第28話 試練の間

「……れ……と……さん…………」


 ん……遠くから声が聞こえる?


「蓮斗さん!」

「うおっ!」


 レティシアに起こされ、俺は気が付いた。


「良かった、気が付きましたわね」

「ここは……?」

「分かりませんわ……」


 真っ白い空間……本当に何も無い。


「ようこそ、転移者ご一行」

「誰だ!」

「私は、試練の代行者です」


 試練の代行者? 何だそりゃ……


「剣の転移者は、試練を受けるのは初めての様ですね。初めての者には、ある程度の質問の権利が与えられます。何か質問は有りますか?」


 急に質問は、って……取り敢えず、適当に質問をぶつけよう。


「試練って、何ですか?」

「承りました。試練とは、転移者ならびに同行者の方に、此方で用意する魔物と戦い、レベルを飛躍的に上昇させる事が出来る、イベントの様なものです」

「それって、負けた場合は?」

「承りました。負けた場合は、亡くなると言う事です」

「それは受けなくても良いの?」

「承りました。この部屋に入った時点で、絶対に受けて頂きます」


 え、強制で死闘になるって事? 知ってたら入らないわ!


「剣の転移者は云々って言ってたけど、他の転移者も受けてるの?」

「承りました。はい、その通りです。他の転移者達は一回以上、試練を受けて頂いております」


 俺が最後って事か……。それにしても、何故、毎回承りましたって言うんだ?


「倒したら、元の場所に戻れるの?」

「承りました。はい、戻る事が出来ます」


 結局、倒して戻るしか無い訳か。


「代行者って、誰の代行なの?」

「規定の質問回数を越えましたので、お答えする事が出来ません」


 え、回数上限有ったのかよ……失敗した……。


「それでは、準備が出来ましたら教えて下さい」


 勝手な奴だな。一回以上受けてる人がいると言ってたから、これからも代行者に関わる可能性が有るな……余計な事は言わないでおこう。


「クリス、レティシア、準備は良い?」

「儂は問題無い」

「私も大丈夫ですわ」

「よし、代行者、準備オーケーだ」

「承りました」


 そう言うと、代行者はその場から消えてしまった。

 すると、地面から二体の巨大な人型の魔物が出現した。

 全身は石……いや、岩で出来た様な……ゴーレムじゃん!


「ゴーレムじゃの!」


 あ、同じ名前で合ってた。と言うか、一体と思い込んでいたので、少し焦っていた。

 先ずは看破。


〔看破に失敗しました〕


「失敗か」

「残念じゃの」

「一体ずつ行こう!」

「分かりましたわ!」


 俺はいつも通り縮地術で間を詰め、連続で斬り付ける。

 レティシアも続いて斬り付けると、ゴーレムは少し怯んだ感じがした。

 行ける! そう思った瞬間、レティシアは横に吹っ飛んだ。


「きゃっ!」

「大丈夫か、レティシア!」

「えぇ……何とか」


 一体に集中すると、もう一体が攻撃してくる。当たり前の事なんだけど、どう対策したものか。


「やっぱり、二手に分かれよう!」

「はい!」


 仕方がなく、一対一の状況に変更。

 まさか、ここから三十分以上、戦闘が続く事になるとは思わなかった。


「はぁ……はぁ……」


 相手の動きが遅い為、ダメージは受けないんだけど、スタミナが減る……。

 横を見ると、レティシアもかなりスタミナを消耗している感じだった。

 あ、そうだ! 俺は魔袋からポーションを取り出し、一気に飲んだ……お! スタミナが戻った? 息切れが無くなる。


「レティシア! これを飲んで!」


 同じポーションをレティシアに投げ渡す。


「助かりましたわ!」


 さぁ、戦闘継続だ!

 相当のダメージを与えた筈だ。そろそろ、一体だけでも倒さないとな。


「クリス、火の魔法を頼む!」

「承知じゃ!」


 ゴーレムは火炎の輪に縛られ、勢いよく燃え出す。ログは……?


〔ゴーレムは火属性をレジストしました〕


 やっぱりか。石っぽいから、嫌な予感はしたんだよね。

 それでも、ゴーレムはバラバラに崩れ落ちた。


「倒した!」


 と、思ったのも束の間、崩れた岩はレティシアの相手するゴーレムの方へ飛んで行き、有ろう事か、もう一体のゴーレムに合成されていく……つまり、合体だ……。


「大きくなりましたわ!」

「クリス、もう一回だ!」

「任せるのじゃ!」


 再び、ゴーレムは火炎の輪に縛られる。


〔ラージゴーレムは火属性をレジストしました〕


 ラージゴーレムって、言うんだな。

 

「効果が分からんの……」


 クリスの言う通り、さっきのゴーレムより怯んでない気がする。

 暫く、攻撃と回避の繰り返す。

 突然、ラージゴーレムはレティシアに向かい指を指した……何だこれ?


「小娘! 避けるのじゃ!」

「え!?」


 ラージゴーレムの指から雷の様な閃光が飛び出し、レティシアを貫通した。


「きゃあっ……」

「雷撃魔法じゃ!」

「レティシアー!!」

「…………あら?」


 へ? 確かに閃光は、レティシアを貫いた様に見えたけど……。


「レティシア、大丈夫か!?」

「はい……何とも無いですわ」


 攻撃じゃなくて、ステータス異常系の魔法か? あ、ログを確認すれば……。


〔レティシアは雷属性をフルレジストしました〕


 すげー! フルって事は、ノーダメージか!

 でも、どうしてだ?


「分かりましたわ」

「なに?」

「恐らく、蓮斗さんに頂いた、結納品のマントのお陰ですわ!」


 おぉ、あの未鑑定マントか! ……今、結納がどうのって言った?

 士気が上がったレティシアが、ラージゴーレムを斬って斬って、斬りまくる。


「ゴーレム、愛の力を思い知るが良いですわ!」


 うわー……絶好調ね、レティシアさん。


「儂等も行くぞ!」


 俺も加わり、ひたすら斬りまくる。

 クリスが三回目の火炎の輪を使い、怯んだところを二人で斬り付けると、ラージゴーレムは崩れ落ちて消滅した。


「やっと勝った?」

「おめでとう御座います」


 突然、代行者が拍手をしながら現れた。


「今回の試練は完遂となります。報酬として、情報と粗品を贈呈致します」

「情報と粗品?」

「はい。初回情報は試練についてです。この試練の間は、この世界にランダムで出現します。但し、必ず見える物では御座いません。剣の転移者が見えても、他の転移者は見えない、と言った物です」

「そうなんだ……」

「粗品の種類もランダムになります。後程、ご確認下さい。では、またのご利用を、お待ちしております」

 

 そう言い残すと、俺達は眩しい光りに包まれた。




 またのご利用って、店みたいだな。

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