第41話 帰路にて

 暫くすると、レティシアとヴァージュが目を覚ました。

 二人には、メイスの転移者の経緯を説明し、一応、この遺跡を更に調査した。


「特に何も無いな……」

「その様ですわね……」


 俺達は調査と言う名の討伐を終了とし、街まで戻る事にした。


「あたいもレーちゃんみたいに、結納品が欲しいなー!」


 渡したつもりは微塵も無いのだけど?


「クーちゃんは、何か貰った?」

「儂は……首飾りじゃな」


 あ、そう来ましたか……。


「ずるーい、あたいもほ、し、いー!!」

「そ、その内ね……」

「れ、蓮斗さん……承諾してしまいましたわ」

「蓮斗……馬鹿じゃのう……」


 え、なに? 答えを間違えた!?


「やったー! 蓮斗様、だーい好き!」


 やっぱり……間違えた……。

 話題を変えなきゃ。


「レティシア、勝手に剣を借りてゴメンね」

「とんでもない、寧ろ蓮斗さんの手が……ここに……一生、洗いませんわ!」


 いや、洗って下さい……。


「そうだ、レティシア、ヴァージュ! 帰る道中でスキルを教えて貰えると助かるんだが……」

「大丈夫ですわ!」

「んじゃ、レーちゃんの覚えたら、次はあたいのね!」

「あぁ、二人とも頼むよ」


 二人は満面の笑みで答えてくれた。


「それと、もし街の武器屋で魔法の剣が売ってたら、是非、教えて欲しいな」

「剣なら何回でもお貸ししますのに……」

「いやいや、それだとレティシアの剣が無くなるでしょ?」

「そ、そうですわね……」

「小娘……やっぱり、馬鹿じゃな……」

「何ですって!」

「脳を動かす栄養が、全て胸に行っとるんじゃな」

「きぃー! ク、リ、スー!」

「だからレーちゃんは、お胸が大きいんだねー!」

「ヴァージュまで、何を仰いますの!?」


 ……うん、平和だね!

 ほんと、この掛け合いを見てるだけで、ホッとするな。

 さっき同じ転移者を死なせて、落ち込んでいたけど……ちょっと、軽くなった気がする。

 罪悪感緩和も万能じゃないし。

 俺は本当に良い仲間を持ったなぁ……。


「蓮斗様、チューしよっ!」

「何を言ってますの!」

「お主ら黙らんか!」


 …………多分、良い仲間だ……。


 それにしても、メイスの転移者の心の闇を突いた魔術師……絶対に許さない。

 会う事が有れば、絶対に倒してやる!

 なんて、一人で決意して帰路に就く。

 数日経ち、山を三つほど越えた所だろうか。

 行く時に無かった筈の小屋を発見してしまった。


「これ、試練……だよね?」

「恐らく、そうじゃのう……」

「ですわね……」

「なになにー?」


 あ、ヴァージュは初めてか。

 前回の出来事を軽く説明したんだけど……。


「面白そー!」

「いやいや、倒すか死ぬかだよ?」

「でも、倒したら結構レベルが上がるんでしょ?」

「そりゃそうだけど……」

「レーちゃんとクーちゃんは、どう思うー?」


 ……沈黙。

 そりゃ、一筋縄では行かないからね。


「私は……蓮斗さんに従いますわ」

「儂は……蓮斗に付いて行くしかないからの」

「じゃ、蓮斗様次第って事ね!」


 あら、責任重大?


「蓮斗様ー! 行こーよー?」


 ヴァージュは俺の腕を掴み、ブンブンと上下に振る……もげちゃいますよ?


「蓮斗様ってばー!」


 どんどん振る速度が上がってますよ?


「お礼に、あんな事やこんな事もするからさー」


 え……。


「蓮斗、鼻血……」


 おっと、いけない……。


「わ、私だって!」

「発情小娘は黙っておれ!」


 何を張り合っているんだ……。

 ただ、レベルは正直……上げたい。


「よし、行こう!」

「流石、蓮斗様! あたいとあんな事やこんな事をしたいんだね!」

「違います……」


 いや、違わない……か?


「最近、苦戦続きだから強くなりたい……」

「そうじゃの……そう言う事であれば、儂は賛成じゃな」


 違う理由だと、反対って事だよね……いろんな意味で気を付けよう。


「では、私も賛成ですわ!」

「やったー! 蓮斗様、大好き!」


 頼むから、皆の前で抱き付かないで……視線が痛い。

 

「準備が出来たら、小屋に入ろう!」


 各自、戦闘の準備……誰も何もしないし。

 俺はポーションの残数確認っと……結構、余ってるな。

 フルヒーリングポーションって、勿体無くて使えないよね。

 ゲームだと……ボスを倒す時も使わないで余っちゃう、みたいな?

 この世界だと、瀕死の時に使うしか無いかな? メイスの転移者を見て分かったけど、生き返るって事は無さそうだし。

 他には……俺も大した準備は無かった。


「じゃ良いかな?」

「おっけー!」


 ヴァージュ、張り切っているな。


「敵は一体とは限らないから、気を付けて行こう!」

「おー!」


 皆で気合いを入れ、小屋に入る。

 まただ……四方に聖獣。

 前回と同じく、激しい光に包まれる。


 光が収まると、真っ白い空間……前と同じだ。

 前と違うのは、俺が気を失わなかった事か。


「ようこそ、転移者ご一行」

「また、あんたか」

「はい、剣の転移者は……二回目ですね」

「あぁ、宜しくな」

「今回は余裕な感じですね」


 余裕なんて無い、何が出てくるかドキドキだ。


「今回は、質問を受けてくれるのか?」

「前回は初回特典と言う事ですので、質問にお答えする事は出来ません」


 ケチだなぁ……。


「準備が出来たら教えて下さいね」

「蓮斗様、この人を倒すの?」

「違う違う、この人は代行者って人」


 危ないわ……代行者って強いのかな?


〔看破に失敗しました〕


 やっぱ無理かー。

 気を取り直して行こう!

 皆の方を見ると、皆、俺に向かって頷いた。


「代行者、オーケーだ」

「では、善戦を……」


 そう言って、代行者は消えていった。




 何が来るかな?

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