第22話 祝賀会

 ギルドカウンターにて、事務員に報告。

 例によって奥の部屋まで通された。


「ギルドマスターが出席するので、少々お待ち下さいませ」


 俺達は頷き暫く待つと、奥から髭を生やした小柄の男が歩いてきた。


「諸君、お待たせして悪い! 転移者は初見だな! マスターのレリジョンスだ」

「初めまして、俺が蓮斗で剣がクリスです」

「ご無沙汰しておりますわ、マスター」


 この人がマスター……看破で確認してみる。


〔名前:レリジョンス 種族:ドワーフ〕

〔称号:シウオギルドマスター〕

〔レベル:13〕

〔ギルドレベル:マスター〕

〔H P:858〕

〔その他:閲覧権限がありません〕


 ドワーフだ! この世界にも居るんだな……て、事はエルフも? それにしても、HPは高めだけど……そんなに強くない……?


「この度は、申し訳なかった!」


 レリジョンスは頭を下げ、大きな声で謝罪する。


「まさか普通のザヴァキランでは無いとは……。君達を危険な目に遭わせてしまった」

「マスター、私達は無事に帰って来られたのでお気になさらず。ね? 蓮斗さん?」

「はい!」


 思わず返事しちゃったけど……本当は死ぬかと思った! って言ってやりたい。


「そう言って貰えると助かる。それにしても蓮斗殿、どうやってレティシアを丸め込んだんだ? こいつが名前をさん付けするなんて……ぶはっはっはっ……」


 豪快に笑うマスター。レティシアは耳を真っ赤にしている……どうしたんだ?


「マスター! 余計な事を仰らないで下さいます!?」


 更にマスターは笑う。

 あのー、話が進まないんだけど?


「で、お話は?」

「すまんすまん、話が逸れたわ。実はお願いと言うか、今後の事なんだが……」


 先程とは打って変わって、真面目な表情で語り出した。


「今回のザヴァキラン騒動には、とある魔術結社が絡んでいるとの情報があってな……」


 魔術結社? 何かあまり良いイメージは無いなぁ……フリー何とか、都市伝説的な。


「うちみたいに小さなギルドでは、この件に関しての依頼は出せない。理由はギルドレベルの上限だ」


 この町のギルドレベルの上限、5ってやつか……。


「この町の西方にターゴフと言う街がある。そこのギルドは、レベル上限が10であり、今回の件に関しての依頼が出せる」

「そこに行けと言う事ですわね?」

「ま、あくまで本人の意思を尊重する……可能で有ればザヴァキランの戦闘経験者に、依頼の参加をお願いしたいとの事だ」

「シウオの町にはギルドレベル5の人って、他にも居るんですか?」


 俺は疑問に思った。ギルドレベル5に成り立ての俺に、直ぐ依頼されるのを何か不自然に思えて……。普通なら他のレベル5の人に依頼するよね?

 

「蓮斗殿、お察しの通り諸君らだけだ」

「では、仮に俺達がその街に行ったとして、シウオの町に何かあった場合は……?」

「それは大丈夫だ。諸君らが行く場合は、ターゴフから応援が駐在してくれる」


 なるほど、トレードって事か。


「諸君らのメリットは、高い依頼をこなす事でレベル、ギルドレベルの上昇が見込めるって事だ。ここに居るより……だが」


 ま、そうだよね。デメリットは難易度が上がって危険を伴うってとこか。


「何か聞きたい事は有るかな?」

「いえ、特に無いですわ」

「俺も無い。クリスは?」

「儂も無い」

「実はあまり時間が無いのだ。返事は明日にでも聞かせて欲しい」


 俺達は明日の返事と言う事で了承し、対談は終了となった。

 ギルドカウンターから出て、少し離れた所に行く。

 皆様、ご唱和願います!


「祝杯だー!」


 今日はもう動きたくないので、ギルド会館内の酒場「旅人の集い」で祝賀会だ。

 

「くっくっくっ」

「どうしたの、クリス?」

「実はのう……回帰術のレベルが上がったのじゃ! 依って制限時間は、二時間じゃ!」

「おぉ!」


 何と言う事でしょう! 天使召還時間が何と二時間! 出でよ、天使クリスちゃん!

 

「よし、呑むのじゃ!」


 三人でテーブルを囲う。流石にギルドレベル最高者が揃っていると、周りの人の目付きが変わるな。

 まぁ、それなりに楽しく飲み食いしてたんだけど……。


「お代わりじゃ!」

「クリス、結構飲んでるけど大丈夫?」

「まだまだ大丈夫じゃ…………御手洗じゃ!」


 そう言うと、クリスは席を外した。

 ……人化するとトイレも行くんだ……。


「蓮斗さん!」

「ん? どしたの? レティシア」

「実はレベルが上がったんです!」

「おぉ! おめでと!」


 俺も上がっていると思うんだけど……後で確認しよう。


「これも偏に蓮斗さんのお陰ですわ!」

「いや、そんな事無いよ。逆にレティシアを危険な目に……」

「蓮斗さん、本当にお優しい……」

「戻ったのじゃ!」


 戻ってきたクリスは、酔った勢いなのか、大きい声で叫ぶ。

 あー……何か嫌な予感がする……。


「クリス、わざと私と蓮斗さんの邪魔をしてるんじゃありません?」

「何故、儂がそんな事を? お主の被害妄想じゃの」


 何か……二人の後ろに竜虎が見えるよ……。


「お客様、そろそろ閉店ですので……」


 グッジョブ、店員さん!

 それにしても今日は閉店が早いな……あ、そうか、帰りが遅かったからね。


「蓮斗、帰って一緒に寝るぞ!」

「なんですって! 私も一緒に行きますわ!」

「よし、今日は帰ろう! レティシアも今日は家に帰って、明日またね?」

「蓮斗さんが、そう仰るなら……」


 何とかその場を納め、帰宅する事になった。

 集合は明日の昼だ。


 歩いて帰っている最中……あれ? さっき……。


「クリス! さっき一緒に寝るって言ったよね!」

「覚えておらん」


 ちぇっ……政治家かよ。




 やっぱり、ソファーで独りか……。

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