38話
初めての学園祭もよく分からないうちに過ぎて、今は12月になった。
季節はもう冬で風も冷たくなって、マフラーがたまに必要になってきた。
寒さが苦手なあたしにとっては、ちょっと憂鬱な季節。
さらに憂鬱にしているのは、あたしの誕生日が近くなってるのが原因だ。
年を取るのは大人に近づくんだから、嬉しいはずなんだけどあたしの誕生日の日付が問題。
「はぁ……」
「間森―。最近、溜息増えてるよ? 貯め良くつくと、幸せが逃げるんでしょ?」
「分かってるけど、我慢もしちゃだめでしょ」
友達がさらっと言ってきた、その溜息に関することは白雪さんが発端。
今では春の状況が想像できないくらい、すっかりクラスに白雪さんは馴染んでいる。
溜息のことは喫茶店でみんなとお茶を飲みながら、ぽつりと言ったんだったけ。
白雪さんの説明はみんなも分かりやすいから、すぐに気を付けるようになっていた。
他人に無理をさせるのは嫌いな白雪さんだから、無理もよくないってちゃんとくぎ刺ししてるけどね。
「期末テスト……さすがにまずいよね」
「範囲広すぎ。なんで、春からなの?」
「あたしに言わないでよー! みんなだって思ってるんだから」
そう、この前発表された期末テストの範囲は春から今までの全部。
中学では学校によるけど期末は二学期の範囲くらいなのに、今回言われたのは春から今までの全範囲。
その瞬間のクラスの空気ったら、なかった。
明らかに不満の声がたくさん出て、あたしだって出しちゃったくらい。
だって、いくら教科書は繋がってるっていうけどそれだって広すぎる。
これじゃあ要点をどこに絞っていいか、分からない。
その時ちらっと斜め前を見ると、白雪さんと目が合った。
といっても、前髪が長くて目が隠れがちだから合ったとは言えない。
だけど、そうあたしには思えたからそれでいい。
そしてあたしだけに分かるくらい、少しだけ表情を緩めてくれた。
そうだよ、白雪さんがあたしにはいるんだもんね。
みんなには居ない最高で特別で一番の友達がいるんだから、今回もきっと大丈夫。
それが伝わったのか、白雪さんもこくりと頷いた。
分かるんだ、あたしの考えてること。
そっか、あたしと白雪さんは特別なんだから、分かっちゃうんだ。
そう思うと、嬉しくて不安が少し和らいでいった。
「間森はいいよ? 優秀な先生が居るんだから」
「でも、やるだけはやらないと。先生が良くてもあたしが頑張らないといけないでしょ?」
不安は不安だけど、やる事をやるしかない。
あたしはそう思って、前を向くことにした。
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