第112話 デルマードの実力
「行くぞ!」
「来い小僧!」
とは言ったものの……どうしよう? ヴァージュはまだ出したくないけど、俺とリアーナじゃ厳しいか? リアーナは剣を持っているだけで牽制出来るから……。
「口だけか! こっちから行くぞ!」
しまった! 考えている間に攻撃が!
「え……」
一気に間を詰められた? これは縮地術!?
「どらぁ!」
「ぐっ……」
大きな金属音が鳴り、何とか剣で受け止める事が出来た。
俺もそれなりに速いと思っていたから、正直この動きにはショックを受けてしまう。
「流石は魔剣だな! 俺様の剣を受け止めるかよ!」
「デカイ図体の割に速いな」
「さっきも言っただろ? お前が遅いんだよ!」
デルマードは一旦剣を引き、再び剣を振り下ろす。
「いかん! 蓮斗!」
クリスの声に反応した俺は、剣を受け止めずに後ろへの回避を選択。
デルマードの剣は空を斬り、地面には小さな穴が開いた。
「くっくっく、惜しかったなぁ?」
「アレを喰らっておったら大変じゃったかも知れん」
「何で?」
「妙な闘気が見えたのじゃ……」
「くくっ、勘の良い剣だな」
さっぱり分からないけど、相当の威力が有るって事だろうか? でも地面に開いた穴は小さくて大した物じゃない。
「穴を見る限り、そんな風には見えないけど?」
「あの穴、かなり下まで掘られておるのじゃ」
「マジで……?」
「マジじゃ…………マジって何じゃ?」
「本当か? って事」
「なるほどのう、マジじゃ」
それよりどうしよ? 速いし丈夫だし……何よりあの大きな剣が邪魔だな。
「蓮斗くん、ウチが行こうか?」
「え? 魔法も使えないのに何か方法が!?」
「あ……」
え、忘れてたのか?
「我輩が憑依して攻撃するのは?」
あ、魔法は使えなくてもスキルは使えるのか!
って、前にもこんな事が有った様な気がするな。
「お、ラーズ強いの?」
「無論、武器が杖なのが厳しいが」
「強い杖とか無いの? 前に手に入れた金色の短い杖が強かったり?」
「金色のは短くて流石に……あ、そう言えば
「持ってるよ!」
「では我輩は突きの一手で」
「よし、それで行こう!」
さ、仕切り直し。
「行くぞ!」
「憑依!」
縮地術で……え? ラーズ速っ!
「くっ……小娘、なかなか速いな!」
「うらららっ!」
俺も攻撃に加わらないと! 少しズルいけど縮地術で後ろに回り込んで……。
「とぉりゃ!」
ガチンっと鈍い金属音を立て、背中に一撃を入れる事に成功……ん、金属音?
「くっくっく、背中からとは卑怯者め!」
「蓮斗殿、一旦離脱を!」
直ぐ様、後退して構えを取る。
「背中に盾じゃ」
「猫背かと思ったけど、盾で膨らんでるのか」
まったく厄介な相手だな。
「たぁ!」
「ぐおぉ……」
「口程にも無いですわ!」
どうやらレティシアの方は決着が付いた様だ。
「よし、三対一だ!」
「あの馬鹿め……だが、雑魚が一人増えたところで変わらんわ!」
凄い自信だな……負けるつもりは無いけど、苦戦は覚悟しないと。
「転移者を二人殺せば能力が二つか、くっくっくっ」
こいつ、俺達の能力が欲しいのか。
「大きい嬢ちゃんは殺さないから安心しな、どうせ能力も奪えんしな。よく見たら良い面だな? 胸もデカイし俺様がたっぷりと可愛がってやるよ!」
「け、汚らわしい!」
「くっくっくっ」
「絶対に倒す!」
「威勢だけの小僧には無理だな!」
「レティシア、ラーズ!」
「はいっ!」
「参る!」
三人の一斉攻撃! 流石に防ぎきるのは無理だろ!
ラーズの突きを大剣で防ぎ、レティシアに対しては背中を見せる事で盾で防いだ。
そして俺は右肩に攻撃──
ガシン! 激しい金属音と共に俺の剣は何かに受け止められてしまった。
「なっ……」
「遅かったな!」
「待たせたな、兄者!」
俺の肩までくらいの背丈だろうか? そこには一人の戦士が盾を構えてデルマードの体を守っていた。
「どこから……?」
「召喚じゃ、しかも亜人じゃな」
「亜人?」
「ドワーフじゃな」
ドワーフ! ゲームで良く聞く種族だ!
「ドワーフって鍛冶屋のイメージだったよ」
「鍛冶は得意じゃが、その前に立派な戦士じゃ。しかし、人族を兄者などと親しみを込めて呼ぶなど珍しいのう」
そんなもんなのか?
「ドワーフは
「ふん、小娘が! 兄者?」
「お前は女の相手をしろ、俺様はコイツらを相手にする」
振り出しに戻る、か。
「くっくっく、元に戻ったと思ったか?」
本当、俺は顔に出るらしい。
「甘いわ! 出でよ、ナルバッサ!」
デルマードが叫ぶと地面から巨大な黒い鳥が現れた。
「な……」
「蓮斗殿、我輩は鳥を!」
「あ、あぁ、頼む!」
コッチは魔法が使えないってのにアッチは召喚が使えるって、どっちがズルいんだか。
「小僧、勝負だ!」
「く……こ、来い!」
状況は悪くなるばかり、何とかしないと。
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