままに生きてみよ」

「あの……大変失礼ですが、異世界転移というやつでしょうか?」

「あぁ、貴方の趣味か……なるほど……そう、その異世界転移というやつだ!」

 

 聖天様、心なしか冷や汗なんか見えています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る