第7話 趣味全開
クリスは、腰まで有るだろう艶やかな髪、透き通った緑色の瞳、賢そうな顔立ちをして、俺の横に座っている……まじかー。
「なんじゃ? 儂をジロジロと見て?」
「え? いや、何でもない……」
「おかしな奴じゃの……」
これで、この口調じゃなければなー。
「こほんっ、それでは話の続きを……」
「あ、すみません」
ファイマン町長は、今後の事について話し出した。
話の内容はこうだ。
シウオの町では、剣と杖の転移者を援助する。
具体的には……拠点として使えるように、町議会棟の一部屋を宿として使用できる。
支度金を貰える。
但し、町の財政が厳しい為、食事は各自で、支度金も気持ち程度との事だ。
帰る場所があるのは、とてもありがたい。
お金も全く無いよりは、有る方が良いに決まってるし。
「何か、ご質問は有りますかな?」
んー、特にないかなぁ……って思ったんだけど……。
「この町に仕事は無いのかの?」
あ、忘れてた。
「それでしたら用意しております。と言ってもギルドへの登録ですが……」
あー、ギルドの仕事を請け負えって事ね。
「この世界では共通身分証が無いと、町などに入る事が出来ない上、犯罪者扱いを受ける場合が有ります」
「あれ? では、村で生まれた場合、身分証はどうやって貰うのですか?」
「通常、村は必ず町に属しており、その町で発行されます。稀に孤立した村があるそうですが、どうしているかは私も分かりません」
「そうなんですね……」
「話を戻しましょう。普通、身分証が必要ですが、ギルドの身分証が有れば同様に認められます」
「なるほど、それでギルドの登録ですか」
「その通りです。一応、クリス殿の分も手配致しますので、夕刻に此方へお寄り頂ければ」
「わかりました」
そう言うと、町長は俺に小さな袋を手渡した。
〔支度金を獲得しました〕
俺は一礼し、町長の部屋を出た。
すると、執事らしき男に泊まれる部屋を案内され、自由に出入りして良いとの説明を受けた。
但し、他の部屋には入らないでって。
当たり前だよね。
「よし、クリス! 町で観光だ!」
「愚か者め! この格好で行けるわけなかろう!」
ですよねー。
「蓮斗、服を買って来るのじゃ」
「わ、わかったよ……部屋で待ってて」
「うむ、頼んだぞ」
はー……。何が悲しくて男一人で女の子の服を買いに行かなきゃならないのか……。
そうだ、支度金は幾らかな?
〔金貨一枚を獲得しました〕
おぉ! 金貨だ! でも、相場が分からないなぁ……。
店を回って相場の感覚を掴もう。
町の中央に噴水があり、それを取り囲むように店が連なっていた。
お、パン屋だ……一個当たり鉄貨一枚……。
パンが一個百円としたら、銅貨一枚で千円? 銀貨一枚で一万円? 金貨一枚で十万円!?
結構、お金持ちになったかも!
さて、クリスの服を買うか……折角買うんだから、俺の趣味全開だ!
さて、服屋さんは……あ、目が合ってしまった。
「いらっしゃい、お兄さん! 安くしとくよ!」
ここにするか……。
「あの、女の子用の服が欲しいんですけど?」
「あらあら、彼女用ですか?」
え? 彼女? クリスが俺の彼女……えへへ……。
「お兄さん? 聞いてます?」
「あ、すみません。そうですねー」
嘘だけどねー……そもそも付き合った事無いし……悲しくなってきた……。
「では、お店の中へどうぞ!」
「あ、はい」
結構種類が有るんだねー……こ、これは!?
と、言うわけで俺趣味全開の服を購入した。
「毎度あり! 銅貨六枚だね」
「これで良いですか?」
金貨一枚を支払った。約六千円の物に十万円札を出す感じか、大丈夫かな?
「おー金貨だね。ちょっとお釣りを持ってくるから、待っといておくれ」
店主のおばちゃんは、そう言うと奥に行き、少し待つとお釣りを持ってきた。
「はい、お釣りね。またご贔屓に!」
〔金貨一枚を使用しました〕
〔銀貨九枚を獲得しました〕
〔銅貨四枚を獲得しました〕
「はい、ありがとうございます。では、また」
俺はお釣りを確認して、服を受けとると店を立ち去り、部屋へと向かった。
部屋に戻ると、退屈そうなクリスが待っていた。
「ただいま、マイハニー!」
「なんじゃそれは? 服は買ってきたのかの?」
「おう! これさっ!」
「うむ、着替えるから外に出ておれ」
「おっけー!」
クリス、ちゃんと着れるかなぁ……。
暫く待つと部屋の中から叫び声が聞こえた。
「なんじゃこれは!」
この後、俺は怒られる事になる……。
任せたんだから、文句言わないでよね……。
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