第178話 予想外の助っ人
転移と同時に叩きつけられる脚。
寝そべりながら思考をしている眼前に迫るそれをまるで鉄棒のようにぐるりと回転して避けるとそのまま頭にチョップを喰らわせた。
「意識が俺に向いてたらバレバレだ。それよりこういう突然仕掛けてくるのは久しぶりだな、なにかあったかアルト?」
「それはこっちのセリフですクロイさん。最近ずっとそうして天井、もしかしたらその先の空かもしれないけど、ずっと寝っ転がって上を見ながら考え事して、なんというか…………」
「らしくないって?」
言い淀んだ言葉を言い当てると、クロイは溜息を吐いて軽く話す。
「魔術師への対策をしている。それなら普通の魔術師としての戦い方ではだめだろう。かといってそちらの戦法に時間を割いていたら確実にアーテルを取り戻すっていうお前らの主目的である戦いで敗北する」
「だから俺たちがここにいる」
突然聞こえた声に異能まで使って距離を詰め、そのまま全力の蹴りを叩きつけようとしたクロイだったが、蹴ろうとした脚を相手にあたる前に止めた。
「
この世界で初めて口にした。
今この場面では間違いなくその名を呼ぶ方が適切であったから。
「なんで元の姿でここにいるのかって?」
「それは当然、俺達があの姿でやるべきことが全て終わったから。あ、俺はリテスって名乗ってイフ、君と戦った。まぁ、魔力でわかるか」
姿は違う。
隠してはいるが魔力の量も桁外れだ。
クロイと出会った時とは違う、相手も魔術師だからこそ格の違いがよくわかる。
「魔力で、ああ、魔力でわかるとも。君たちはトーカと、リテスだ」
少しだけ考えていた。
もしかしたらと、そう思っていた。
アーテルというアルバと似た雰囲気をした、ハンデを背負ってなお周りを圧倒する知識と戦闘技術を持った少年。
それがもしかしたら姿を変えたアルバなのではないかと、そう思っていた。
けれど、目の前にいる姿を変えることのできる二人の魔力は変わらなかった。
アルバとアーテルの魔力は全く違ったというのに。
「…………あなたが残念そうにしている理由はなんとなくわかります」
「おい、きくの」
「大丈夫。アーテルがアルバなのかもしれないと思っていたのでしょう?けどそれは大外れというわけでもない。アーテルは、アルバの実験によって作り出された人間。アルバの子供のような存在です」
クロイと
どこまで話しても大丈夫なのかを探りながらに伝えたその内容。
しかしアルバとかかわりを持っている者である、それだけで十分だった。
「もう大丈夫だ。これ以上話しては、君の立場も危ういのだろう?」
「痛い目に合うかも、くらいなものですよ」
「…………もう会話は終わったな?それじゃあ姿を偽ることもせずにここに現れた一番の目的、魔術無効化の対策を始めようか。その内容は、魔術を無効化される前に完結させるか、魔力強化での肉弾戦だ」
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