7話
少し汗ばむ陽気も増えてきたある日、あたしは親からの買い物を頼まれて街を歩いていた。
ちょっとめんどくさいけど、いろいろ大人になるための勉強だと思っていつも行っている。
一応、買い物を済ませて決められた時間までに戻れば何をしてもいい事になっているのでちょっとそこは嬉しい。
そんな訳であたしは、ショッピングモールにあるドラッグストアに寄って買い物を済ませた帰りだ。
肩にかけたエコバックはちょっとかさばるけど、そこは仕方ない。
ショッピングモールは色々なお店が入っているので、つい長居しちゃった。
たくさんのお店があるおかげで欲しい服はどうしても目に入るし、アクセや小物もどうしても欲しくなる。
やっぱり、みんなのようにバイトをした方がいいのかな。
バイトは社会経験にもなるっていうし、何より親から早く金銭的に自立したい。
だけど、バイトのおかげで勉強疎かになるのは嫌。
まともに勉強もできないで、子供のまま高校卒業ってもしなったらどうしていいか分かんない。
でも、そこは自分で考えなきゃ。
そう言うのが出来るのが、大人だからね。
「そういえば、白雪さんって?」
頭に浮かんできたのは、白雪さん。
普段からたまにやけに大人っぽいし、何か参考になりそうなこと言ってくれそう。
あと、休日誘った時に来てくれた時の私服も可愛いものが多かったから、恐らくバイトとかしてるんだろうなって思うし勉強もできてる。
その辺りは、ちょっとアドバイスできるならしてほしいなって思う。
「え?うわっ」
今度それとなく聞いてみよう。
そんな事を思って歩いていたあたしは、目の前のコンビニから出てきた女の子に思わず声を出してしまった。
裾が独特の真っ黒のロングスカートに、黒いブーツ。
長めの半袖くらいの白のブラウスに黒のベストを着ていて、ベストの横は細いリボンで蝶結びぽくなっている。
腕には黒い何かがまかれているっぽくて、長い黒髪は横できれいにまとめられていてなんだか実際の世界なのに別世界から来た人みたいだ。
「……? あっ!」
まさか声が聞こえてはないと思うけどこちらを振り向いて目があった途端、その女性はビクンと震えて立ち止まってしまった。
「あの……? 誰かと間違ってるんじゃないでしょうか」
一体何か変な事でもあったのか、それとも誰かと間違っているなら注意しないとまずい。
「ああっ、あのっ!間森さん!こ、これは、あのっ! みんなには、言わないでください!」
「え?白雪さん……なの?」
こっちより先に慌てて近寄ってきて頭を下げた来た声は、聞き覚えのある白雪さんの声。
でも、目の前にいるのは今までとは別人としか思えない。
だけど、目の前の白雪さんと思う人物は小さく頷いた。
私服で会った時は『白雪澄乃』って名前にぴったりの、ふわっと可愛いパステル地の服装が大体だった。
だけど、今居るのはそれとは全く逆。
白と黒のモノトーンで、それも黒が多い。
それは白雪って苗字とも、澄乃っていう名前とも全く正反対の服装だ。
落ち着いて頭の先から、脚の先までもう一度目を走らせる。
モノトーンの服に、首からは銀の細いネックレスで、手首には黒いバンドがまかれていてそこにも細いチェーンのアクセサリーみたいなのが巻かれている。
一番は服装もだけど髪形が学校とは違うせいで、言われなければ白雪さんって気が付かないほどだ。
「黙ってもらうの、タダでとは言いません。その、あたしもちょっと冷静になりたいので、お付き合い願えますか?」
「え、まぁ、いいけど……」
まだ親の言われた時間まで余裕はあるので特に問題はないし、白雪さんが自分からっていうのは初めてだったので素直に頷いた。
ちょっとこんなきっかけになっちゃったのは、残念だけど。
「では、こちらへ」
「うん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます